第48話 キャラの名前
10月に入って最初の日。パレットも長袖で登校します。クラスでも半袖の子はもう片手で数えるほどになっていました。
彼女が教室に入ると、早速ミッチーがやってきます。
「やっほー。パレチーも長袖じゃ~ん」
「だよ。当然でしょ」
「何だかんだ言って、あたしらもカレンダーの呪縛からは逃れられないねえ」
「かもね」
2人はそう言って笑い合いました。10月に入ったからと言って特別面白い事が起こる訳でもなく、時間はあっと言う間に放課後へ。
パレットが視聴覚室のドアを開けると長袖姿の先輩達が先に席についていて、思い思いに過ごしているようでした。
「どーもー」
「おっ、来たねぇ。まぁこっち来いや」
「はーい」
パレット達が席につくと、早速大西先輩がニコニコと笑いかけます。
「おお、パレットも長袖やね。秋っぽいねぇ」
「そう言う先輩も長袖、似合ってますよ」
「ほうでえ? ありがとう」
先輩は褒められ慣れていないのか、パレットの言葉に耳がピクピクと動きます。場の雰囲気がほんわり暖かくなったところで、ミッチーが早速切り出しました。
「あのっ、みんなにちょっと質問があるんですけど、いいですか!」
「ん? ええよ」
「どしたのミッチー?」
「……」
この呼びかけに、部長も振り返ると無言でうなずきます。全員が話を聞く体勢になり、ミッチーは軽く息を吐き出しました。
そうして机に肘をつけると、ずいっとその身を乗り出します。
「あの、キャラの名前ってどうしてます? あたし、いつもいい加減に決めていて、それでいいのかなって毎回思ってて……」
「名前ねぇ、確かにパッと思いつかないと困るよね」
質問はミッチーのものでしたけど、この問題に関してはパレットも同じ悩みを持っていたので、揃って先輩方の答えを待ちました。大西先輩は腕を組んで少し考え込むと、改めて後輩2人の顔を見つめます。
「凝る人はむっちゃ凝るみたいやねえ、色々と調べたりして。そのキャラの役割にふさわしい名前にする人も割とおるし……」
「舞台となる地域がはっきりしているなら……その地域に住んでいる人の名字を……参考にする人とかもいるみたい……。ワタシも……いつも悩んでるよ」
先輩方2人のありがたい話をパレット達はうなずいて聞き入れます。パレットはその答えに納得したのですが、ミッチーは更に続けました。
「やっぱり名前に必然性がある方が人気って出ます?」
「それは分からんよ。実験した事もないし。ただの自己満足かも。ほやけど、名前に愛着のある方が執筆は楽しいんやないかな」
「コメディ作品なら……名前がダジャレでも許されるし……。シリアスな作品なら本当に実在しそうな名前の方が……いいでしょう? 作品に合わせるのも……大事……かな?」
「なるほど! そうですね!」
こうしてミッチーの不安もなくなり、その後はそれっぽい名付け方のレクチャーを先輩方から受けます。パレットは便乗してその話を興味深く聞きました。その方法はネットを駆使するもので、2人は検索の無限の可能性に感心しきりなのでした。
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