21.結婚式
町の教会での結婚式は滞りなく進んだ。
結婚式に参列した事が無いサザはよく知らなかったが、誓いの言葉も指輪の交換も終わってしまえばあっという間で拍子抜けしてしまった。こんな短時間のことに大金を使う人もいると思うと途方もない気持ちになる。
結婚式には王族や軍の関係者などは参列しておらずユタカを慕っているの町の人達ばかりだった事にサザは胸を撫で下ろした。式が終わり、休憩のためにユタカと教会の控室にいると、従者が入ってきてサザに告げた。
「サザ様、ご友人の方がお見えになりました」
「友人……?」
「サザー! おっめでとう‼︎」
桃色のワンピースのアンゼリカがドアから飛び込んで、サザに抱きついた。後ろに藤色の着物を着たカズラもいる。
「サザ、とてもきれいだったぞ」
「わ、二人とも来てたんだ……知らなかった」
部屋の奥にいたユタカがこちらに気がついてアンゼリカとカズラのところまで来ると会釈した。
「サザの友達?」
「あ、はい。幼馴染の二人です」
「わ、領主様。いらっしゃったんですね、いきなりごめんなさい……アンゼリカ・ピックフォードです。トイヴォで薬屋してます。こっちはカズラ・ウツミといいます。同じく、トイヴォで古武術の道場で働いてます」
サザに気を取られてユタカに気付いていなかったアンゼリカが頭を下げ申し訳なさそうにユタカに自己紹介をした。
「気づかずに急にサザにお声掛けして、申し訳ないです」
カズラもユタカに頭を下げる。
「いや、いいんだ。ユタカ・アトレイドです。宜しく」
ユタカは微笑むとアンゼリカとカズラと順番に握手した。身分の高い筈のユタカの気取らなさに二人は戸惑っている様子だ。
「サザ、友達ともなかなか会えないだろうし、ゆっくり話してていいよ。おれも孤児院の時の友達に会ってくるから」
「ありがとうございます」
「じゃ、ごゆっくり」
ユタカはカズラ達に微笑むと部屋を出て行った。ドアがしっかりと閉まるのを見届けてから、すかさずアンゼリカが言った。
「めちゃくちゃいい人じゃない! 領主様がこんなド平民に対等に接するなんてあり得ないわよ?」
「そうだな。それに、私達に配慮して部屋を出てくれたのだな。身分の高い方とは思えない気遣いだ」
カズラも頷いている。
「う、うん。結婚して日が浅いからよく分からないけど、いい人だとは思う」
サザは少し照れながら言った。
「でも、来てくれてよかった。ちょっと二人に相談したいことがあるんだけど……」
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