学園のアイドルは嫉妬して甘えまくる
「ぬいぐるみ良い」
晩御飯を食べ終わった後、海斗は自室で犬のぬいぐるみを抱き締めていた。
思っていたよりずっと抱き心地が良く、離れたくない気分に陥ってしまう。
ただ、愛奈は不満たらたらなようで、「むう~……」と頬を膨らます。
ぬいぐるみに嫉妬したということだ。
彼氏が自分でなくて他のに夢中になったら仕方ないだろう。
「海斗くん、私のことを抱き締めてよ」
「わかった」
ぬいぐるみから離れ、海斗はすぐに愛奈のことを抱き締める。
抱き締めた感触はぬいぐるみとは違って温かく、愛奈の方が良いかもしれない。
特にぬいぐるみにはないこの柔らかな感触……普通の男なら間違いなく愛奈を選ぶ。
「ぬいぐるみより私に抱きついてほしい」
甘えるかのように、愛奈は海斗の胸に顔をうずめる。
そして頬を胸板にスリスリと擦りつけ、自分の匂いをつけているのだろう。
たっぷりと身体に愛奈の匂いそうがついていそうだ。
それについては良いのだが、甘えてくる愛奈は子犬のようで可愛らしい。
犬を飼っていたというのを知って狙ってやっているかもしれない。
だとしたら愛奈は計算高い女ということになる。
苛められないようにどうすれば良いか計画を練り、学園のアイドルとまで言われた愛奈の演技は相当凄いだろう。
過去に虐められたことがあると言っても信じる人は少なそうだ。
「ぬいぐるみより私の方が魅力的だもん」
「可愛いかよ」
正直に出た言葉だった。
今の愛奈は演技をしているとは思えず、素直に甘えているだけだろう。
とても可愛く、海斗は思わず悶えそうになる。
嫉妬している愛奈はもう一度見たいが、あまりさせるものではないだろう
本人からしたら嫌な気持ちになるのだから。
「ありがとう。今日はもう離さないからね」
むぎゅーと言わんばかりに愛奈は抱きつく力を強める。
本当にご主人様がどこか行ってしまわないようにペットが甘えているように思え、犬を飼っていた身である海斗からしたら効果抜群だ。
同じ哺乳類なのに犬にはない柔らかな部分が愛奈にはあるが。
「甘えん坊だな」
「そうだね。海斗くんのことが好きすぎてこうなっちゃうの」
この可愛すぎる生き物を抱き締めたいという衝動にかられ、海斗は愛奈の背中に腕を回す。
抱き締められる思っていなかったようで、愛奈は一瞬だけ身体をビクッ震わせた。
でも、嫌な顔は一切せず、再び愛奈は海斗の胸板を楽しむかのように頬を擦りつける。
愛奈はとてつもなく甘えん坊で、これからも沢山甘えてくるだろう。
そしてもうしばらくしたら抱いてほしいと誘惑してくる可能性もある。
クラスメイトは既に海斗によって愛奈は抱かれてると思い込んでいるし、未経験のままというわけにはいかない。
だからもう少ししたら愛奈は「抱いて?」と言ってくるだろう。
海斗も思春期であるため、誘惑されたら断れないかのしれない。
抱くのであれば付き合いたいと思うくらい好きになってからのが良いのだが、本能が愛奈を求めたら止めるのは難しくなるだろう。
愛奈は海斗に求められたら断ることはしないだろうが。
「ねえ、海斗くんとずっと一緒にいれる?」
「浮気しなければいれるんじゃないか」
「しないよ。海斗くんしか好きになれないもん」
何年も海斗のことを一途に想っていたのだし、愛奈が他の人を好きになるなんてまずないと言っていい。
愛奈は海斗のことを助けてくれたヒーローだと思っているのだし尚更だ。
「そういえばさ。髪が原因で虐められてたのに何で長いの?」
記憶が一部ないから小学生の時はどうだったかわからないが、トラウマなら伸ばそうとしないはずだ。
「昔は短くしてたよ。でも、海斗くんがピンクの髪は綺麗だし短くしてるのはもったいないいって言ってくれたんだよ」
「そうなの?」
「うん。それで伸ばそうと思ったの」
よっぽど海斗の言葉が心に響いたのだろう、でないとこんなに伸ばそうとしないはずなのだから。
髪が原因で虐められたのに綺麗だと言われたら、それだけで好きになってもおかしくないかもしれない。
言った本人は記憶がないが。
「確かに綺麗だと思うな」
テレビでピンク髪は見たことがるが、明らかに染めているので愛奈ほど綺麗ではない。
それ比べて愛奈の髪は痛んでいる様子もなく、手櫛してもひっかかりすら感じられないのだ。
「ありがとう。海斗くんに褒められると嬉しいな」
「へええ」と可愛らしく笑みを浮かべ、愛奈はずっと甘えているのだった。
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