第38話
青い顔をしたメイドさん達に見送られながら部屋に戻る。
今日の朝食は何だろうかなどと考えながら時計を見ると、まだ7時30分。
早く行って食堂の前で待つのも卑しいかと思っているとノックの音がする。
誰だろうと思いながら返事をすると、美しいロゼさんとロザリー様が入って来られた。
「すみません、ロザリー様が来られたのだと分かっていたら私がドアを開けて差し上げたのですが。」
「カガワ様、申し訳ございません。」
「カガワ様、娘のした事は許される事ではございません。母親である私からも謝らせて下さい。申し訳ございません。」
この美しい親子は何を謝っておられるのだろうか?
「お二人は突然、どうされたのですか?」
美しいロゼさんが説明してくれる。
「ロザリーから全て聞き出しました。時計と蝋燭の件もですが、担当のメイドは勇者様の起床時に洗顔用の水を部屋まで運んで来る事になっております。その後、朝食は食堂まで同行し訓練に送り出すまでが朝の勤めでございます。午後は訓練場までお迎えに上がり、入浴後のお着替えのご用意や夕食への同行、何がご用がありました時のためにお部屋の前で控えておく事になっております。」
なるほど、それで昨日は職務怠慢と言っていたのか。
「理解しました。時計も蝋燭も既に頂戴しましたし、連絡事項だけ間違いなく頂けるのならば、今まで通りで結構ですよ。」
「「えっ?」」
「えっ?」
ロザリー様は仰られる。
「怒ってはいないのですか?」
「怒る?何故?僕は困っていませんし、自分で出来る事は自分でやれば良いのでは?」
美しいロゼさんが聞いて来る。
「失礼ですが、参考までに。カガワ様はこちらは来られる前、どのような生活をされていたのでしょうか?」
「両親と僕の3人家族でしたが、殆ど顔を合わせる事はありませんでした。仕事が忙しい人達なので。学費は払ってくれていましたし、食費も用意されていました。なので食事は自分で作っていましたし、自分で起きて登校していましたよ?」
着る物と食べる物と住む所があれば、人は十分に生きて行けるのだ。
美しいロゼさんは何か納得されたように頷いている。
「………なるほど。では、体面の問題もありますのでロザリーは本日より数日間の謹慎とします。その間は私が担当として参りますので宜しくお願い致します。」
謹慎か、この世界基準では厳しい方なのだろうか?
「分かりました。こちらこそ宜しくお願いします。
ロゼさんもお忙しいでしょうし、ご自身のお仕事を優先して下さいね。僕に合わせて頂かなくても大丈夫ですから。ロザリー様、お早いお戻りをお待ちしております。」
「「…………。」」
「では、そろそろ僕は食堂へ行って来ますので失礼します。」
美しいロゼさんが焦った様に言う。
「待って下さい、カガワ様の毎日の朝食は王族とご一緒に取る事に決まりました。」
異世界よ、1階で落ち着いて朝食を食べれたのって昨日のが最初で最後だったのか?
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