第31話 ジャイアントオーガ
今日は約束した通りジャイアントオーガの討伐に来ていた。
ギルドや飲食店で情報を集めたところジャイアントオーガはルーデルス王国の近くにある森に出現するらしい。そこで多数の目撃情報が出ていた。
俺たちは事前に役割を決めていた。俺とエリン、リオンでジャイアントオーガの注意を引きつけながら攻撃を仕掛ける。キーラはタイミングを見計らいジャイアントオーガの攻撃を受け止め、俺たちのサポートをすることになった。
モルナは近接戦闘に向かないため、少し離れたところで魔法攻撃を仕掛けることになっている。魔法の威力は申し分ないが、耐久力がないためジャイアントオーガ攻撃を一度受けるだけでも危険だ。俺たち四人はモルナに攻撃が向かないようにしなくてはならない。
しばらく森の中を警戒しながら歩いていく。
俺が戦闘を歩き、一番後ろをリオンが歩いている。
モルナが俺たちの中心を歩きその隣にはキーラとエリンが付いている。
キーラの防御力はかなりのものなので、いざという時に一早く、モルナのサポートに入ってもらうため近くに居る。
「目撃情報によるとこの辺のはずなんだけどね」
周囲を見渡しながら痕跡を探す。森に入ってからもちろん警戒をしていたが、だんだんと近づいていくたびに警戒を強めていく。
所々木の上の方の枝が折れていることから何か大きな魔物が通った後だということがわかる。
おそらく三メートル以上は間違いなくあるだろう。
「見て、あそこ!」
エリンの指差す方を見れば何か黒い塊が地面に落ちており、その周りは赤くなっている。
近づいてみるとそれは、潰されたゴブリンだった。
「何かに叩き潰されたあとみたいだな」
口や鼻、目から血が出ており、周りには血が広がっている。まだ血が乾き切っていないことから、殺されてからあまり時間が経っていないと予想できる。
「これって……」
「あぁ、おそらくジャイアントオーガだろう」
「という事は、近くに居るみたいだね」
辺りを見回すと同じようなゴブリンの死体があった。
「こっちは踏み潰されたみたいだね。ここ、足跡っぽいのがあるよ」
エリンの言う通り不自然に凹んだ跡がある。
足で踏みつけたせいか所々血がついた地面がある。それだけではない。何かを引きずった後もある。
「ジャイアントオーガはこっちの方に行ったみたいだな」
「みたいだね」
「警戒して進むぞ」
俺たちは慎重に歩みを進めていった。
◆◆◆◆
地面に残った血の跡と折れた木の枝を頼りに歩いていくと、そこにはジャイアントオーガの姿があった。全身が筋肉で覆われ、まるで鎧を着ているかのようだ。
「――っ」
その迫力に思わず息を呑む。
開けた場所でジャイアントオーガは地面に座り込み、何かを貪っている。
ゴブリンだ。それだけではない、ゴブリンの上位種であるホブゴブリンも居る。
オーガは肉食だ。その上位種であるジャイアントオーガも言うまでもなく肉食だ。
そのため人間も食料として襲われることもある。幸い目の前に人間の姿はない。
他のみんなも息を殺し、その姿に目を凝らしている。
肉を引きちぎり骨ごと噛み砕いている。
ゴブリン程度の大きさならまだわかるが、二メートル近くあるホブゴブリンを食らう姿はなかなか衝撃的にだ。
ジャイアントオーガは鼻が良いと言われているが、辺りに血の匂いが充満しているため俺たちの匂いに気付いていないようだ。
攻撃を仕掛けるなら食事中の今がチャンスだ。
モルナに視線で合図を送る。
ジャイアントオーガが無防備な姿を晒している事はあまり期待していなかったが、まさか一番ありえないと考えていた状態になるとは……一応作戦を立てておいて良かった。
モルナが魔法を準備する。
木が周りにたくさんあるところではなく、開けた場所であることもこちらに有利に働いている。モルナの火の魔法を使っても大きく燃え広がる危険が少ない。
俺たちもモルナの魔法に巻き込まれない程度に、ジャイアントオーガに近づく。
俺たちが配置に着いたと同時にモルナの準備も整う。
俺たちは互いに頷き合う。
モルナの魔法が放たれた。巨大な火の玉がジャイアントオーガへ目掛けて飛んでいき、そのまま直撃した。
よし! 上手くいったぞっ
「ガアァァァァァァァァァァ」
巨大な咆哮。まるで空気が震えているように感じる。
爆煙から姿を現す。
「――なっ」
現れたジャイアントオーガの姿に言葉を失った。
モルナの攻撃が直撃したのにもかかわらず、その体には大したダメージが入っていなかったからだ。
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