載芟(農務、収穫の喜び)

載芟さいさん



載芟載柞さいさんさいさく 其耕澤澤きこうじゃくじゃく

千耦其耘せんぐうきうん 徂隰徂畛そしつそしん

 雑草を取り除き、木を切って根を払う。

 土を耕し、肥料をまく。

 二人組で耕す農夫、実に千組。

 みなで雑草を除き、

 湿地や水田の開発にも出向く。


侯主侯伯こうしゅこうはく 侯亞侯旅こうあこうりょ 侯彊侯以こうきょうこうい

有嗿其饁ゆうたんきよう 思媚其婦しびきふ 有依其士ゆういきし

 父のあとには長子や中子が従い、

 その親族たちもまた共に働く。

 力の余っている者たちは

 雇われに外に出たりもする。

 妻たちは彼らの元に弁当を運ぶ。

 農夫たちは妻をよく愛し、

 妻たちは農夫らを頼りとするのだ。


有略其耜ゆうりゃくきし 俶載南畝しゅくさいなんぼう

播厥百殼はくつひゃくかく 實函斯活じつかんしかつ

驛驛其達えきえききたつ 有厭其傑ゆうえんきけつ

厭厭其苗えんえんきびょう 綿綿其麃めんめんきほう

 よく研いだ鋤でもって、

 南の畝を耕し始める。

 百穀の種を撒けば、

 いきいきとした生気に満ちる。

 稲が続々と芽吹くなか、

 いくつかの芽が特に伸びやかである。

 生き生きとした苗が

 いつ果てるともなく続く。

 農夫たちは合間に生えた雑草を除く。


載穫濟濟さいかくせいせい 有實其積ゆうじつきせき 萬億及秭ばんおくきゅうし

為酒為醴いしゅいれい 烝畀祖妣じょうひそひ 以洽百禮いこうひゃくれい

 やがてみなで実りを収穫し、

 それをうずたかく積み上げる。

 その束は万にも、億にも届こうか。

 得た穀物から酒や甘酒を造り、

 父母らの神霊を祀ったのち、

 数多の祭礼にこれらを用いる。


有飶其香ゆうひつきこう 邦家之光ほうかしこう

有椒其馨ゆうしょうきけい 胡考之寧ここうしねい

匪且有且ひしゃゆうしゃ 匪今斯今ひこんしこん

振古如茲しんこじょじ 

 酒のかぐわしい香り漂い、

 香草の匂い立つは、一家の幸い。

 酒のかぐわしい香り漂い、

 一家の古老は長寿を得る。

 この繁栄はここにのみあるわけでも、

 今だけであるわけでもない。

 いにしえより、人々が

 農務に励んできたゆえである。




○周頌 載芟

収穫の喜びが歌われておるわけだ。そこに至るまでの農務もまた喜びである、とされておる。ちょっとした年代記の装いであるな。




毛詩正義

https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E5%8D%81%E4%B9%9D#%E3%80%8A%E8%BC%89%E8%8A%9F%E3%80%8B

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