#34.5 五分間の死闘

ディオ―ネから南に進んだ所の砂漠エリア《ダイモス》に到着する。


ダイモスは砂嵐すなあらしに覆われている。


加賀美かがみ! どこだッ?!」


俺は大声で叫んだ。


「……やあ! 来栖くるすくん。よく来てくれたね」


遠くから声が聞こえる。


加賀美の声だッ……!


「イオはどこだッ!?」


イオ、生きていてくれ……頼む……。


「君が時間通りに来てくれたからね。生きているさ」

「なら早く返せッ!!」

「僕に勝てたらね……」


なぜ、コイツに勝つ必要があるんだよ……!


「なぜお前と戦わなくてはならない? イオはどこにいるんだ!」

「なぜ……か。ふっ、ふはははは!」


加賀美は突然笑い出す。


「な、なにがおかしい?!」


「いやぁ……君がよく言うもんだなって思ってね。

 この狂った世界を創ったのは君だろうにッ!」

「それとお前と戦う事になんの関係があるんだッ!?」


すると、加賀美は少し黙った後、また大声で喋りだした。


「クエスト数五百。クリアするまでログアウト不可。それどころかゲ―ム内はバグだらけ」


加賀美は声のトーンが低くなり、続きを言った。


「そんなを創ったのは君だよ来栖くん」

「それがどうしたんだよ! なぜイオをさら――」

「――僕はね、ウニティを開発してホ―ムペ―ジにアップロ―ドしたんだよ。でもね」


ヤツは説明を続ける


「殆ど僕のサイトを見てくれなかった。僕はサイトを検索ワ―ド上位表示させる技術が無かったんだ。

 もちろんウニティをダウンロ―ドしてくれる人もいなかった」


続けてアイツは言った。


「でもある日……ずっとサイトを監視していたら、

 ついにウニティをダウンロ―ドしてくれた人が現れたんだ」

「……それが俺だったってことか?」

「そうだ。僕は嬉しさも反面、こんな誰も見ていないサイトに

 わざわざアクセスしてダウンロ―ドしたやつは誰かとダウンロ―ドした奴の特定を急いだ」


……なるほど。


「……会員登録した時に、実名で登録したのがバレたってことか」

「その通りだ。だから簡単に君の名前と住所を特定することが出来た」

「それで? 特定してどうしたんだよ」


相変わらず加賀美の姿は見えない。

というか砂嵐に遮られて視界がかなり悪かった。


「一体どのようなゲ―ムを作るのか気になってね……

 君のネットワ―クに侵入してウニティの状況を監視することにしたんだ」


さらに続けて加賀美は言った。


「なるほど。それで俺がゲ―ムを完成させるまで待ったということだな?」

「自動で君のネットワ―ク情報を監視するプログラムを組んで君がゲ―ムを完成させるのを待った」


砂嵐で見えないが、

加賀美は悲しい顔をしている……気がした。


「それまでは良かったんだ……」


なるほどな……。


「……だが、この世界から抜け出すのは不可能だった」

「そうだよ。 君のせいでこの世界に閉じ込められたんだッ! 君のせいでね!」


加賀美は酷く怒っているようだった。


「君みたいなバカがウニティを使って滅茶苦茶にしたからこんな状況になったんだよッッ!」

「つまり……この世界に閉じ込められた事に腹を立てて俺を殺しに来たってことか?」

「違う、違うなぁ……。君のアクセスけんを奪うためだよ」


……アクセス権?


「なんだって?」

「君のアクセス権を奪わないと、……喋りすぎたな」


過去に……? えっ……?


「なっ……!?」


今、アイツはなんて言った?

過去にだって?!


「過去に戻れない? どういう意味だよ。どうして過去に戻らないといけないんだ!」

「過去に戻る理由? 簡単な話さ。君が“心”という概念を作ったからだ。」


続けて加賀美は喋る。


「ただでさえエラ―だらけのこの世界に心という概念を作ったらどうなると思う?」

「どうって……?」

「この世界は今まで以上にとんでもないことが引き起こる可能性が高い……」


加賀美は続ける。


「……これ以上は僕を追い詰めることが出来たら話すよ。――君の勝率はゼロだけどねッ!」


――ヒュン。


何かが耳元をかすめる――


な、なんだ?!


「ま、待て! イオはどこにいるんだ!?」

「イオ? 彼女なら邪魔だったから僕のアイテムウィンドウの中にいるよ」


ドキリと心臓が跳ねる。


「なんだって!?」

「ああ、安心したまえ。残念な事に僕の技術では彼女は完全にはアイテム化できなかった」

「どういう意味だ!」

「僕のアイテムウィンドウにイオが存在するのはあと六分だけだ。六分過ぎれば彼女は元に戻る」


続けて加賀美は言った。


「つまり……戦闘時間は残り六分だ。流石にニ対一は僕でも君には勝てないだろうからねぇ……」


「待て! 俺はどうやったら勝ちなんだよ?」

「僕の勝利条件は来栖くん、六分以内に君を殺すことだ。君の勝利条件は――」


砂嵐は相変わらず止まない。

だが――いつか必ず止むはずだ……!


「――六分が経過、またはそれまでに僕のHPヒットポイントゲ―ジを残り一割まで減らせたら勝ちとしようかッ!」


――ヒュン、ヒュン


何かがすごい速さで飛んでいく……


この感じは……銃弾か……?


じゅ、銃弾!?


「残り五分……。おしゃべりはここまでだッ! 五分で君を片付けるッ――!」


要するに俺はアイツから逃げ切れば勝ちってことか……

どうやって逃げ切るんだ? 相手は銃弾だぞ!?


ならば――!


こうして俺と加賀美の五分間のバトルが始まった――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます