無將大車(引用1:余計なお世話)

無將大車むしょうだいしゃ



無將大車むしょうだいしゃ 祇自塵兮しじじんけい

無思百憂むしひゃくゆう 祇自疧兮しじしけい

 荷車引きなぞ手伝ってやるな。

 己が身を汚すばかり。

 周りに横溢する憂悶を取り込むな。

 自ら心を病ませるだけ。


無將大車むしょうだいしゃ 維塵冥冥いじんめいめい

無思百憂むしひゃくゆう 不出于熲ふしゅつきんけい

 荷車引きなぞ手伝ってやるな。

 身に埃を浴びるばかり。

 周りに横溢する憂悶を取り込むな。

 自ら闇落ちを目指すようなもの。


無將大車むしょうだいしゃ 維塵雝兮いじんようけい

無思百憂むしひゃくゆう 祇自重兮しじじゅうけい

 荷車引きなぞ手伝ってやるな。

 埃が目をくらませよう。

 周りに横溢する憂悶を取り込むな。

 自ら心を重くしてしまうだけ。




○小雅 無將大車


荷車引きに対する職業蔑視全開なのがほほえましいな。ともあれその要点は「かぶらなくてもいい労苦まで背負ってしまうこともあるまいに」であり、そこまで抽出すれば首肯できることしきりとなろう。ここから思い出すのは、東日本震災の時の過剰なまでの自粛である。被害に遭った方々は確かに痛ましい。しかしだからと言って被害に遭わず日常を過ごせるものまで活動を止めれば、経済が死んでしまう。人にはそれぞれ役割があり、その役割の上でどうしようもないものにまで気をやり過ぎ、自らの役割も果たせなくなるのでは元も子もない。すべてを引き受ける必要はないのだ。お互いに、お互いの領分で、最善を尽くそうではないか。

なお詩序は「士大夫が小人の仕事を引き受けることを悔いる」としている。もうお前らはくたばってしまえ。




■叔父さん小者の仕事勝手にやらんでくれ


三國志20 曹操子 曹幹

易稱『開國承家,小人勿用』,詩著『大車惟塵』之誡。


曹操の息子曹幹が、明帝の時代に勝手に賓客と面会した。魏のルールでそれはやってはいけない、とされていたにもかかわらず、である。なので明帝は曹幹に対して「勘弁してください叔父さん」と書をしたためておる。その一節である。易の『師』卦の解説にお国を運営するのに小者を用いるなと書かれていたり、当詩で「荷車押しに関われば無駄に汚れる」などと言われてるでしょう勘弁してくださいよ、と語るのである。




毛詩正義

https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E5%8D%81%E4%B8%89#%E3%80%8A%E7%84%A1%E5%B0%87%E5%A4%A7%E8%BB%8A%E3%80%8B

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