碩人(引用1:立派な嫁入り/姜氏の将来を悲しむ)
素敵なあの方はすらりと背が伸び、
錦衣にかかる薄絹もまた立派。
斉公のお子にして衛公の妻。
斉の太子の妹御にして、
邢侯の夫人の姉上。
ならば譚公が義兄である。
手は柔らかいつぼみ、
肌はぷるぷる、コラーゲン、
首筋はスクモムシのごとく白く、
歯はウリのようであり、
広く引き締まった額に、
カイコガのような鮮やかな眉。
笑う口元の艶やかさ、
ぱっちりとした美しき目。
素敵なあの方は実に艶やか、
しばし近郊に車をお停めになる。
四頭の牡馬はいきりたち、轡には、
鮮やかな赤い手綱が結ばれる。
キジの羽で飾り立てられたその車は、
やがて御殿に入ってゆく。
出仕した大夫たちよ、退出なされよ、
かの君をお疲れさせぬよう。
とうとうと流れる黄河。
北に流れゆくその活発さ。
魚取網を投げ込めば、
コイやシビがその中で跳ね回る。
岸に伸びるのはアシやオギ。
お供の侍女らもまた美しく、
お供の侍もまた勇ましい。
〇国風 衛風 碩人
斉の国の姫が、衛に嫁入りする。彼女は斉公近しき縁者であり、ならば斉の衛星国である譚の主とも近しきお方。彼女自身も艶やかであり、かつ嫁入り行列も壮観。北に流れる黄河のその広く豊かで、滔々としたさまのごとく、前途は洋々。そのように歌われておるわけである。
〇儒家センセー のたまわく
斯様に盛大に、まさしく「鳴り物入り」で荘公のもとに嫁ぎ来た姜氏! その彼女が、将来大事になされず、子もなせず、養子にと迎えた子はその弟に殺され、と悲惨極まりなき思いをするのである! 悲しきかな、悲しきかな!
〇崔浩先生、儒家センセーにビビる
む、この詩自体に「憐れむ」要素は一切ない、よな……? 詩に見える状況の未来を見るのも、それはそれでよかろうが、そこまで先をわざわざ見ることもあるまいに。
まあ、いわゆる「フラグ詩」とみなすのが良いのかな。嫁入りの様子を盛大に讃えまくれば、その後には不幸が待ち受ける、的な。そう考えれば、儒家センセーのお言葉にも理解が及ぼうというものである。
■宋書22 鼓吹鐃歌 芳樹篇
哀弦理虛堂,要妙清且悽。嘯歌流激楚,傷此碩人懷。
文人何承天が作った十五の詩曲のうち一曲。夜のひと気のない、後宮であろうか、にて、ひとりの「碩人」が寂しそうにしておる姿を描いておる。当詩から拾わば、この碩人はしばらく帝よりのお手付きに恵まれぬ后妃の一人、と言った設定になるのであろうな。
毛詩正義
https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E4%B8%89#%E3%80%8A%E7%A2%A9%E4%BA%BA%E3%80%8B
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