#28 管理用コンピューター

「えっと……《トリトン》に向かうには……」


さっき列車が進んでいた方向に向かえばいいわけだから……

とりあえず坂をを登って線路があった場所に戻るか。


俺とイオは線路沿いをてくてくと歩いていく。

しかし、脱線事故か……。

これからはいかなる時でも、

何らかのトラブルに巻き込まれる可能性を考え無くてはならないな。

この“欠陥世界”にはあらゆることに警戒しておかねばならない。


この世界に来てから、驚くことの連続だな……

ただ歩いていくのも暇だったから、俺はイオに話しかける。


「なあ、イオ」

「なんでしょう?」

「これからなんかやりたいことってあるか?」


イオは考える素振りを見せる。


「やりたいこと?」

「ああ、やりたいことだ。好きなこととかないのか?」

「イオが好きなことは、ハヤトさんと一緒にいることです!」

「――――ッ!」


俺はドキッとした。


「い、いや、それ以外でないのか?」

「それ以外?」

「どこかで遊びたいとか、美味しいものを食べたいとかさ」


「そうですねぇ……」


イオは考えているようだ。

しばらくすると、イオは答える。


「やっぱり、イオはハヤトさんと一緒にいられればそれでいいです!」

「そ、そうか……」


話が終わる。

俺達は線路沿いをひたすら歩いていく……


っていうか、ここはどの辺なんだ?

歩いてもう1時間くらい経った筈だが、一向に目的地が見えない。

空を見るともう真っ暗だ。

もしかして《トリトン》はまだまだ先なのか?


「ハヤトさん!」

「どうした?」

「イオ、疲れました……」


さっきからずっと歩きっぱなしだ。


「そうだな、どこか休憩できる所を探そう」


近くに町や村はないのか?

俺は辺りを見渡す。

すると、幾つものテントが張られているエリアがあった。


キャンプ地か?


「あそこに向かおう」


俺はキャンプ地を指差す。


「わかりました! あそこですね! メラメラ……」


俺達はキャンプ地に向かった。


俺とイオはキャンプ地に到着する。

キャンプ地のすぐ隣に馬小屋が見えた。

馬小屋……ということは馬を貸してくれたりしないだろうか?


俺はキャンプ地に目線を戻す。

NPCの一人や二人はいるものだと思ったが誰も居なかった。


辺りを見渡すと、幾つものテントが張ってあった。


俺はその中で適当なテントを選ぶ。


「ここで休憩するか」

「そうしましょう!」


俺とイオはテントの中に入った。

中は至ってシンプルで、あるのは寝床くらいだった。


「ふぁぁ……。イオ、眠たいです……」

「ああ、寝るか」


俺とイオは横になった。


「ッ!?」


目の前にイオの顔があった。


俺は意識しているのもあってやけに緊張する……。


「イ、イオ! もう少し離れてくれないか?!」

「イオはハヤトさんと近くにいたいです!」


「そ、そうか……」


俺とイオは寝ようとする。


いや、待てよ……


恋について聞いてみるか。


「なあイオ」


「なんでしょう?」

「“恋”って知っているか?」

「“コイ”ですか?知ってますよ!」

「本当かっ!」


「お魚さんのことです!いつも口をパクパクしています!」


「そっちか……」


「そっち? 他に“コイ”という言葉があるのですか?」

「恋というのはな、相手のことをとても好きになることを言うんだ」

「イオは、ハヤトさんのことがとっても大好きですよ!」

「――ッ!」


そう、イオは俺のことが好きだという。


……でもそれは――、


単純にプログロムされた“好き”であって、彼女には感情は存在しない。


彼女の言う“好き”とは本当の“好き”ではないのだ。


俺はこの世界に“恋愛”も含め、全ての“感情”設定をしていなかったのだから――


◆◇◆◇


俺は眠そうにしているイオを見ながら考える。

どうにかして彼女に感情を与えられないだろうか。


いや、それだけじゃない。


《“殺戮”のサイクロプス》に殺されたレア。


《マ―ズ》の酒場で“消された”リシテアとコ―デリア。


彼女たちを助ける方法なんてもう……。


もう……!?


《マ―ズ》の酒場で“消された”……?


“消された”? 何に!?


AIだ……ッ!


街の人やレアを襲った《殺戮のサイクロプス》だってAIに消されている……。


それだけじゃない……。


過去にニつのフィ―ルドが不具合を起こしたときにもAI


――AIがこの世界を管理しているのか!?

なら、その世界を管理している場所はないのか?


……いや、AIはゲ―ム内に直接存在しているのではなく、

ただのシステムの一部だからそんなものはないか。


そうだ、この世界を管理してるのはゲ―ムのシステムなんだから、

そのシステムを直接弄ることなどできるハズもなく……。


ちょく……せつ……?


直接いじる……!?


「……あっ!」


「どうかしたのですか? ハヤトさん?」


……。


今までトラブル続きですっかり忘れていたもの。


俺がこの“世界”にログインした直後の場所にぽつんと置いてあったのはなんだった?


この“世界”を自由に弄ることができるように設置した物――。


唯一、奇蹟きせきを起こせるであろう物。


神の力を持つ存在。


「――ッ……!」


あれなら“恋愛”や“感情”という概念がいねんも作ることができる……!なによりも――。


――彼女たちを救えるかもしれないッ……!


「ハヤトさん? どうかしたのですか……?」

「明日、あるところに向かうぞ」

「わかりましたぁ……すや……すや……」


そして、朝を迎える――。

俺は興奮を抑えられなかった為にぐっすりと眠ることができなかった。

俺とイオは、この世界にログインした直後の場所の最初の洞窟に向かった。

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