第16話 電撃系幼馴染現る
入学してから1週間が経過して、魔法学園での仕組みについて改めて把握することが出来た。
授業は週6日制。毎日8:20から10分間のホームルームがあった後、1時限当たりが1時間30分の授業が始まり、途中1時間の昼休憩を挟む。
月曜から金曜は6限まで、土曜日は原則2限までと成っており、日本の高校と比べると、スケジュールはハードだ。
なお、ゲームでは1日が3分割にしかされていなかったため、6限もある事を知った時は驚いた。
授業内容は語学や数学、歴史、地理、魔術概論などの必須科目と、魔法実技や体術などの選択科目に分かれる。
また教員の許可を得ることで選択科目として、学園外でのボランティア活動や、バイトなどもできる……いずれはモンスターの出る遺跡探索なども。
当然護衛である俺とユフィはリーフィアと同一の科目を取る事に成るのだが、一部の科目――リーフィアが適正を持つ風魔法の授業は、主人公の様に全属性適正があるわけではないため、ミヨコ姉さんに代わりに護衛してもらうことで対応していた。
そんな珍しくも一人で受ける授業、雷魔法入門の授業に向かう途中で小腹が空いたため、購買に向かって菓子パンを買いに行く。
「おっ、ラッキー。ミレーヌ王立魔法学院名物、トロピカルメロンパンあんじゃん」
思わず口に出しながら最後の1袋へ手を伸ばした所で、脇からも手が伸びてきた。
「ん?」
袋を引っ張るが、一向に相手が袋を放す気配がない。
「離せよ、俺が先に取った――」
ぞ、と言おうとして、隣に居る少女に思わず目を奪われる。
ピンク髪ツインテールと言う、地球ではそうそうお目にかかれなかった少女が、ソコには立って居た――そして、彼女こそが俺がゲームを投げようとした元凶。
「アンタこそ、離しなさいよ」
主人公の幼馴染にしてツンデレヒロインにして
「お前、復学したのか?」
今日のホームルームの時点では教室に居なかったのに、今此処に居る事が驚きを隠せない。
「はぁ?何で、アンタ私の事知ってるわけ?」
訝し気な顔でそう聞かれるが、本当の事を言う訳にもいかない。
「……アンタと暁 悠斗って奴、入学初日から同じ教室の奴が休んでたから目立ってんだよ。それに、ヘイズ家のお嬢様は雷の申し子って言われて有名だしな」
そう言えば彼女も雷属性に適性有るから、今後は一緒になるな……そう考えた所で「隙ありっ」と菓子パンの袋を取り上げられた。
「残念だったわね、私と張り合おう何て100万年早いのよ!」
「……まぁ、良いか」
トロピカルメロンパンは惜しいが、彼女と言い争ったことの面倒を考えると怠くなり、黙ってアンパンをレジへと持っていく。
「何よ、張り合いがないわねぇ」
そう言って、清算し終わったメロンパンを見ながら、シャーロットが不服そうな顔をしている。
「そいつは悪かったな」
俺は軽く彼女に謝ると、購買を出て授業の行われる第3運動場へと向かいながら、アンパンを口にする。
「ちょっと、待ちなさいよ」
どんどん先を歩いて行く俺を、彼女が小さい歩幅でチョコチョコと付いてくる。
「俺はこの後授業有るから、先を急いでんだ。だから、じゃあな」
「じゃあなってアンタ、この私が声かけてあげてるって言うのに失礼じゃない!?」
「さいですか、そいつはゴメンゴメン」
彼女の言う事を適当に流すと、その場でキーッと怒ってる。
一見すると失礼だが、俺のこの態度にも理由はある。
何せ彼女は主人公に対してはベタ惚れだが、他の男キャラクターは
その癖、家の都合で醜悪な貴族に嫁ぐと言うキャラクターだが、要はモブな俺にとっては真面目に相手するだけ無駄な相手だと分かっている。
その悲惨な結末から助けるにしても、本人に気づかれない様にやった方が、よほど楽だろう。
「って、いつまで付いてくるつもりだよ?」
まさか登校初日――しかもHRさえ出てないのに、選択授業を受ける何てことも無いだろう。
「べ、別に、道に迷った何てことは無いわよ?」
そうシャーロットが言うのを聞いて、彼女が方向音痴だったことを思い出す。
