第3話

「このまま活躍すれば、テレビからの取材が来るかもなぁ」

 内海はにたりと笑い言った。おれは出したお茶を回収しながら、

「そんなわけあるかよ、テレビもそこまで暇じゃない」

「でも国際情勢よりも、芸能人のくっついた離れたを報道しまくるんやで? 可能性としては全然あるやろ」

「それは視聴率がいいからだろ。おれらのこと報道しても、数字なんて取れないって」

「そうかなあ」

「そうだって」


 おれは隣にある給湯室に入ると、鏡を見た。取材などないと言っておきながら、身だしなみチェックしている自分がいた。取材か……もしかすれば、囲み取材なんかもあるかもしれない。やはり見栄えよく映りたい。その流れで映画なんかに出演し、人気若手女優との熱愛が発覚したり――

 妄想から我に変えると、鏡に映るおれの鼻から鼻毛がこんにちはしていた。

 忌々しい奴だ。不孝息子のように、忘れた頃にひょっこりと顔を見せやがる。力一杯に抜き取ると、涙が出てきた。涙と共に、鼻毛を捨てた。

 給湯室から戻ってくると、内海はデスクに戻っていた。おれも内海の隣に設置しているデスクに座った。


 内海はちらりとこちらを見ると言った。

「なんや、鼻毛抜いたんかいな」

「気づいてたんなら言えよ!」

「そういうオシャレかなと思って」

「そんなわけあるかよ……」

 では野崎がやってきた時も、鼻毛は顔を覗かせていたのか。人形ではなく、おれは鼻毛を見せてしまっていたのか。まあ、人形よりも幾分もましだからいいか。


 デスクに座ったが、特にやることがないことに気づいた。内海も仕事をせずギャグ漫画を読んでいる。

「そういえばもう一人、依頼人が来るって言ってたけど、内容は知ってるのか?」

 内海はこちらに体を向けた。

「内容は知らんけど、ヤクザらしいで」

「へァッ!!」

 勢い良くおれも内海に体を向けた。

「ウルトラマンのモノマネかいな、似てないで」

「や、ヤクザだって」

「そう、針枝(はりえだ)組って知ってるやろ、そこや」

 針枝組といえば、どこの会にも属してないが警察も厳しくマークしている大規模の組織だ。おれは、仁義なき戦いや極道の妻、アウトレイジなどといった極道映画を思い出していた。

 ヤクザ者からの依頼とは。いったいどんな依頼なのだ?


「応じるのか?」

「内容によるやろ。薬の取引とか、死体を山に捨てに行くとか、そんな悪いことじゃなければな」

 内海が出した例は悪いことで片付けてはいけない。極悪だ。

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