權輿(引用7:待遇の悪化を嘆く)

權輿けんこう



於我乎おがこ 夏屋渠渠かおくきょきょ 今也每食無餘こんやかいしょくむよ

于嗟乎うーさか 不承權輿ふしょうけんこう

 先代の君主は、大きなお屋敷を

 私にお与えくださった。

 しかるに今は食い物にも余裕がない。

 ああ、はじめの頃の待遇が、

 こうも引き継がれないものか。


於我乎おがこ 每食四簋まいしょくしさん 今也每食不飽こんやまいしょくふほう

于嗟乎うーさか 不承權輿ふしょうけんこう

 先代の君主の時は、

 いつも豪華な食事を頂けた。

 しかるに今は満足にも食えぬ。

 ああ、はじめの頃の待遇が、

 こうも引き継がれないものか。




○国風 秦風 權輿


いつまでも変わらぬ待遇などあり得ず、それは待遇維持のための営為をなしてこそ保たれるものであろう。この詩単品で読めば、ただ「待遇が変わったこと」のみが嘆かれており、それはそれでどーなのよ、という気もせぬではない。まぁ、詩人とてやることはやっていたのであろうがな。




○儒家センセー のたまわく


当詩は秦の康公が、穆公以来の賢臣をないがしろとしたことを批判するものである! 結果一時期春秋の覇者近くにまで至った秦は、再び勢いを衰えさせ、商鞅の改革による再雄飛を待たねばならなくなったのである!





■權輿=重りと、箱


秤を作るには、天秤の片側に乗せるおもしの精度を整える必要がある。このおもしを「権」と呼ぶそうである。そして車を作るにあたっては、人が載るパーツが真っ先に作成される。つまり「輿」である。この二つが真っ先に作られることより、權輿、で「はじめ」という意味となった。

なぜこの解説を真っ先につけるか? 例によってこの言葉が「はじめ」の雅語と化しておるからである。


・三國志4 高貴鄉公裴注

魏初有孟達、黃權,在晉有孫秀、孫楷;達、權爵賞比壹為輕,秀、楷禮秩優異尤甚。及至吳平,而降黜數等,不承權輿,豈不緣在始失中乎?


・晋書19 禮上

方今天地更始,萬物權輿,蕩近世之流弊,創千齡之英範。


・晋書68 史臣評

史臣曰:元帝樹基淮海,百度權輿,夢想群材,共康庶績。


・晋書69 戴若思 弟戴邈

・宋書14 禮一

今天地告始,萬物權輿,聖朝以神武之德,值革命之運,蕩近世之流弊,繼千載之絕軌,篤道崇儒,創立大業。


・宋書2 武帝中

咨爾宋王:夫玄古權輿,悠哉邈矣,其詳靡得而聞。


・宋書44 謝晦

既經啟王基,協濟大業,爰自權輿,暨于揖讓,誠積雖微,仍見紀錄,並蒙丹書之誓,各受山河之賞,欲使與宋升降,傳之無窮。




毛詩正義

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