良耜(引用10:豊作を感謝する)
サクッ、サクッと、
よく研いだ鋤が土を耕す。
こうして、南の畝を耕し始める。
撒いた百穀の種が、
生き生きと芽吹き始める。
やがてやって来るそなたを見れば、
丸や四角の弁当箱を持っていた。
弁当の内容は、モチキビである。
農夫たちは反り返った笠をかぶり、
鋤を地に刺し、雑草取りに励む。
雑草はやがて枯れ、穀物が茂る。
サクサクと稲を刈り、
ぎっしりとわら束を積めば、
その高さは城壁のごとし。
そのぎっしりとした様は、
櫛の目のごとし。
これらを総出で、倉へとしまう。
各家の蔵が満ちることで、
妻子らも心安らぐ。
生贄の牛を殺し、神に捧げる。
牛が備える一尺もの長さの角は、
曲がって美しく整っている。
こうして豊作を喜び、
来年の豊作を祈る。
更に祈るのだ、子々孫々に至るまで
豊作にあずかれますように、と。
○周頌 良耜
引き続き農務精励、及び収穫の喜びの歌であるな。今と違い、農業に多くの人手を割かねば立ち行かぬ時代である。その仕事としての位置付けは、いまよりも遥かに重いものであったことであろう。ならば詩経にこの手の歌が数多残るのは当然至極である、といえる。
■国の害毒
詩中では割とあっさり流したが、「荼蓼」には毒草、位の意味合いが示されておるそうである。その要素が見えやすいのが宋書沈林子伝であろう。「林子以家門荼蓼」とは、沈林子の父親が凶悪な規模の民衆反乱「五斗米道の乱」に加担し、そのため父、祖父、そして林子ら兄弟が「謀反者の家族」扱いとなったことを示す。
・後漢書66 陳蕃
今帝祚未立,政事日蹙,諸君柰何委荼蓼之苦,息偃在牀?
・晋書122 呂纂
當兢兢夕惕,經略四方,成先帝之遺志,拯蒼生於荼蓼。
・晋書129 沮渠蒙遜
庶憑宗廟之靈,乾坤之祐,濟否剝之運會,拯遺黎之荼蓼,上望掃清氛穢,下冀保寧家福。
・宋書41 文帝路淑媛 甥 路瓊之
朕幼集荼蓼,夙憑德訓,龕虣定業,實資仁範,恩著屯夷,有兼常慕。
・宋書93 雷次宗
淵匠既傾,良朋凋索,續以釁逆違天,備嘗荼蓼
・宋書95 索虜
自靈祚南遷,禍纏神土,二京失統,豹狼縱毒,蒼元蹈犬噬之悲,舊都哀荼蓼之痛。
・宋書100 沈林子
林子以家門荼蓼,無復仕心,高祖敦逼,至彌年不起。
・魏書21.2 元勰
豈謂上靈無鑒,復使聖躬違和,萬國所懸,蒼生繫氣。寢興之勞,豈申荼蓼。
・魏書93 王椿
俾上帝下臨,愍茲荼蓼,永濟溝壑。
・魏書108.4 礼四
朕幼集荼蓼,夙憑德訓,及翕虣定難,是賴謨謀。
……む、宋書41路瓊之と魏書108.4礼四のテキストがだいぶ被っておるな? 用例を調べてみても、史書としてはこの二箇所にしか登場せぬ。前者が466年の詔勅、後者が518 年の詔勅であるから、この辺りには劉宋のテキストがだいぶ北魏にも流れ込んでいた形跡を見て取れような。
毛詩正義
https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E5%8D%81%E4%B9%9D#%E3%80%8A%E8%89%AF%E8%80%9C%E3%80%8B
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