第33話
訓練は無事終了となった。
時刻は16時。
これから城に戻り、普段なら東側の男性用の塔で入浴やら夕食やらを済ますだけなのだが…。
本日は朝食の誘いをロザリー様が伝えて損ねていたらしく、王妃様であらせられるパオラ様がお怒りのようなのだ。
現在は無事に誤解が解けたらしく、怒りは治まっておられるようだが代わりに夕食に誘われてしまった。
特に断る理由もないし、連合の同志達の為にも僕が人身御供になるべきだろう。
訓練での汗を風呂で流し、異世界に来る時に来ていた制服を来て部屋で待つ。
17時30分ごろ、ノックが聞こえたので内側からドアを開けロザリー様を部屋に招き入れる。
自分より上の立場の人にドアを開けさせるなど以ての外である。
「わざわざお迎えに来て下さるなんて恐縮です。お時間とお所を伝えて頂けましたら、こちらからお迎えに上がりましたものを。」
「あ、あのカガワ様…」
「いえ、私のようなものは呼び捨てで結構です。理斗とお呼び下さい、ロザリー様。では、王妃様をお待たせしては申し訳ありませんし、参りましょう。」
僕は洗練されたドアマンのように先に部屋から出てロザリー様の退室を促し、彼女が完全に外に出てからドアを閉める。
どうだろうか?ロザリー様に仕える執事の様ではないだろうか?
異世界よ、僕は指輪を装備してロザリー様に仕えるために召喚されたというのだな?
いいだろう。私に任せたまえよ。
ロザリー様をエスコートしながら中央の塔5階へと向かう。
これから僕が挑むのはラスボスなのだろう、緊張感で喉が渇く。
僕は戦えないけれど、この身を差し出してでも隣で青ざめておられるロザリー様だけは守ってみせる。
やがて1つの扉の前に辿り着く、ロザリー様曰く目的地のようだ。
とりあえずノックする。
ここで立ち止まって情けない姿は見せられない。
室内からの返事に「失礼します。」と声をかけ入室を果たす。
今回ばかりは彼女を庇うように僕から敵地に入って行く。
中にはラスボス王妃様と王女姉妹とロゼさん、同志キング・シリウスとカティアさんとユリスさんがいる。
随分と豪華な顔ぶれじゃあないか?
そして同志達とロザリー様は、既に青ざめていらっしゃる?
ブリザードなのか?吹き荒れておられるのか?
静か過ぎる室内、テーブルの上に料理は未だ置かれていない。
そして席にすら着いていない僕は、ブリザードクイーン・パオラ様に問い詰められていた。
「ロザリーとカガワ様に朝食の件を聞きたいのですが、私達からの誘いが伝わっていなかったと聞いています。何故でしょうか?」
はて、夕食にお呼ばれして来たのではなかったのだろうか?
先に食べませんか?
それとも、これが異世界仕様なのだろうか?
どうなのだ?
異世界よ?
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