第35話
僕は優しい王妃様を取り戻した。
美しいロゼさんとロザリー様の給仕により和やかな夕食は進んでいく。
カティアさんとユリスさんは既に退室された後だ。
彼女達は何のために呼ばれていたのだろうか?
同志キング・シリウスも息を吹き返し、羨望の眼差しで僕を見ている。
しかし王妃様が怖いとはいえ、娘にメロメロを装う出会ったばかりの馬の骨を見て、こんな表情をするものなのだろうか?
そして王女姉妹は終始ニコニコしているだけだ。
夕食が終わって挨拶を済まし退室する。
「とても美味しい夕食をご馳走様でした。ありがとうございます。それでは、おやすみなさい。」
王妃様から返事が返って来る。
「今日は詰問するような真似をして、ごめんなさいね。貴方が誠実な方で本当に良かったわ。また明日ね、おやすみなさい。」
「「おやすみなさい。」」
王女姉妹からも挨拶があり、今度こそ部屋を後にする。
ロザリー様と自室へ向かう、一旦戻ったら拷問部屋で資料の閲覧だ。
「あの、カガワ様…。先程は、ありがとうございました。」
部屋に着くと、突然ロザリー様から謎のお礼を言われる。
「何の事でしょうか?ロザリー様に感謝する事はありましても、感謝されるような事は記憶にございませんが。」
何かあったのだろうか?
「私の事を庇って頂きました。召喚された勇者様への無礼な行為や職務怠慢など、もしかするとあの場で不敬罪として裁かれていたかも知れないのです。本当にありがとうございました。」
「何を仰います。ロザリー様はご無礼な行為などされておられませんし、きちんと働かれているからこそ無事に戻って来られたのでしょう?今ここにロザリー様がいらっしゃる事こそが、その証拠ではありませんか。」
「えっ?」
「すみません、この後は少々約束事があるので着替えさせて頂いても宜しいですか?」
「えっ?あの、ちょっ……。」
そう言ってロザリー様には退室していただいた。
大変に申し訳ない事をしたが、資料の閲覧に制服姿で行くのも気が咎めるのだ。
携帯のバッテリーが無くなった今、元の世界から持ち込んだ数少ない実用性のある物だから。
着替えを済ませて拷問部屋へ急ぐ。
時刻は20時30分を過ぎていた。遅刻である。
ノックをして、返事を待って中に入る。
「すみません、遅くなりました。」
アルバイトはした事がないが、遅刻した時は同じような気分なのだろうか?
ユリスさんは既にテーブルで資料を閲覧していた。
何故か、カティアさんもいる。
近衛の仕事は終わったのだろうか?
「「カガワ殿、ありがとうございました。」」
突然2人にお礼を言われる。
よく、お礼を言われる日である。
「どうされたんですか?お二人とも。そういえば、何故お二人が夕食の席に呼ばれていたのです?」
2人は目を逸らして答えた。
「「シリウス様に呼ばれたのです。」」
あぁ、ただの巻き添えですか。
1人であの場にいるのが耐えられなかったのですね?
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