プロローグ
昏い、水の中で目を覚ます。
光も差さず、体温も奪われ、決して人の生きる事のできぬ海の底。
この場所で自分の存在を認識し、直感的に理解した。
ああ、そうか。私はあの時、死んだのだ。
彼らと死闘を繰り広げ、この身はかつての友に打ち砕かれ、最後の一手さえも彼らを想う少女に断ち切られ。
死した仲間達の想いも成し遂げられず、無念の中でこの命は果てた。
ただそれでも、今となればこれが正しき結末だと全てを受け入れる事ができた。
私は、いや私達は理想に生き、理想に殉じた。
いつか見た地獄をもう二度と引き起こさないように、未来を生きる彼らが二度と苦しむことが無いように。
人とオーヴァードが、バケモノであろうと関係なく、誰もが手を取り合って幸せに生きられる世界。
それが私が目指した……いや、私達が夢見た世界だった。
本当は理想なんて言葉で飾る必要もなく、その世界を、大切な人と、仲間たちと、誰一人欠ける事なく共に歩みたいと願っただけだった。
それももう叶わない。だがそれでいい。私の理想は彼らが、正しき道を歩む彼らが在るべき形で叶えようとしているのだから。
そう思っていた、そう思っていたはずなのに。
私が、あの遺産に取り込まれた私が目覚めたという事は、その未来が歪んでしまったという事。
誰もが望まぬ未来と結末。
きっと私が再び目を覚ましたのは、その未来を覆す為。
彼らが再び、正しき未来を歩んでいけるようにする為に。
だが、だからこそ一つ聞こう。
我々は君を、彼らを傷つけた。また君を利用するかもしれない。それでも私を君は呼び起こすのかい?
————それでもいい
例え私の導く先が、君の望まない結末だとしても?
————私は救われなくても、みんなが生きてくれればいい。だから……
……全く、あの何一つ望む事のなかった少女にこうも願われてしまえば断るわけには行かないだろう。
何より、我ら"
彼らがまだこの世の不条理に抗うというのならば
この絶望の中でさえまだ希望を掴もうとするのならば
彼女を救うと、決意したのならば
征くとしよう————
新たなる地獄の先へ
そして黄昏の先を、彼らに指し示さん為に
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