#49 神にも悪魔にもなれる存在

「んぁ……」


わたしはゆらゆらと起きる。

いつ寝たのだろうか。

まだ、眠たく、まぶたがはっきりと開かない。


「おはよう、目が覚めたかい?」


その声にわたしはさっきまで感じていた眠気が一瞬で吹き飛び眼が完全に覚めた。

恐怖で一杯になる。そして昨日の事がフラッシュバックする。


「ひぃっ!」

「何に怯えているんだい。僕はお前に酷い事をしようとしている奴を殺したんだよ?」

「こ、こないでッ!」


わたしは、這いつくばったまま後ずさる。


「酷いなぁ……まだ、お仕置きが必要なようだね」


男は立ち上がり。魔法を詠唱えいしょうする。


「や、やめて……」

「《ヒ―トフレイム》」


体中に広がるもの凄い熱量。


「熱いぃいいいいぃイイッ!!」

「凄いだろう? 僕は元々光属性の魔法しか使えなかったんだけどね……」


男は笑顔だった。


「努力して、火属性の魔法も使えるようになったんだ」


なんでそんな笑顔でいられるの?

こんな酷いことをしているのに……


「あつぃぃいイ!」

「ハハッ。やり過ぎたね、ごめんごめん」

「《オ―バ―ヒ―ル》ホラ、これで元通りだ」


『――ラガホシイカ?』


「だれ?」


声が聞こえた気がした。


「何が『だれ?』なんだい」


男はわたしの顔面に蹴りを放つ。


「あがッ!」

「まあいいや、ああそうだ」

「これ、食べ物だよ。美味しく味わって食べろよ」

「えっ?」


これ。食べ物?

わたしにはうねうねと動く虫にしか見えない。


「えっ? ではなく、ちゃんと返事しろ」

「………はい」


男は相変わらず笑顔だ。


「……じゃあ、今日はこれくらいで帰るよ。明日また会おうね」


そのあとも何度も男は訪れ、何度もわたしにいたぶり続けた。


◇◆◇◆


それから何日が過ぎただろうか――私の中の夢見る乙女は別の何かに変貌していった。


今日も。あの男はここに来る。

私は、思っていた疑問を口にした。


「どうしてお前はこんなことをする?」


すると男は……。


「…………」

「なぜだ? なぜお前はここまでのことをする?」


気がついたら私の口調は変わっていった。


男は振り返り。


「……僕には“名前が無い”んだよ」

「名前?」

「その意味が分かるかい? 

「どういうことだ?」


名前が……ない? コイツは何を言っている……?


「僕は、意識が芽生えたときから名前が無かった」

「……お前には、名前がないのか?」

「……正確には名前が無かったことに気づいたのはつい最近の事だ」


私はあることを思ったので言った。


「それは――四ヶ月くらい前からか?」

「よく知ってるねぇ。もっと言うならば“僕らは”四ヶ月前をキッカケに心が芽生えたんだ」

「感情が……」

「でも、僕らには名前が無かった、それが当然だと思っていた」


当然……? 

男は説明を続けた。


「でもある日を境に、“王”を名乗る男が現れ、実質ソイツがこの世界の王になった」

「どうしてソイツは王になれた?」


男はとても羨ましそうに話を続けた。


「詳しくは知らない。だが、その王は財産も力も、名誉もあった。

 だから、王に逆らえる物など居なかった」


男は私を見ながら続きを言う。


「そして、その王を仕える者たちがその王に名前を付けたんだ。

 それはこの“世界”で初の出来事だったらしい」

「それで?」


私は、この金色の髪に瞳をした男が殆ど感情を持たずに次々と喋っていく様子に恐怖心を覚えた。


「僕は王に嫉妬した。なぜ僕には名前が無いのだってね」

「そして、どう思ったんだ?」

「だから、いつか僕は王を殺し、僕が新たな王になり名前を奪おうとしたんだ」


王を……殺して……名前を奪う……?


「そしてある日、僕は王の命令でこの牢獄に行くことになった」

「そこで私を見つけた……」

「そうだ。そして、この牢屋で君を見て衝撃を受けた」


「私には、“フェ―ベ”という名前があったということか」


男はわたしに近づき、剣をわたしの顔の前に突き出す。


「そうだ……ッ!  どうして王でもなんでもない只のッ! 

 犯罪者のお前にィ! 名前があるんだ……ッ!」


男は今まででは考えられない感情をみせ、わたしを剣で斬りつける。


「――――――—!!」


「なぜ……! お前には名前があるんだッ――!」


男はもう一撃、更にもう一撃を繰り出す……。


「――――――――――!!!!!」


私は、声にもならない声をだす。


「《ヒ―ル》」


そして、傷が治った――かと思ったら。


――ズシャ


次は刺される。


こんなヤツ。死ねばいい。


『チチ、チカラガ、ホシイカ――』


またこれか。私はあまりのショックに幻聴を聞いているのだろう。

でも、神にもすがる思いで聞き返すことにした。

力? コイツを殺せるのなら欲しいに決まっている。


「力……欲しい……」

「何ブツブツ言ってるんだ」


『イイ、ダロウ。ダガ、ジジョウウケンガ、アル』

「その条件を飲んだらコイツを殺せるか?」


私は謎の存在に問うた。


「僕を殺す? 笑わせるな」


男はわたしの腹を蹴る。


「がッ……」

『アア、ソ、ンンナ、男、クライ余裕ダ』


男は更に剣を振りかざそうとする――、


「なら、どんな条件でもいい。私に――フェ―ベに力をくれ……!」

『契約、セイイ、リツ、ダダナ』


「この男を殺すチカラを―――ッ!」


突如、わたしの目の前にいた男は衝撃波で吹き飛ぶ。


「ぐっ……。な、なに?!」


流石のあの男も突然の出来事に驚いたようだ。

更に私の目の前に大きな“かま”が出現する。


『ソノ、武器ノ、名ハ、“デスサイズ”ダ。サアア、スキニ、暴レルガ、イイ』

「デスサイズ……いい響きだ」


私は“デスサイズ”と呼ばれる鎌を構え、男に歩み寄る。


「……ま、まってくれ! そ、そうだ……! 僕はそこそこの権力がある!」


この男は今更、何を言うのだろう?


「君を自由にしてあげよう!! だから、殺さないでくれ……!」

「自由? もう私は自由だ」


すると男は眼を見開きながら……話を続けた。


「じゃあカネだ! カネもやろう……! 僕の財産の半分を君にやるッ! だから……!」

「死ね」


私は鎌で胴体を真っ二つにした。


「ふふっ。ふははははは!!」


男の無様ぶざまな姿を見た私は狂ったように笑った。


◇◆◇◆


フェ―ベ:レベル7→99


クラス:ア―チャー→魔王


HP:99999


MP:∞


属性:水→闇


得意武器:弓→鎌

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