豳風(ひんぷう)
七月(引用2:農業は大変)
七月にはアンタレスが西に傾き、
九月には重ね着の支度。
十一月の風は寒く、
十二月には凍えんばかり。
着物に上着なくして、
どうして年を越せようか。
一月にはスキの手入れをし、
二月には耕し始める。
我が家の妻子とともに、
南の畑に弁当を持っていく。
田畑見回りの役人も喜んでいる。
七月にはアンタレスが西に傾き、
九月には重ね着の支度。
春の日差しもうららかに、
ウグイスの声を聴く。
娘は深いかごをもって、小道を歩く。
摘むのは、柔らかいクワの葉。
春の日はのどか、
シラヨモギを摘む人も多い。
娘心はやるせない。
おとぎ話のお姫様のように、
お嫁入りができたなら。
七月にはアンタレスが西に傾き、
八月にはアシの刈り入れ。
三月にはクワの枝を切り取るため、
斧を手にする。
長々と、高く伸びた枝を払い、
小さなクワの葉はしごきとる。
七月にはモズが鳴き、
八月にはアサを紡ぐ。
黒や黄色に染めた糸が積み上がる。
中でも我が家の赤い糸、
その、輝かしいこと!
姫様のズボンにささげたい。
四月にはヒメクサに実がなり、
五月にはセミが鳴きだす。
八月には早稲を収穫し、
十月には木の葉が落ちる。
十一月にはムジナを狩り、
あのタヌキやキツネをとらえ、
若殿に毛皮を捧げたい。
十二月には皆とともに狩りに出で、
その武技を研鑽する。
小さなイノシシは我が家に、
大きなイノシシは殿様へ。
五月にはイナゴが股を動かして鳴き、
六月にはクダマキが羽を震わす。
七月のキリギリスは野原で、
八月は屋根の上で、
九月は家の中、十月は床の下で鳴く。
隙間をふさいでネズミを燻し出し、
北向きの窓は泥で隙間を埋める。
ああ、わが妻、わが子よ。
まもなく年が明ける。
ともに室内で新年を迎えよう。
六月にはニワウメやノブドウを食べ、
七月にはアオイや豆を煮て食べる。
八月にはナツメの実を打ち落とし、
十月には稲刈り。
それで春に飲む酒を造り、
ご老人に振る舞う。
七月にはウリを食し、
八月にはフクベを蔓から取り、
九月にはアサの実を拾い、
ニガナを取りオウチを薪とする。
そして、わが農夫を養う。
九月には稲打ち場を田に作る。
十月には収穫を倉に納める。
キビ・オクテ・ワセ・イネ、
アサ・マメ・ムギ。
ああ、わが農夫たちよ。
収穫物は十分に集まった。
これらをお上に納めに参ろうか。
昼はカヤを刈り入れ、
夜には縄を縒り、
早く屋根に上って葺きなおそうか。
種まきが始まるよりも前に。
十二月には氷をぱきぱきと割り、
正月にはそれを氷室に収め、
二月には朝早くから羊を供えて
ニラを祀り、
九月には霜が降り、
十月には稲打ち場を払い清め、
二樽の酒に、羊を殺して供える。
そして公堂の上にのぼり、
さかずきを掲げて祝う。
あなたの長寿を祈りたい。
○国風 豳風 七月
長い。しかも何なのだこの時系列の吹っ飛びぶりは。きちんと読み込めば一年になすべきことが整理もできるのであろうが、長い。長いぞ。それしか言えぬ。
○儒家センセー のたまわく
当詩は王のなすわざを示したものである! 周王の座に就いた成王は農務の大変さをあまり理解しておらぬようであったため、周公旦がその大変さを理解してもらおうと、当詩を詠んだのである!
■昔の人はえらかった(それに引き換えry
晋書5 評
及周公遭變、陳后稷先公風化之所由、致王業之艱難者。
当詩の詩序が「周公遭變故,陳後稷先公風化之所由,致王業之艱難也。」である。つまりこの字句をそのまま持って来ておる。例によって「昔の偉い人はこんな感じで一生懸命国を守ってきたんだよ」と語るわけであり、こののちには「それに引き換え晋ときたら……」と続く。
■七月流火 #とは
宋書13 律暦下
在詩「七月流火」,此夏正建申之時也。
宋明帝の時代、祖沖之という人物が天文に関する規定を様々に定めたが、難しくてみなよくわからなかったそうである。これを戴法興という人物が咀嚼し、何とか解釈したという。その中の一節に、「七月流火」は夏の時代に定められた暦における「建申」の月だよ、と語る。晋は干支の「申」、つまり七番目の干支であり、結局のところ七月を指しておる。
ちなみに夏正があるのならば殷正、周正もそれぞれ存在しており、夏正七月は殷正だと八月、周正だと九月であるという。我々が太陰太陽暦で用いておるのは夏正であり、殷正周正の存在意義……と、やや考え込まずにはおれぬ。
毛詩正義
https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E5%85%AB#%E3%80%8A%E4%B8%83%E6%9C%88%E3%80%8B
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