53.ワールドインテリジェンス【3/31】
「お前たちには苦労を掛けたな。ようやくこちらの世界に戻ってこれたからな。あとは彼らがうまくやるだろう。俺はしばらく休憩だな。」
「それにしてもその地球意思っていうやつ。どういう存在なんだろう?」
「…ガイア説というのがあるのは知ってるだろう?そういう意識の集合体だと俺は思っている。その意識の集合体は様々な次元の世界ともつながりがあって、その時々であまりにもひどい最期を迎えようとしている世界には介入させているようだな。それが偶然ガイアとつながった俺だったというわけだ。」
「父さんはなんで一人でそんなことしてたの?もっと仲間を増やそうとは思わなかったの?」
「父さんは結構ボッチだったんだ。友達もいないしいつも一人でいた。だからこそガイアとつながるきっかけもつかめたんだと今では思うけどね。そしてその知識は誰にも知られちゃいけないと思ったんだよ。異端児扱いされて益々のけ者になっちゃうからね。爺さんとばあさんはそのことを知ってたけど。俺が世界中からつまはじきにあうといって、このスキルを人前で使うのを許さなかったな。その親父たちも結構若いうちに交通事故で死んでしまったんで俺は生涯孤独だったんだよ。」
父さんはそう言ってリビングにある仏壇の方を見た。
「おかげで仲間を作ることもなく、今まで一人で対処してきたんだよ。かわいい嫁さんももらったから孤独はあまり感じてなかったけどな。」
そう言って少し父さんは照れていた。
「俺はお前が羨ましいよ、紀夫。お前は一人じゃない。大勢の仲間たちがいるし、お前の家族だっている。そしてお前は能力を出し惜しみせずにまっとうに使いこなしてるじゃないか。」
「俺だって怒りに任せて相手を殺そうと思ったことは何度もあったよ。とくにアメリカとのいざこざは、いっそこの国を滅ぼそうかとも思ってたけどね。そんなことしても誰も幸せになれないって気づいたから、その後ろにいる人たちには消えてもらったけどね。」
「IDの消滅と資産の没収か。お前よくあんな方法思いついたな。」
「今の時代だからできた方法だろうね。ネット社会でネットに存在までをゆだねる世界。だからこそあんなこともできたんだと思う。」
「あの一族もお前のおかげで一掃できたみたいじゃないか。長年陰から世界を意のままに操っていた一族。ああいうやり方があるって知った時に俺は腹を抱えて笑ったよ。よくああいうことを思いついたな。俺がこの世界で仲裁役をやっていたのもあの一族の所為がほとんどだったからな。」
「…それってやっぱり教育の所為だと思うよ。俺は自分でラーニングの利用方法を思いついて、それでいろいろ学習したんだけど、その中でも日本の教育に就て学んでいる時に世代ごとに学んでいる内容が随分と違うことに気づいたんだよね。それを調べるうちに日教組のおかしな点や教育制度の矛盾に気がついて、このままじゃ日本がいいように使われてしまうって危機感があって、ここまで手を打ってきたんだ。」
「うん。毎週お前たちの様子は傍まで行ってみていたからよく知ってるよ。お前たちが考察していたスキルの存在意義もほぼお前たちが考えていた通りだった。唯一抜けていたのはガイアの存在だったけどな。」
「ガイアって何?神のことなの?」
「気づいた人たち、俺は覚醒したといってるんだけど、そういう人たちが表現する言葉に詰まって『神』と言い出したんだろうなって予想はついてるけどね。今までの人類の英知が詰まっている意識の集合体がその答えだ。お前も一端には触れているだろ?お前が気づいた『龍脈』がその正体だよ。」
「なるほどね。」
