第46話
女子達からの白い目が痛い。
宰相閣下は見て見ぬふりをしてくれている。
何故なら彼から僕は、王妃様に言う事を聞かせられるスポークスマンとして大切に扱われているからだ。
キングシリウスの奴は最早言うまでもなく役に立たず、というより役に立った事がない。
王女姉妹はニコニコしている。
美しいロゼ様は謁見の場に顕現しておられない。
「後で説明するから。申し訳ないけど今は黙ってて。」
とりあえず、女子達への説明は先延ばしにして逃げておいた。
「パオラ様、どうか聞いて下さい。中級以上のダンジョンでモンスターを倒したり、宝を持って帰れば報酬が出ると聞いています。僕は自分で得た報酬で貴女方に何か形ある物で恩返しを考えていたのです。勿論、すぐにではありませんし僕が用意できる物など微々たる価値でしかないとは思いますが…。」
そこまで言った頃には既にパオラ様の胸の中だった。
そして、僕を抱きしめたままで王妃様は泣いておられる。
「母は、貴方のような息子を持って幸せです。」
「あ、あのパオラ様?」
「お母さんです。」
「パオラ様?」
「お母さんですよ。」
「………。」
「「「「「……………。」」」」」
何だろう、この茶番劇は?
キング・シリウスは?
一緒になって泣いているだと?
あんたには何も渡さないよ?
王女姉妹は期待した目で僕を見ている。
既に自分達も何か貰えると疑ってすらいない。
美しいロゼさんには何を贈ろうか?
喜んで貰えるといいのだけれど?
何という事だろう。
逃げる為の言い訳で余計に泥沼に落ちて行っている気がする。
そして、ここでパオラ様をお母さんと呼べば、もう後戻りは出来ない気がする。
間違いなく、ユーリ様とセレス様のどちらを選ぶのか?などと言う話に発展して更に逃げ場がなくなる。
きっと女子達の視線は更に鋭さを増すのだろう。
では、その女子達を巻き込んでしまうのはどうだろうか?
「パオラ様、聞いて下さい。僕は共に召喚された彼女達を放って、自分だけが安全な場所にいたいなどとは思わないのです。今の僕に出来る事が限られているのであれば、他の方法を模索し可能性を広げたい。その為にも、まずはレベルを上げて少しでも足を引っ張らずに済む方法を……。」
最後まで言い切る前に、気付けばパオラ様の拘束から解き放たれていた。
正確には解き放たれたのに女子達に囲まれていた。
「香川君、貴方の気持ちは良く分かったわ。」
「もう何も言わなくて良いんだよ」
「香川、あんたって奴は全く。」
「理斗さん、理斗さん、仕方ない人ですね。」
「理斗ったら大胆。」
こいつらは何を聞いていた?
そして何を言っている?
一体、ここで何が起こっている?
異世界よ、僕の味方はどこだ?
僕の美しいロゼさんは何処にいる?
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