古代神殿の秘密

「博士、この先が例の古代神殿に通じる道なんですね。」

「ああ、そうだ。くれぐれも気をつけて進むんだぞ。」

考古学研究者でありトレジャーハンターの博士と、

その研究助手をつとめる私は二人でジャングルの茂みをかき分けながら進む。


「そこ、足元取られて滑るなよ。」

「はい、ありがとうございます。

…それにしても、かなり歩きましたね。

本当にこんな山奥に神殿があるんですか。」

「昔と今では人の集まるところが異なったりするからな。

それに、その神殿にはとんでもないものがあるらしい。」

「とんでもないもの?それは財宝ということですか?」

「詳しくはまだわからない。

ただ、こんな山奥にわざわざ神殿を建てて隠すようなものだ。

相当に価値のあるものだといえよう。」

「その神殿を建てた古代民族というのは、どんな人々だったのですか。」

「なんでも高い知能と文明技術を持ち合わせていたらしい。」

「そんな人たちが作ったものなら、さぞかし良くできた美術品や、

宝石細工が隠されているのでしょうね。」

「そうだな。あらゆる素材の高い加工技術も持っているのだとしたら、

そう考えるのは妥当だろう。」


私と博士は神殿の中にある宝への期待に胸をふくらませながら、

神殿へと続く険しい道を歩き続けた。

「よし、ようやくついたぞ。にしても、立派なものだな。」

「ええ。柱の細部のところまで綺麗に細工がしてありますね。

やはりこういった彫刻技術にも優れた民族だったようです。」

そうして私と博士は暗い神殿の中に足を踏み入れた。


「暗くて先が全く見えないですね、灯りをつけましょうか。」

「そうだな、ここの松明に火をつけよう。」

言われるがままに私がマッチをすって松明に火をつけると、

次の瞬間博士の首筋ぎりぎりを何かがかすめた。


「…!なんだ今のは…」

博士が真横を向くと、そこには吹き矢のようなものが。

「まずい、この神殿には罠があるようだ。」

「そのようですね…しかも火をつけただけで作動するとは。

何かを踏んだり触ったりして作動するならまだしも、

いったいどんな仕掛けになっているのでしょう…

何にせよ、こんな危ないところ出て、帰りましょうよ。」

「いや待て。これだけ手の込んだ罠をはっているということは、

それだけ価値のあるものを隠しているということだろう。」


博士は先ほど死にかけたばかりだというのに、

むしろそのせいでやる気を出してしまったのか、

意気込みながらずんずんと神殿の奥にすすんでいってしまった。

私はその後を追うばかりだったが、その後も我々は様々な罠に襲われかけた。


見えないほど細い糸が張り巡らされた槍の降る部屋や、

下は水なのにその表面は燃えている炎の池など、

いったいどうやって作ったのかわからないようなものばかりだった。

そんな恐ろしい罠の数々を命からがら潜り抜けた私と博士は、

最後の部屋にたどり着いた。


「全く、こんなところでは命がいくつあっても足りんな。」

「しかし博士、ここでどうやら最後の部屋のようです。

宝があるとするならここかと。」

「ううん、しかしどこにもそれらしき物は見当たらんな。

おや、ここの壁に何か文章が書いてあるぞ。翻訳してみよう。」

博士は手元のメモ帳を見ながら古代民族の書き残した文書を翻訳していった。


「何々…この神殿には我々の文明と技術の結晶ともいえる宝の数々を配置した。

後世の人間には是非その恩恵を受けてもらいたい…とあるな。」

「何と、それではやはりこの神殿のどこかに宝はあるはずなのですね。」

「いや待て、まだ続きがあるようだ。

…この文章を読んでいる者であればその宝の価値は既にわかっているはずである。

我々の技術を結集させて作り上げた神殿の防衛装置や罠の数々は、

他の民族のそれと一線を画するほどの精度を持つ、まさに宝のようなものであり…」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る