#50 アレクサンダー王

「それで? お前は何者だ? チカラをくれる代わりの条件とはなんなのだ?」


私は、力をくれた存在に質問をした。


『ワワタシ、ノ、、ハ…………』

「名前はなんだ?」

『《フォルト》ダ、神ニモ、悪魔ニモ、ナレルル、存在ダ』


神にも悪魔にもなれる? なにを言っている?

よくわからないが私はうなずき、話を進めた。


「……お前は何が目的だ? フォルト、私にして欲しいこととはなんだ?」

『カン、タンナ、話、ダ。“ユウシャ”、ヲ、殺セ』

「なに……? 勇者をだと?」


私はこの世界にいないと思っていた“勇者”という言葉に驚く。


『ソウダ。ソレニ、オ前ニ、トッテモ、殺スベキ、存在ノ、ハズダ』

「どういう意味だ?」

『――今ノ奴ハ、オマエノ存在ヲ、忘レ、ホカノ、女ト、旅ヲシテイル』


「なに……?」


私の存在を忘れていた? 何だそれは。

その言葉を聞いた瞬間、勇者ハヤトなる存在にいきどおりを感じた。


「そいつを殺せばいいのだな」

『アア、ソウダ、殺セ』

「……わかった」


私がそう返答をすると、フォルトの声は途絶とだえた。

男のポケットから鍵を取り出し、牢屋を出る。

ああ、ここが牢屋の外なのか。外はオレンジ色に明かりが灯っていた。

……初めて見る景色だ。


私は階段を探すため、狭い通路を探る。

通路を歩いていくと、やがて上に登る階段が見える。


コツコツ、と螺旋らせん状の階段を登っていく。

登っていった先には、鉄製のドアがあった。


私は鍵を取り出し、がちゃり、とドアを開ける。

天井は高く、塔のようだった。

すると、人が四人ほどテ―ブルを囲んでイスに座り、何かを話していた。

あれは――看守達か。


看守達はドアの開く音に気づき、こちらに振り向く。


「お仕事ご苦労……ん?」

「やぁ……はじめまして」

「お前は――!?」


看守達は捕まっている筈の私の存在に驚き、剣を構える。

そして、一人の看守はそのまま剣を私に向かって振り下ろす。

私は剣を素手で掴み――。


「なんだその弱い攻撃は……」


――そのまま握力で折った。


「なっ――!?」


剣は見事に真っ二つになり、刃の部分が地面に落ちる。


「そんなものか……。《グラビティ重力リバ―ス反転》……!」


途端、看守達は宙に浮き上がる。


「な、なんだコレは!?」


看守たちは浮き上がり、物凄い勢いで上昇していく。

手足をバタバタさせ、もがく看守達。

私は天井まで上昇させた後、魔法を解除する……。


反転していた重力が元に戻り――そのまま地面に落下していく。


「ぎゃあああああ!」


――グシャ


地面に落下した看守たちの血溜まりが出来る。

私はそのまま外へと通じる部屋の出口に向かいドアを開けた――。


◇◆◇◆


「ここが、外の世界……」


私は初めて見る外の景色に見惚みほれていた。

初めての景色。様々な色。体を撫でる風。流れる雲。

いい匂いのする空気。揺れる草。

空を飛ぶカラス。地面を歩く猫やネズミたち……。


そして――薄暗く世界をともす月。


「なんて綺麗な世界だ……」


……私は今、巨大な城の外部にいるようだった。

さっきの牢獄が地下一階だとすればここは……地上一階か。

そして、恐らくこの城の内部の、最上階――に王がいる筈だ。


「あそこに王がいるのか」


私は城の最上階へと歩を進めた。


◇◆◇◆


城外部から内部に侵入するため、正面門に来た。


「ここを通りたいのか?」


門番の兵士は問う。


「ああ、そうだ。この中の王なるものを探している」

「王? アレクサンダ―様に用か?」


名前のある王だと……ヤツは言っていたな。

アレクサンダーそれが王の名か。


「そうだ。ここを通してくれ」

「アレクサンダ―様に許可が降りていないものは通せない」

「そうか……《マインド・ジャック》」


私は兵士の精神を乗っ取った。


「……どうぞ、お入りください」

「ありがとう」


私は城の内部に入る。

さっき外で見た感じ、最上階までの階層は全部で七層といった所か。


「《エリアサ―チ》」


可視化かしかスキルを発動させ、城を見張っている兵士騎士が何人いるか探る。

今の私の視界には周りにいる全ての人物が可視化されている。

壁や、天井に隠れている人物も全て丸わかりだ。


……ふむ、全部で二百人といった所か。

こいつらと全てやり合うのもいいが、

面倒はできるだけ避けて王に直接会いに行きたいと思った私はひらめく。


「ふむ。私の力がどれくらいのものか試す時が来たようだ……《オ―ルスリ―プ》」


私は魔法を発動させる。

本来なら、近くにいる相手を眠らせる魔法だが……。

私の力ならここにいる二百人全員を眠らせる事も出来るかもしれない。


「なんだか、眠く、なって、きた……すぅ……」

「俺も、眠気が……ぐぅ……」


兵士騎士たちの音が静まるのが聞こえる。

可視化されている兵士達がバッタバッタと倒れていくのが見える。


ふふふ……流石私の力だ……。


まあ、効果時間は短いだろうが、七層まで登るには充分だ。

私は七層まで一気に上り詰める。


◇◆◇◆


鎌――デスサイズを構えながら最上階にたどり着く。

最上階は、豪華な部屋だった。

そこの玉座に居座るアレクサンダ―。


「見つけたぞ……アレクサンダ―王」


流石に王には睡眠魔法は効かなかったようだ。


王の頭上には確かに《アレクサンダ―》の文字が書かれていた。

名前がある人間には頭上に表示されるのだな。


「誰だね君は? どうやって此処ここまで?」


王は鎌を構えている私に気づき玉座ぎょくざから立ち……大剣を構える。


「成る程……“君も”私を殺し、名前を奪いに来たというわけか」


アレクサンダ―は言った。そして言いたいことを瞬時に理解する。


「“君も”? 成る程。王を殺し、名前を奪おうとくわだてるやからが居るということだな?」

「ん? 君は名前を奪いに来たというわけではないと言うのかね?」

「私にはフェ―ベと言う名前がある」


王は名前……? と言いながら、


「……? 確かに君には名前があるな」


名前がある私を不思議そうに眺めた。


「私はお前を殺しに来た」

「……ああ、そういう事か。君の正体がわかったよ。君は牢獄ろうごくに囚われていた少女だったね?」

「やはり、知っていたのか。 ……あの金髪の男を手配したのも貴様か?」


王はふむ。と少し考え、


「金髪の男? ああそうだとも」


そう言った。


「貴様――!」


それを聞いた私は激怒する。

アレクサンダーは大剣を私に向け、


「――王である私に勝てると思っているのか?」


そう言った……。

そして私達は互いに距離を取り、臨戦態勢りんせんたいせいに入った――。

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