第52話 布団から逃げられない
ユウヤはベッドにいた
キズを、確認した所なくなっていた
じゃあ、起きるかと力を入れるが力が入らない
誰か呼ぼうとしたが声も出ない
ピンチである
寝起きの洪水が迫って来ているのにカラダは動いてくれない、プライドの問題である
しかし、こんな時こそ冷静に対処しなければ
俺は動く箇所を調べてみる
手は少し動く、足は力が入らんが動きそうだ
寝返りはうてない、自分で動くのは厳しそうだ
もう一度、声を出してみる
「だれかー」
少しだけだが出た
昔、何かで聞いたことがある犬の聴力は人より鋭いとわずかな期待を込めてキコを呼ぶ
「キコ、こっちにこい!」
しーん
ダメかと思った瞬間、廊下を走る音が聞こえた
勢いよくドアを開け飛び込んで来る
「ユウー!」
その勢いのままベッドにダイブ
「やめてー、下腹部に乗らないで」
さらにピンチは増した
「ケガは?大丈夫?大丈夫?」
俺の話を聞かずに飛び乗ったまま顔をなめてきていた
「キコ、待て!」
キコは動きを止め後ろに下がってお座りした
そこはー!圧迫禁止エリアに座り込む
気を取り直し
「キコ、任務を与える、俺をトイレまで運んでくれ」
愛犬にこんなこと頼む自分に涙が出そう
「任して!」
俺をお姫様抱っこし、キコは動き出した
そこで気付く、10歳の幼女にお姫様抱っこされる自分・・・悲しくて涙が出た
しかし、ここまで来たのだ、洪水爆発だけはさけてやる、ちょっと自棄になるがトイレが見えてきたが・・・
「ゆうちゃん、ゆうちゃん起きて大丈夫なの?」
み、見つかった!あとちょっとなのに
「ねえ、どこか悪いの?お腹ケガはいたむ?」
チカはお腹を擦ってくる
「ストップー!ヘルプートイレにトイレにいかしてたもー」
声にならない声が出る、しかし、チカには聞こえないらしく
「ねえ、顔色悪いよ、ベッドに戻らないと、キコ何でゆうちゃん連れ出してるの駄目でしょ」
「ユウの命令ー、キコは言うこと聞くイイコなのだ」
「ゆうちゃんの命令?どんなこと?」
「ユウをトイレに運べば撫でてくれる約束なのだ」
「ゆうちゃん、人型のキコちゃんは撫でちゃ駄目だからね」
光の消えた目で訴えられた
「大丈夫!それよりキコ急げ!」
「はう、ラジャであります」
キコはダッシュでトイレに運んでくれた
洪水回避に成功したが終わるまで扉の前で待たれていたのが恥ずかしかった
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