第66話
啖呵を切ったはいいものの、月光の雫以外で攻撃することは避けたい!!リンベルドの耐久性は人間並み、魔族じゃかすり傷でも人間には致命傷になりかねない!今の脆弱な身体から抜け出す為に喜んで攻撃を受けようとするだろうし、それよりもっと避けたいのが自傷行為!!
「ルーデン、ガイラードは彼を魔法で抑えて!!指一本動かせないよう徹底的に!絶対に殺すな!!」
「「はい!!」」
「ドロシーは回復!彼から目を離すな!!たとえ舌を噛もうとも、即座に治して!」
「はい!」
彼らにそう指示し、ひとまずの時間稼ぎだ。多分レベルはリンベルドの方が上だろうから眠らせらんないし…そもそも効果短いし。しっかし、よく初対面の子供の言う事聞いてくれるなあ。赤目と魔王クリソツの顔面効果抜群だね!お父様とアンリエッタが自分はどうする?と聞いてきたので、屋敷の探索をお願いした。
…多分、あの屋敷には使用人がいるはず。復活の魔法には生贄が必要だから。生存しているかどうかは五分五分といったところかな。その人の生命力によるから…。…クソ腹立つ使用人達だったけど、殺したい訳じゃ無かったし…操られていたからな。出来る限り救助しよう。
そして問題の月光の雫だが…リュウオウに持たせたままだった!!証拠品だからと思って団長に渡したら、なんかボロいし持ってていいぞって言うから!
斬れ味が悪いとはいえ抜身のまま持ち歩くのもなーと思い、伯爵邸に着くまではとりあえずリュウオウに渡しといたんだった…!一旦精霊界に返せばすぐここに呼べるけど…持ち物は現世に残るんだよな…!!
クックル、ガンマに通信!!
「…出ない!!じゃあデルタ!!」
〈…はい、ヒューです。〉
「出た!アシュリィですが、アシュレイは何処に!?」
〈先程ジュリアを置いて、リュウオウに乗り飛び立ちました。その…殿下とリリーナラリス嬢と、私も…。〉
…はい?なんで?
〈殿下方は目を覚まし、貴女のもとに行くと言うアシュレイに無理やりくっ付いて…私もお供しています。〉
あ、目え覚ましたんだ。良かった…多分影響は最初だけだったんだろうね。…じゃなくて、なんで!?
〈お止めしたのですが…殿下に魔法を使われては私では手に負えず…。せめてと思い同行しています。通信ですが、アシュレイと殿下とリリーナラリス嬢は今興奮状態で…それどころではなく。〉
ぐうううう…!!そうだ、ヒュー様は剣の腕では王国一とも呼ばれるほどだが魔法はからきしなんだよな。相手が殿下じゃなければ魔法を使われる前に斬り伏せることも出来るが…もう!
来るもんはしょうがない、結界の中に入らなければ安全でしょう。それより問題は!月光の雫!私達魔族にとって魔族殺しのあの剣は天敵だから、魔族が使い手に選ばれることは無い。だからランス様かミーナ様、他に過去選ばれた人のところに自動で飛んでいくはずだ!それを追いかけてもらえば…!
〈ボロい剣…?あの白銀に輝く宝剣ですか?アシュレイが所持しています。〉
…………は????
「え………あの、光ってます??」
〈ええ、アシュレイが触れた途端に輝き始めました。と言うより剣がふよふよとアシュレイに近付いて…まあそれで3名が興奮してはしゃいでいるのですが…。〉
…………へえ。
………使い手いたーーー!!!??
あれは正統な持ち主が触れていないと輝かないはず!アシュレイ選ばれよった!!っしゃああい!!運が向いてきたーーー!!
アシュレイなら剣に慣れてるし、リンベルドの器は最強のお父様じゃなくてか弱いレイチェル様だし!絶対勝つ!!