「しかしお前のラーニングの使い方には驚いたぞ。俺の時には『学習』という単語だけが頭に浮かんで、それで勉強は嫌いだったからあまり使ってなかったんだ。お前のスキルは『ラーニング』という動詞だったんだよな。だからこそ思いつけた応用範囲でもあるよな。それと『アイテムボックス』についてもびっくりしたぞ。分解、修復、復元、改造までできるってどれだけ反則なんだよ。俺のは『収納』って感じで物をいくらでも持って於ける能力だったからな。紀夫の使い方を見て気づいて、俺も使えるようになったスキルもかなりあるぞ。」
「そういえば父さんは最後のスキルはどっちを選んだの?魔王?それとも賢者?」
「俺は…『賢者』を選んだ。あの二択はそれまで努力して使いこなそうとしなければ発現しないスキル選択なんだ。俺の時は3年かかったけどな。」
「え?なんでそんなに時間がかかったの?」
「お前のように俺にはスキルメールは届かなかったからな。俺はたまたまガイアとつながることで一遍にスキルの知識が頭に流れ込んできて1週間ほど寝込んで入院してたほどだったんだ。それからひとつづつ使いこなすために頭の中に詰め込まれた知識を紐解いていったんだよ。だから結構時間がかかったんだ。そして、気づいたんだ。ひとつづつ知らせれば無理なく前に進めるんじゃないかって。それでメールでお前に知らせることを思いついて、1週間に一度メールで発動しているスキルを知らせることにしたんだ。俺の『鑑定』が少し特殊なようで、その人が持つ存在能力まで見ることができるんだ。これはガイアと直接つながった恩恵なのかもしれんがな。」
「なるほどね。いくつもの謎がいっぺんに溶けてすっきりしたよ。…あ、じゃあまだ俺の中にまだ発現していないスキルがあるの?」
「それはお前が直接ガイアにつながってみるといい。今のお前なら余裕で耐えられるだろう。お前は『魔王』を選んだんだろ?」
「うん。俺は魔王を選んだ。俺が今まで授かったスキルはどうやらそっちの方向性かなと思ってね。それにあくまで『魔王』であって、『悪魔王』じゃないからね。魔導の王という意味だと受け取ったんだ。無限に使える魔法と魔力を持つ魔道王。」
「それが正解だったようだな。俺の賢者はどうも『隠者』という意味も含まれているようで、どうしても人前に出て派手なことは苦手になってな。」
「これからは一緒にいれるんでしょ?家族みんなで。」
「そうだな。お前の作った町で暮らしてみたいもんな。」
そんな話をしているところに母さんと美香、しおりと義男と翼が現れた。
今までここにいて黙って聞いていたんだろう。
「…あなた。」
「ああ、ただいま。」
「…おかえりなさい。」
「お帰り、お父さん。元気にしてた?」
「おお、美香も大きくなって色っぽくなってきたな。ずいぶん大人になったようだな。」
「そりゃ毎日MITのオジサマおばさまにもまれて喧々諤々の討論してますからね。いつまでも子供でなんかいられないんだから。」
「…そっか。成長したんだな。」
父さんは美香の頭を撫でた。
美香は泣き出して父さんにすがって泣いていた。
母さんも父さんに抱き着いて泣いていた。
俺たちはジャパン・ラボに飛んでまずは父さんをみんなに紹介した。
そして、これまでのいきさつを話し、父さんも一緒に暮らすことになった。
俺は初期のメンバー20人と共にジャパン・ラボの最地階、地下20階に集まって言った。
「これからガイアに接続してみるよ。俺が大丈夫だったらみんなも次に接続してみてね。じゃあ始めるよ。」
俺は地階で瞑想を始めて気の循環を行い、地下から伸びる気の奔流に身体をゆだねてみた。
するとドンっと突き上げられたような衝撃を受けて俺の頭の中に知識が流れ込んできた。
俺たちはワールドインテリジェンスと呼ぶ地球意識とつながったおかげで様々な能力が覚醒した。
この力を使って地球の未来を変えていく。
完
最後までお読みいただきありがとうございました。
週刊スキルメール 鴨川京介 @csones
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