第48話 またも現世で事件発生!?
鬼退治に関しては平将門の協力を得られることになり、鈴音はのびのびと学校に通えるようになった。それまでは片時もユキが離れず、ずっと肩に乗せている状態だったから、少し窮屈だったのだ。
しかし、ユキはまだまだ心配だからと、今日からはカバンの中に潜り込んでいる。重さは感じないからいいものの、それもそれでどうなのだろうと悩むところだ。
「ううん。でも、王様になるのは心配だけど、いい人も多くて良かった」
心配性のユキや口悪い健星、それに加えて歴史上の人物まで味方になってくれるというのだから、鈴音の心配も当初より半減だ。しかも、冥界で母の紅葉と再会できた。さらに紅葉と泰章も電話で話すことが出来て、娘もびっくりするほどのラブラブっぷりを発揮してくれた。
「このまま、何事もなく選挙が終わればいいんだけど」
思わずそう呟く鈴音だが、世の中、そう上手くはいかないものだった。
「職員室荒し? 何それ?」
教室に着くなり、仲のいい福島彩香が学校で起こった事件について教えてくれた。鈴音は意味が解らずに目を丸くしてしまう。
「そのまんまよ。職員室がめちゃくちゃにされていたんだって。おかげで今日の授業はなし。これから全校集会だって」
彩香はこれでテストもおじゃんになってくれていればいいのに、と呑気なことを言う。確かに鈴音もテスト結果は散々だろうことは解っているが、それよりも気になることがある。
「ユキ、どう思う?」
カバンを机に置きながら、鈴音はこそっとカバンの中のユキに確認。
「学校の中に妖気が残っています。犯人はまず妖怪で間違いないかと」
「ということは、これも妨害工作の一つ」
「だと思いますね」
やっぱりか。鈴音は鬼退治すれば万事解決とはいかないんだと溜め息。すると、校内放送が鳴った。
「本日は臨時の全校集会が開かれます。全校生徒は体育館に集合してください」
「ほら、言ったとおりでしょ」
それに彩香がどうだと自慢してくれるが、鈴音はどうやってその情報をキャッチしただかと、そっちが気になる。
「ああ、それは簡単。私、今日、日直だったのよ。で、職員室に配布物を取りに行ったら、先生たちが大騒ぎしてたってわけ」
「なるほど」
意外と単純な理由だった。ここ最近、小難しいことばかり考えていたせいか。現世で起こることなんて、大体は単純だということを忘れそうになる。
「ともかく、行こう」
「そうね」
職員室荒しか。しかし、妖怪はどうしてそんなことをやったのだろう。鈴音は首を捻ってしまうのだった。
同じ頃。健星は警察署で険しい顔をしていた。
「
「そう。近所の川で目撃情報が相次いでいるらしいっすよ。SNSにもほらっ」
そう言ってバディを組んでいる本田裕也がスマホを見せてきた。そこには、河童の頭と思われる部分が川に浮かんでいる写真があった。
「誰かの悪戯じゃないか」
「まあ、そうでしょうねえ。でも、あまりに目撃情報も多くて、さらに子どもが相撲しようと誘われたとか、買い物帰りの主婦がきゅうりを盗まれたとかで、問題になってますよ。わりと本格的な悪戯ですよねえ。ってか、河童ってやっぱ、きゅうりが好物なんすね」
本田は呑気に言うが、健星には頭痛の種が増えたことになる。まったく、これならば月読命が王のまま、自分が補佐している状態の方がマシじゃないか。そんなことまで思ってしまったのだった。
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