#57 ファントム襲来

――ザ―ッ


ノイズが走る――ッ。


「ああ、思い出した。この花びら……俺がフェ―ベの為に設定した花だ。間違いない」

「青い花びらですわね。ハヤト様はどんな花か知っていますの?」


コ―デリアは頭を傾け質問した。


「ああ、これは勿忘草わすれなぐさだ。俺は花言葉に惹かれ、彼女のイメ―ジに合わせて用意し、 髪飾りにした」

「ハヤト様は私よりも物知りですのね」


「綺麗な花ですっ」

「本当に素敵な花です!」


「花言葉は【私を忘れないで】だ。これはとある逸話いつわから来ている」

「なんだか切ない花言葉なのね」


リシテアは切なそうにもう原型を留めていない花びらを見つめる。


「ああ、だがそれだけじゃないぞ。実はこの花にはがあるんだ。それは――」


俺は彼女たちにもう一つの花言葉を説明した。


「――――素敵な花言葉ですわね!」


コ―デリアは感心している。


「勿忘草……そんな花言葉が隠されていたなんて……」


俺の言葉を聴いたリシテアも同じく感心していた。


「じゃあ尚更その花をそのフェ―ベさんという方に渡さないとですね!」


イオは俺達を元気づけるように気を使っているか、楽しそうに言う。


「でも、花がばらばらです……。これじゃ悲しいですっ……」


そういったのはレアだ。


「そうだな……。なんとかこの花を元に戻さないと」


俺は散らばった花をかき集めようとする。


『その花びらを元通りにして髪飾りにすればいいのだろう? 僕に任せてよ』


加賀美かがみは俺に話しかけてくる。

俺は心のなかで応答する。


『そんな事が出来るのか?』

『ああ、それくらいなら恐らく可能だよ。まあ、暫く時間はかかるけどね』

『本当かっ?! 頼むぞ!』

『完成したら君のポケットにでも入れておこう』

『楽しみにしておく!』


フェ―ベ……生きていてくれよ……。


「……さあ、俺達も先を急ごう――」


『――お前が、勇者か。そして、君たちが勇者の仲間……か』


突如、どこからか声が聴こえた。


「だ、誰だ?!」


『私は――ファントム。

 魔王様に貴様らを監視するよう命令され、ようやく見つけた……という訳だ』


俺の正面に幻影のような姿がゆっくり見えだした。

幻影は、半透明の剣を持っている。


「魔王? お前は魔王の手下か?!」


俺達は武器を構える。


『そうだ……貴様らを監視する命令だったが、気が変わった。今ここで死んでもらう』


――シュン


ファントムの姿は一瞬にして消える。


『どうだ……? 姿が見えない恐怖は?』

「……《シ―ルド》ッ!」


俺は咄嗟にスキルを発動させ、幻影の攻撃を防ぐ。

さっきまで消えていたヤツの姿は今はハッキリと視える。


『ほう……そこそこやるようだな。だが――』


また、幻影の姿は消える。

そして、姿を現したと思うと、そのまま彼女たちを襲う。

彼女たちの悲鳴が聞こえる。

くそっ……ヤツは姿を消しながら攻撃ができるのか……ッ!


『拍子抜けだな……。こんな奴らが勇者とその仲間とは……。魔王様も落胆するだろう』


幻影は消えては現れ、消えては現れを繰り返す。

いや、待てよ?

アイツ……攻撃している瞬間だけ姿を消せないのか?!


「みんな! アイツは攻撃する瞬間だけ姿を消せないのかも知れない! 

 攻撃する瞬間を狙うんだッ!」


「確かに、そんな気がするわね……」


どうすべきか考えているリシテア。


「でも、弱点が分かったところで、姿を現す瞬間だけを狙うなんて……」


コ―デリアはファントムに対しどうすればいいか考えていた。


「とても、難しいですっ……」

「どうしたらいいのでしょう! ハヤトさん!」


レアとイオも相当悩んでいた。


俺達がそう話している間にも、ファントムの攻撃は止まない。


「クソッ! このままじゃ!」


やばい……。このままじゃ誰かが死んでしまう!

いや、下手したら全滅もありうる……。

どうする? 逃げるか? 

いや、こんな狭い場所から逃げられるとは思えない。

そもそも、こんな強敵からどうやって逃げる?


そうだ、あいつは恐らく悪魔なんだから、闇属性のはずだ。

光属性のコ―デリアが強力なスキルをぶつければ一撃で倒せるか?


そういえば……俺はカウンタ―スキルを持っていた筈だ。

相手の攻撃を弾き、相手のスキを付く技だ。

タイミングよく弾くことに成功すれば、相手は一定時間硬直する。

その間に、コ―デリアが強烈な一撃を与えれば――ッ!


「コ―デリア!」

「なんですの?」

「俺がヤツのスキを作るッ! その間にコ―デリアのスキルをヤツに叩き込んでくれ!」

「……ッ! 任せてくださいですわッ!」


こんなにも彼女が輝いているのを俺は見たことが無かった。


『なにブツブツ言っている。よそ見してると、死ぬぞ』


幻影が一瞬、俺の前で姿を現す。


来た――ッ!


俺は意識を集中させる。


幻影の剣が高速で振り下ろすのが見えた。


「《ブレイクパリィ》ッ!」


――カキィイイイン


「何……?!」


攻撃を弾くとヤツは硬直する。


「コ―デリアぁあああああああああッ――!!!!」

「《シャイン・ラ―ジソ―ド》!」


コ―デリアの杖の先から巨大な光の剣が出現し、そのままファントム目掛けて――


「はああああああああああああッッ!」


――斬った。


刹那――強烈な閃光。


閃光は静かに止み、視界は元に戻る。


ファントムの姿はゆっくりと消えていく。


『見事な……連携だった……』

「魔王は一体何者なんだ!?」


ファントムは俺の質問には答えずに、代わりに驚きの言葉を発する。


『魔王――様が貴様らに目を付けた意味も……分かった気がするぞ……』

「なん……だって!?」


もう、俺達の視界にはファントムの姿は無かった。

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