「メインの校舎はアッチだ、教員室も1階に有るから後は頑張れ」
校舎のある方角を示すと再び歩き出すが、それでも尚シャーロットが付いてくる。
「何で未だついて来るんだ?」
「べ、別に良いじゃない。アンタは、これから何の授業受けるの?」
「雷魔法入門」
そう答えると、シャーロットの口角が上がった。
「あら、貴方も雷魔法使うのね。まっ、私の足元にも及ばないでしょうけど」
「そうですね」
ホホホと笑うシャーロットを捨て置きながら歩いていると、雷魔法入門の担当教員と、同じ科目を取った生徒達の姿が見えた。
「おっ、センはん遅かったやないか」
そう言ってティガースが近寄って来て、後ろにシャーロットが居るのを見つけると目を見開く。
「まぁたゴッツイ美人連れてんのう、何処で引っ掛けて来たんや?」
「別に引っ掛けたわけじゃない、勝手について来たんだ」
「かーっ、モテる男はつらいってか?ワイにもそのモテモテ成分よこせや!」
そう言ってティガースに絡まれている間に、シャーロットが担当教員と話をした後、再度こっちへと歩み寄って来た。
「なんだよ?」
「別に、ただアンタの知り合いだって言ったら、今日はアンタとバディを組めって言われただけ」
そっぽを向きながらシャーロットが口を尖らせていると、横に居たティガースが大声を上げる。
「ええっ、じゃあワイは誰と組めっちゅうねん!」
「いや、そんなん誰か適当に探せよ」
そう答えるが、周りは皆前回の授業で仲間が出来ており、アブれている奴は居なさそうだった。
「……ドンマイ」
「そんな薄情なっ」
そんなやり取りをしていると、運動場に授業開始のチャイムが鳴り響いた。
「はい、それじゃあ授業を始めますね。今回は始めましての方も居るので自己紹介すると、私はライト・ウィングと申します。以後宜しくお願いします」
柔和な笑顔でウィング先生が挨拶すると、パラパラと拍手が起こった。
「ありがとう。前回の授業では、皆さんの自己紹介とバディ決めまでやってもらいましたが、授業始める前にまずは、体調不良でこれまで休んでた生徒さんが復帰されたので、自己紹介してもらいますね。ヘイズさん前へどうぞ」
シャーロットが先生に促され、前に出ると男子生徒達がソワソワしだした。まぁ、見た目は可愛いからな。
「私の名前は、シャーロット・ヘイズよ。貴方達とはレベルが違うと思うけど、程々によろしく」
そう挨拶すると皆一斉にシーンとなるが、しょうがなしに俺が拍手すると、ティガース始め数人が顔を引きつらせながら手を叩いた。
「あー、それじゃあ早速授業に入るけど、前回言ったように先ずは初歩の魔法である雷の矢を5m先の的に当てる練習から始めようか。取り敢えず僕が、お手本を見せるね」
言葉と共にウィング先生が、的の前に移動する。
「駆けろ雷撃、雷矢」
ウィング先生の手に魔法陣が展開されると同時、5m先の的に焦げ跡がついた。
流石は国内有数の学校の教師だけあって、展開速度と術式の安定性はかなりのものだ。俺が拍手すると、周りの生徒も拍手していた……シャーロットを除いて。
「ありがとう。それじゃあ、皆もやって見て」
その言葉と共に皆がそれぞれの的の前に移動するが、ティガースが途方に暮れてるのを見て、声をかける。
「ティガース、お前も一緒にやろうぜ。別に良いですよね?先生」
「ええ、構いませんよ」
「おー、さっすがセンはんや!心の友よー」
「うぜぇ、抱き着くな」
そんな事をやりながら的の前に移動すると、シャーロットがため息を吐いた。
「はぁ、王立魔法学院っていうから期待して来てみれば、先生があの程度じゃあ、たかが知れてるわね」
「なんや、けったいな事言いよる子やな」
そうティガースに耳打ちされるが、肩を竦める。
「そんな言うなら、お前がやって見ろよ」
「言われるまでも無いわ」
キッとシャーロットが俺を睨みつけた後、詠唱を開始した。
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