ヒュー様に、リュウオウに最速で向かうよう言ってもらい通信を切る。よし、よし!いい流れだ。使い手を探す手間が省けた。
リンベルドは今の会話を聞いていたのだろうが、特に脅威には考えていないようだ。まあ、彼は月光の雫なんて知らないし…。だがこちらに策があると考えているようで、抵抗が激しくなっている。3人の連携の前に身動きがとれずにいるが。
しかし…流れ良すぎる気が。私の数千年に及ぶ努力は一体…?
【その努力の結果だよ。さあ、自分と仲間を信じて、行きなさい。】
……?何か聞こえたような。気のせいか。
リュウオウが着くまでまだ時間がある。今のうちに私も探索に行こう。私としてはやはり地下が怪しい。早速…って、上が騒がしい?
「あっはっはっは!!やだー、変なドレス!こんなのが流行ってるのかしら…?この国の人間に生まれなくて良かったわー。」
真面目にやってアンリエッタ!!気持ちは分かるが、それ(ゴテゴテピンク)は標準じゃないから変な知識に加えないでね!
「うーん、これはアシュリィには似合わないなー。こっちの」
真面目にやれっつってんだろうがっ!!?屋敷の外じゃ部下が命懸けで戦っとるというのに何やってんだこの魔王!!彼らを信じているからなんだろうけど、もうちょい威厳見せて!
それぞれ拳骨を落として私は探索に戻る。…ここはキリエ様(次男)の部屋か。がさごそ…お、エロ本発見、男の子よの~。
「こ、こらー!アシュリィにはまだ早いよ!」
取り上げられた。…こんなんやってる場合じゃねえ!私達は片っ端からドアを開けて行くが、やはり誰もいない。ここは2人に任せて、私は地下に…その前に。
「ねえお父様。さっき私がガイラード達に指示出してた時…なんで何も言わなかったの?あれは本来お父様の役目でしょう。」
「んー?それは君が一番分かってるでしょう?…落ち着いたら、全部話してね。」
…バレてる。なんか隠してることがバレバレだ。それでもお父様にとっちゃ私は初対面なのに…よくもそこまで信用してくれるよ。
…うん。全部話すよ。お嬢様達には言えないが、魔族の皆ならいいでしょ。そして…今度こそ親子として良い関係を築きたいな。
「ここに誰か倒れてますよー!血塗れの女の子ー!」
…っと!?女の子…アイニーか!アンリエッタの声は、侯爵の書斎?…っ頭を割られてる…散らばっている破片からして、花瓶?
なんで…?侯爵が禁術を使う時、いつも子供達は…姉妹は寄宿学校にいたか。兄弟は生贄に使われて…でも若いおかげか死にはしなくて。ただこの怪我を見るに、生贄じゃないな?誰かに、殺されただけ…。アイニー…腹は立つし大嫌いだけど…せめて安らかに
「う…。」
「「「生きてる!!?」」」
すげえ生命力!!サスペンスに向かないね、急げば間に合うぞこれ!えーと…。
「完全回復」
言霊考えんの面倒になってきたわ。私オタクだったから格好つけてたの…?
…もう、日本語使うのやめよう。私はアシュリィ=ヴィスカレット=ウラオノス。神宮寺有朱じゃない。日本も大切な故郷だけど…もう、私の世界はここだから。
っと、それよりアイニーは。ほっ…呼吸も安定している。流石にこの状態の女の子を放置出来るほど非道にゃなれん。仕方ない…どこか安全な場所は、と。
「……ぇ…?」
あ、目え覚ましそう。喧しいから眠らせておこうかな…?
だがぱっちり開いた彼女の目が合う。あー、なんて説明しよう。そもそも今の体勢、私は片膝をついて立ってる方の足と腕で彼女を支えている、つまり結構密着している状態だ。
「何しているの、離れなさい!!」くらい言われそー。…と思っていたのだが、彼女はとろんとした目で徐々に顔を赤らめていき…
「……わたくしの…王子さま…?」
………………それはミーのことデスカ?????
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます