間話3
オルヴィアの魔物事典・スライム
●スライムの性質
土中の微生物が魔界の風に汚染された有機物を分解した際に魔精力を取り込み、魔物化したもの。
一つの核とそれを覆う粘度の高い物質で構成されているが、稀に核が二つ以上ある変異種も存在する。核が二つ以上ある場合は分裂によって数を増やすことが可能なため、注意が必要である。
長い年月の間でそれぞれの特性に特化したさまざまな種類へと進化している。
生命力が強く、体が破壊されても何度でも再生する。体を破壊して核を露出させ、組織を完全に破壊しない限り死なない。
表面がぬめぬめしているため斬撃による破壊は難しく、槌などで組織を叩き潰すやり方が一般的である。
物理攻撃では時間がかかるため、火系の魔法で体ごと核を消し去る方法が有効だが、中には炎に強い種や、核が『魔法無効』の種もいるため注意が必要。
●スライムの種類
1.ソイルスライム
<生息域> 土中(世界各地)
<耐性> 土
<弱点> 火
初期に誕生した種類。茶色い星形をしており、対象物にへばりついて溶かし、有機物と魔精力を奪う。
体長は10cmほどで移動速度も1mm毎秒と遅く、無機物の密閉容器などに入れてしまえば危険はない。そのため、現在では主に排泄物の処理に使われている。
魔道具『浄化槽』はソイルスライムの核の魔精力を排泄物の分解・処理に使用する装置だが、リンドブロム大公宮や各貴族の邸宅など、一部にしか普及していない。
一般にはソイルスライムそのものを便槽に放っているため、稀にソイルスライムの大量発生が起きるので注意が必要。
2.ウォータースライム
<生息域> 水中(湖、沼など)
<耐性> 水
<弱点> 火
初期に誕生した種類。薄い青色の皿形をしており、対象物にへばりついて溶かし、有機物と魔精力を奪う。
体長は20cmほどで、水中では漂うのみで泳ぐことはできない。ソイルスライム同様、無機物の密閉容器などに入れてしまえば危険はない。そのため、現在では主に飲み水の浄化作用に利用されている。
魔道具『浄水器』は、ウォータースライムの核の魔精力を水の浄化に使用する装置で、一般家庭だけでなく遠征が多い兵士の間でも広く愛用されている。
3.ファイアスライム
<生息域> 土中(火山帯など)
<耐性> 火
<弱点> 水
ソイルスライムのうち、地下のマグマと接触したことで生まれた種類。半球形でつねに炎を纏っている。
通常は土中の生物から有機物と魔精力を奪って自らの養分としているが、火山の噴火等により大気中に飛び出してくることがある。
体長は5cmほどと小さいが、周りの物をすべて燃やしてしまうため、陸上に現れた場合は最優先で退治しなければならない。
火系の魔法は効かないため、水中に閉じ込めた上で凍らせ、核ごと破壊する必要がある。
魔道具『魔導ランプ』はファイアスライムの核の魔精力と再生力を明かりに変換する装置だが、ファイアスライムを生きたまま確保するのが難しいため一般家庭には普及されていない。
通常は死んだ個体の核を利用した使い捨て魔道具『
4.ウインドスライム
・・・・・
* * *
「あのー、アイーダ女史?」
「何でしょう?」
「最初に仮設トイレで用を足す羽目になったのって、これのせい?」
「そうです。マユ様の排泄物に大量の魔精力が蓄えられていた場合、魔道具『浄化槽』が機能しなくなるばかりか、ソイルスライムが発生する可能性がありました」
「げげっ」
「もし核を二つ以上持つ変異種が生まれた場合は危険です。そこから大量発生に繋がりますからね」
「核が二つ以上あると、どうして大量発生になっちゃうの?」
「分裂可能、ということになるからです」
「分裂……」
「スライムは核さえあれば何度でも体を再生できます」
「ふんふん」
「まず二つの核を一つずつに分け、これに体を再生させると、二体のスライムになりますね」
「うん」
「元々が核を二つ持っている訳ですから、魔精力を取り込めば再び核を二つ持つスライムに再生することができます。これがさらに分かれたとすると、四体に」
「そうだね」
「分裂にかかる時間は個体にもよりますが、仮に一日費やしたとしても、十日で512体。一カ月で約10億……」
「ひええええええええ!」
「お分かりいただけましたか?」
「わ、わかった……。本当に色々とありがとう、女史……」
体のケアから授業、そしてシモの世話まで……と、アイーダ女史には一生感謝してもしきれない、と感じたマユであった。
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