第318話
「まさか、こんな土地で知り合いに
「久しぶりにドキドキした〜」
ネカフェに戻ってきたリョウたちは、バーガーが冷めないうちに昼食をすませることにした。
まずはドリンク。
リョウはコーラを、アキラはホットカフェラテを取ってくる。
「ここのコーヒー、意外とおいしいんだよ」
「へぇ〜。ちゃんとした豆をつかっているんだな」
「そうそう。あとミルクもおいしい。ミルクの味が濃いんだよ」
ファミレスのドリンクバーあるあるなのだが……。
ミルクの量が少なく設定されていると、カフェラテが完成したとき、コーヒーの苦味が強すぎて、やや残念な口当たりになってしまう。
そこらへんはお店の原価との兼ね合いだろうが……。
「いただきます」
照り焼きバーガーを一口かじった。
脂っこくない鶏肉にソースがマッチしており、普通にうまい。
「その鶏肉はどこ産かな?」
「まったく臭くない。国産かも知れん」
「僕が調べてあげるよ」
検索すると一発で出てきた。
小麦がアメリカ産とカナダ産で、鶏肉と野菜とソースは国産だった。
「海老カツバーガーに入っているキャベツって、謎のおいしさなんだよね。僕はそこまでキャベツ大好きってわけじゃないけれども、海老カツバーガーに入っているキャベツは大好き」
「わかる。豚骨ラーメンに入っている
「そうそう」
2人で食事すると、共感があるから楽しい。
「ほら、リョウくんもサラダを半分食えよ。体を内側からデトックスだ」
「はいよ」
野菜をかじる。
シャキッとした歯応えがおいしい。
高校生になるまで健康には
「受験勉強やっていると思うのだが……」
「ん?」
「食事が唯一の楽しみって気がする。あとは風呂入って寝るだけみたいな」
「なにそれ? サラリーマンみたい」
「でも、事実だ」
たとえば週刊マンガ。
いちおう購読しているが、サラサラっとしか読んでいない。
受験が終わったら、単行本を購入して、じっくり読もうと思っている。
独り言のようなリョウの話を、アキラは熱心にうんうんと聞いてくれる。
優しいな。
優しさっていうのは、退屈な話にも耳を傾けてくれることだ。
「おいしかった〜」
最後の一口を食べ終えたアキラは、包装紙をわざわざ折り畳んでから、紙ナプキンで口元をぬぐった。
「リョウくんがあと60年くらい生きるとするだろう。1日3食だとしたら、あと6万回くらい食事する。それだけの楽しみが約束されているなら、人生、そんなに悪くないといえる」
「たしかに」
「そして僕は、死ぬまでに100個くらい海老カツバーガーを食べるだろう」
「なんだ、そりゃ」
6万回の食事か。
一回500円だとしたら……いや、計算するのはやめよう。
寿命が尽きるまで生き抜いて、
リョウはゴミを片付けてから勉強の続きに戻った。
アキラも動画配信サービスにアクセスして映画を見始める。
「リョウくん」
「ん?」
アキラが口元でバツ印をつくる。
「これから2時間、一切話しかけません」
「おう、サンキュー」
リョウは過去問に集中した。
2時間がんばってみたけれども、ムチを打った反動でとてつもない眠気が襲ってくる。
「アキラ、一つお願いしてもいいか?」
「もちろん。何でもいってくれ」
「
渋られるかと思ったが、
「膝枕か? お安いご用だ」
すんなりサービスしてくれた。
今日はタイツの日だから、最高級の枕に負けないくらい気持ちいい。
「アキラの太もも、あったけ〜」
「膝枕ってなんで膝枕なんだろうね。明らかに太もも枕だよね」
「たしかに……語感ではないだろうか?」
「なるほど」
ふいにアキラが笑った。
リョウの髪の毛がチクチクしてこそばゆいらしい。
「我慢しろ」
「命令?」
「我慢してください……です」
「ぷっぷっぷ……弱っているリョウくんは、ちょっとかわいいな〜」
「アホか。男にかわいいとかいうなよ」
アキラと会話していると気持ちいい。
すると
「20分くらい仮眠したら? きっと頭の中がスッキリするよ」
「いいのか?」
「僕が見ているから。好きなだけ寝なさい」
「おう……」
そして20分後。
リョウが目を開けると、座ったままくーくーと寝息を立てるアキラがいた。
「なんだよ、アキラが寝ているじゃねえか」
仕方がないやつめ、と思いつつ、さっきまでリョウの頭があった位置にブランケットをかけておいた。
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