第28話 五分で出来る世界征服03
一兆円もあればビデオカメラを買うくらいどうとでもなるけど、
「あーうー」
ズリズリ。
ガリガリ。
バタン。
扉が閉められた。
毎度のことです。
「司馬さん何かしたの?」
「不正取引」
正確には法律に抵触していないのだけど。
毎度のように不正取引の容疑で警察に連行される。
司馬家の風物詩。
「カメラ買ったけどどうしましょ? ラピスが何かに使うんでしょ? それにしてもカメラで世界征服って……」
「ま、いいじゃん? それはそれで放っておいても」
まぁラピスの不滅性は、論じるに値するけど。
「妹さんは?」
「私室に避難中」
基本的に引き籠りで人見知り。
四谷も存在は知っていても、顔を合わせたことは無い。
ラピスを見る限り、「時間が解決するのかな」と楽観論も覚えるけど。
しかし引き籠りで僕を頼ってくれるルリがあまりに可愛すぎて、自立されるのもお兄ちゃんとしては複雑な気分。
妹パワーが少なくなると、わびしいお兄ちゃん事情。
シスコンの持つ不治の病の一つだ。
「結局学校は続けるのよね?」
「お金の問題も解決したし」
「司馬さんが?」
「然りですな」
「体売って?」
「そこまで馬鹿じゃない」
常識から幽離はしていても……まず以て兄が許しません。
「司馬は……」
「何か?」
「なんか司馬さんに優しいよね?」
「妹ですので」
世界の真理……不朽不滅の観念でもある。
「いちお~確認するんだけど…………義理でしょ? 義理なんでしょ?」
「だね」
「その……付き合ったりは?」
「どうだろ?」
たしかに魅力的なアイデアで、是非ともルリとは添い遂げたいし、法律上は問題ないけど……家族だしなぁ。
その辺を語ると、
「じゃあ他に彼女作る?」
「まず僕に惚れる女子が居ないだろうし」
「……………………」
半眼で睨まれました。
――何かマズいこと言いましたか?
「司馬は残酷だね」
「自覚はしてる」
「……馬鹿」
「誰にも不得手はあるさ」
「真面目に応対する方が馬鹿を見るし」
「何か不手際が?」
「分からないならいい。マジ有り得ないんですけど……っ。」
「ではさいで。不満が膨らんだらぶつけてくれて良いから。友達だし。ま、友情の範囲内で……というのは厳守して貰うけど」
閑話休題。
「む」
四谷のスマホが鳴った。
「どうぞ」
両手の平を上に向けて差し出す。
「久遠から」
「そんな関係?」
「違うと思う。てか司馬ともラインするし?」
ご尤も。
「何か飲む? お茶かコーヒーくらいなら出せるけど?」
「緑茶。砂糖とミルクありありで」
「はいはい」
スマホをカシカシ打ちながらリクエスト。
四谷の趣味嗜好は理解しているのでツッコまない。
実際緑茶オレは美味しいしね。
淹れて差し出す。
「どうも」
眉をひそめる四谷だった。
「久遠が何か?」
「ひ、秘密……」
「あまり興味も無いけど」
「むぅ」
何に障ったのかな?
ラインでラピスに語りかける。
「結局何がしたかったの?」
「世界征服です」
ブレないね、この妹は。
「帰ってこれる?」
「いつも通りの証拠不十分なので」
釈放と。
「司馬さ」
「はいはい」
「好きな人とかいないの?」
「ルリ」
即答。
間一髪だ。
「…………」
「何か?」
「確認するけど妹だよね? ですよね? 妹なんだよね?」
「ですね」
何より愛おしい妹ですとも。
抱きしめるだけで幸福を噛みしめられる砂糖菓子より甘い甘い女の子。
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