第27話 冒険者ギルド

 冒険者登録をするために冒険者ギルドに来ていた。

 教会と同じくらい大きな建物だ。教会を見たときは綺麗な建物だと感じたが、立派という言葉がしっくりくる感じだ。


 入り口から出てくる者の殆どが武装しており、これから依頼を受けにいくようだ。

 中には依頼を終え、ギルドに報告するために入っていく者もいる。


「入ろうか」


「うん」


 二人で冒険者ギルドへと入る。


「おぉ……」


 思わず声が出てしまった。ギルドの中は武装した者で溢れている。

 掲示板の前に立ち依頼を探している者。受付で依頼の達成報告をしている者。まだ昼過ぎだというのに酒を飲んでいる者と様々な人がいる。

 熱気がすごい。街の中とはまだ違う雰囲気だ。

 これまでにない雰囲気にワクワクしているのが自分でもわかる。


「これが冒険者ギルドか……」


 キョロキョロとギルドの中を見回してしまう。


「あそこの受付に行けば良いんじゃない?」


「そうだな。行こう」

 

 受付の方へと向かう。順番待ちをし、目の前の人の用事が終わったところで受付の人に話しかける。


「すみません。冒険者登録をしたいんですけど……」


「わかりました。お名前をお願いします」


「アレスです」


「もしかしてこの国にいらした勇者様でしょうか?」


 まだ勇者と言われるのに慣れない。


「はい、そうです」


「お話はホーゼスさんから聞いております。少々お待ちください」

 

 そう言って受付嬢は、どこかへ行ってしまった。


 それにしても今日冒険者になると決めたばかりなのに、すでに冒険者ギルドに話が来ていたことに驚いた。ホーゼスさんすごいな……

 やっぱり関係が悪くなるのは避けたい。なんか適当な理由でパーティを断れれば良いのだが……


 しばらくすると受付嬢は戻ってきた。その隣には一人の女性がいる。

 眼鏡をかけ、ギルドの制服に身を包んだ知的な印象を受ける女性だ


「待たせて悪かったわね。貴方がアレス君?」


「はい」


「私はここで副ギルド長をしているアメリアよ。よろしくね」


「よろしくお願いします」


 なんだかよく分からないが、副ギルド長が出てきた。


「ギルドの奥に行きましょう。そこで話をするわ」


 そう言って歩き出すアメリアさんの後をついていくと、俺たちは少し大きめの部屋に案内された。


「どうぞ座って」


「失礼します」


 俺とエリンは勧められた席に腰を下ろす。


「話はホーゼスさんから聞いているわ。本当はギルド長にも会って貰いたいのだけれど、今は外へ出ているから、また今度になるわ」


「わかりました」


 ギルド長ってどんな人だろうか……筋肉ムキムキのおっさんだろうか?

 さっき見た冒険者達も鍛え上げられた体をしていた。ギルド長なのだからもっと凄いのかもしれない。


「冒険者登録だったわね。すでにホーゼスさんから話が来ていたから殆ど手続きは終わっているわ」


 ポケットから二枚のカードをとり出し、俺たちに手渡す。


「それが貴方達の冒険者カードよ」


 カードに視線を落とすとそこには俺の名前とCの文字が刻まれていた。


「このCってなんですか?」


「それは貴方の今のランクを示しているわ。本当はDランクからだけど、力がある程度保証されているから例外としてCランクからスタートになるわ」


 アルデさんから聞いた話だとランクは、Dランクから始まりAランクまで上がっていく。それからはAA、AAA、S、SSとなっていく。


「ランクは依頼をこなしたりして実績を積めば上がるわ。貴方達ならすぐに上がると思うから頑張ってね」


 他の勇者達も冒険者をしていると言っていたがランクはいくつなのだろうか……


「他の勇者達のランクはいくつですか?」


「みんなSランクよ。SSランクに上がりそうな人もいるわね」


 みんなかなり高いな。


「そうそう、パーティにもランクはあるわ。もしパーティを組むなら覚えておいて損わないわ」


 アメリアさんの話によると、全員がBランクならパーティのランクもBランクになる。

 Bランク二人にAランク一人なら、パーティとしてはBランクになるそうだ。


「あとは問題を起こすとランクが下がることもあるから気をつけてね」


「例えばどんなことをすれば下がりますか?」


「そうね、一番わかりやすいのは犯罪を起こしたときかしらね。最悪、冒険者ギルドを追い出されることもあるわね」


 それはそうか……いくら冒険者には荒くれ者が多いとはいえ、犯罪を起こしても何もお咎めなしだと無法地帯になってしまう。


「あとはパーティが解散したり、メンバーが抜けた時も、パーティのランクが下がったりするわ」


「わかりました」


 それからも話は続き冒険者としての最低限の知識を教えてもらった。


 依頼を受ける時は、自分のランクとかけ離れたものは受けることができないという事や、依頼を受けてから完了までの流れについてなど様々な事だ。


「こんなところかしらね。また何かわからないことがあったら気軽に声をかけてね」


「はい、ありがとうございました」


「勇者がこの冒険者ギルドにいてくれるのは、こちらとしても助かるわ。これからよろしくね」


「こちらこそよろしくお願いします」



 話を終えた俺たちは副ギルド長に見送られギルドを出た。

 すでに夕方になっており、かなりの時間話をしていたようだ。

 初めてのことで分からないことだらけだったので、色々と丁寧に教えてもらえてよかった。

 ひと段落して気が抜けたのか腹がなった。


「お腹すいたね。宿に戻る前に何か食べて行こうよ」


「そうだな。適当に歩きながら店を探すか」


「うん!」


 俺とエリンは二人で街の中をふらふらと歩きながら食事をして宿へと戻った。

 食べた肉料理はなかなかパンチがあり美味しかった。ついつい食べ過ぎてしまったほどだ。


 明日に備え早めに眠りにつこうと思ったが、相変わらずエリンが近くにいてなかなか寝付けなかった。


 ◆◆◆◆


 翌日、集合場所である冒険者ギルドに行くとそこには三人の姿があった。

 リオンは剣を腰に下げ、動きやすそうな防具に身を包んでいる。

 モルナは杖を持ち、いかにも魔法使いのようなローブを着ている。

 キーラはここにいる誰よりも重装備だ。背中には巨大な盾を背負っている。いかにも重そうな装備だが、本人の表情に苦しさはない。かなり鍛えているようだ。


「みんな揃ったみたいだね。早速街の外に出て戦ってみよう」 


「何と戦ってみるつもりなんだ?」


「そうだね、ゴブリンやスライムといった初級の魔物と戦おうかなって……良い感じの依頼を取ってきたんだ」


 リオンが持ってきた依頼はスライム十体、ゴブリン六体の討伐依頼だ。


 まぁ、初めての依頼だからこんなものだろう。


「いいかな?」


「あぁ、問題ない」


 エリンの表情が少し固い。おそらく緊張しているのだろう。

 ゴブリンやスライムよりも強力なブラックグリズリーに立ち向かっていけたのだから、そんなに緊張する理由はないと思うのだが……

 戦い出せばすぐに緊張も解れるだろう。


「早速向かおうか」


 俺たちはモンスターのいる場所へと向かって歩き出した。

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