鴇羽(戦乱による飢えの苦しみ)

鴇羽ほうう



肅肅鴇羽しゅくしゅくほうう 集于苞栩しゅううほうく

王事靡盬おうじびかん 不能蓺稷黍ふのうしつしょくしょ 父母何怙ふぼかこ

悠悠蒼天ゆうゆうそうてん 曷其有所かつきゆうしょ

 激しく飛ぶ雁は、

 クヌギの木に群がり、止まる。

 王より課される公役は厳しく、

 キビを植えるのにも手が回らぬ。

 老いた父母は誰を頼ればよい?

 ああ、遥かな大空よ。

 いつになったら落ち着けるのであろうか。

 

肅肅鴇翼しゅくしゅくほうよく 集于苞棘しゅううほうきょく

王事靡盬おうじびかん 不能蓺黍稷ふのうしつしょしょく 父母何食ふぼかしょく

悠悠蒼天ゆうゆうそうてん 曷其有極かつきゆうきょく

 激しく飛ぶ雁は、

 イバラある木に群がり、止まる。

 王より課される公役は厳しく、

 キビを植えるのにも手が回らぬ。

 老いた父母は誰を食べればよい?

 ああ、遥かな大空よ。

 いつになったら戦は終わろうか。


肅肅鴇行しゅくしゅくほうこう 集于苞桑しゅううほうそう

王事靡盬おうじびかん 不能蓺稻粱ふのうしつとうりょう 父母何嘗ふぼかしょう

悠悠蒼天ゆうゆうそうてん 曷其有常かつきゆうじょう

 激しく飛ぶ雁は、

 クワの木に群がり、止まる。

 王より課される公役は厳しく、

 コメを植えるのにも手が回らぬ。

 老いた父母は何を食べればよい?

 ああ、遥かな大空よ。

 いつになったら平和となるのであろう。




○国風 唐風 鴇羽


黍離との対比をも感ぜざるを得ぬ。とは言えあそこでは穂を垂れるキビこそが衰亡の証であったが、こちらではそのキビすら満足に植えきれぬ、と歌う。どちらがどう、と言っても始まらぬわけではあるのだが。どちらもつらきこと、悲しきことであろう。




○儒家センセー のたまわく


晋の昭公が薨じてのち、君主五代に渡り争乱の時が続いた! うち続く戦乱のため、壮士は農業に精も出せず、父母を飢えさせることになってしまった! その悲しみ、つらさを歌ったものである!




毛詩正義

https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E5%85%AD#%E3%80%8A%E9%B4%87%E7%BE%BD%E3%80%8B

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