第55話 風邪の体質

 10月8日木曜日。今朝のメルヘンタオルシティの天気は雨。天気が悪いので、当然気温はむっちゃ下がりました。少し早く家を出たパレットはしっかり一枚多く羽織っていたのですが、たまにくしゃみをしながらの登校です。


「いやー、突然寒くなったねぇ」

「でも東京とかかなり気温が下がったみたいだよ。地元はまだマシだよ」

「そんなに寒いともう冬だね」

「気温下がるの早す……エックシ!」


 パレットはミッチーとの朝の雑談の途中でも思わずくしゃみが……。グズグズと鼻をこすりながら、パレットは窓の外の雨の運動場を見つめるのでした。


「台風が近付いてこれだから、明日はもっと荒れるのかなぁ……」

「どうせなら学校が休みになるくらい荒れてくれたらいいのに」

「でもそこまでにはならないっぽいよ?」

「なーんだ……じゃあしんどいだけじゃん」


 ミッチーは台風の影響があまりない地元に大して頬を膨らませます。そんな彼女を見たパレットは涼し気な表情を浮かべました。


「私は行き帰りだけ雨やんでたら後はどうでもいいかな」

「ま、そこは大事だよね」

「まずは風邪ひかないようにしなくちゃ」

「それも大事だよね~」


 朝から降った雨はその後も降り続き、雨音のBGMを聞きながら授業は続きます。午前中はそんな感じでしたが、最後の授業が終わって放課後になった頃には雨は止んでいました。2人は少し開放された気持ちで視聴覚室に向かいます。


「雨止んで良かったよね~」

「ほら、私の言った通りじゃん」

「え? ミッチーそんな事言ってたっけ?」

「あははは」


 視聴覚室のドアを開けると、いつものように先輩ズが教室の一番前の席に座ってます。パレットは見慣れた後ろ姿を見て安心するのでした。


「こんにちはー」

「おお、いらっしゃーい」


 相変わらず挨拶を返してくれるのは大西先輩だけで、部長はペコリと頭を下げるだけです。それでも、パレットは先輩達との距離が縮まっていくような気がして嬉しく感じるのでした。

 パレット達は磁石に吸い付く砂鉄のように今日も先輩達の後ろの席に座ります。席についた途端にミッチーの口が開きました。


「今日は寒いですよね~」

「でも雨はやんだけん良かったねえ。2人共風邪ひかれんよ」

「先輩達も気をつけてくださいね~」

「あはは、ほうやね~」


 先輩とミッチーの会話を楽しく眺めながら、パレットは話に参加するタイミングを見計らいます。けれど、そのチャンスは中々訪れないのでした。


「……先輩は風邪ひかない方ですか?」

「いや、毎年1日は学校休んどるよ。まぁもっと寒くなってからやけど」

「あたしはあんまりひかない代わりに、ひくと重くなっちゃうんですよ~」

「それあかんやん!」


 2人の会話が風邪談義に移り、やっとパレットも参加出来そうな雰囲気になりました。うまく話が落ち着くタイミングを狙って、彼女もこの流れに乗っかります。


「風邪って……エックシ!」

「うわっ! パレット、大丈夫?」

「すみません……。えっと、急に寒くなったり暑くなったりしたら体調って簡単に崩れますよね」


 パレットは自分の体質について自分語りを始めます。季節の変わり目は特に調子が悪くなる事を話していると、その途中でミッチーが割り込んできました。


「パレチーはすぐ風邪ひくんですよ~」

「ああ~。気ぃ付けんといかんよ~。暖かくしてな~」

「はい、有難うございます。気をつけてはいるんですけどね~」

「ちゃんと……気温に応じた服装や……室温調節、湿度管理が大切だよ……。体調が悪くなって気をつけるより、悪くなる前に対応するように……してね」


 パレットの体調を心配してか、ここで部長からの有り難いお話。風邪談義はそこからも何故か盛り上がって、よく効く風邪薬の話やら、病院に行くタイミングやら、学校を休んだ時の過ごし方やらの話題で盛り上がったのでした。

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