#21 一時的な平穏

俺達は船に乗りながら会話をする。


「しかし、あの《カルデネ島》というのはとても綺麗な島だったな」

「そうね―とても綺麗だったわ!」

「湖も輝いていて美しい島でしたわ!」


確かに、美しい島だったな……。


「また行きたいですね! メラメラ……!」

「ああ、また行こう!」


みんなでゆったりしていると、木造船が停止する。


「《エウロパ》に到着したぞ、さあ降りてくれ」


俺達は船から降りる。


気がついたら、景色はもう夜になっていた。


「戻ってきましたね! メラメラ……!」

「ああ。戻ってきたな……。とりあえず、戦士ギルドに向かって報酬を貰いに行くか」


俺達は戦士ギルドへ向かい中へ入る。


――ガチャ


相変わらず戦士たちは、特訓しているようだ。

俺はガタイのいい男に話しかける。


「これ、言われてたカエルの皮です」

「おっ! 君たちか! どれ……」


男はカエルの皮を数えている。


「よし! ちゃんと十枚あるな! これは報酬だ、ありがとな!」


俺は金を貰う。

男は力こぶを作りながらにっと白い歯を見せる。


「どうもです」


そして、俺達は戦士ギルドを出た。


「次はどこにいくんですの?」

「街を探索してみない?」

「さて……。今度はどこに向かおうかな?」


俺達は街をぶらぶらと歩く。

クエストを受けるのなら……やはり酒場か?

俺は酒場を探す。


すると、おしゃれな看板が見えた。

多分、あれが酒場だろう。


「あれかな?」


俺達は酒場らしき扉を開けた。


――ガチャ


中に入ると、椅子に座りテ―ブルに肘を付き、

顔を真っ赤にしながらガヤガヤと話している人たちがいた。


間違いない、ここは酒場だ。

ここならクエストの一つや二つくらいあるだろう。

とりあえず、受付の人に話しかけてみるか。


「すみません」

「ん? なんだい?」

「なにか困っていることはありませんか?」

「困ってることなら沢山ある」


そうクエスト受付の人は言った。


「例えばなんでしょう?」

「ふむ、そうだな……」


受付の人は俺たちに状況を説明する。


「まず、この街から《マ―ズ》ゆきの船に乗って北に向かう」

「ええ」

「そこから陸に降りて西に進むと《オリンポス山》っていう山があるんだが」


《オリンポス山》……どんな山だったか。


「そこの頂上に居る鳥型の巨大な魔物の駆除をお願いしたい」

「鳥型の巨大な魔物……ですか」

「山に向かった人たちがその魔物のせいで次々と殺されていくんだ」


《ネ―ムド》モンスタ―か……。


「困っている人たちがいるんですよね」

「ああ、だが無理に挑まなくてもいいぞ」


どのみちいずれは倒さなければいけない相手だ。


「わかりました、受けましょう」

「本当か! 助かるぞ」

「《マ―ズ》ゆきの船に乗ればいいんですね」

「ああ、船に乗って行けばいいぞ」


俺達は酒場を出た。


「さて、《マ―ズ》に向かう――前に。……もう夜だ、宿屋で休もう」

「そうね、もう寝ましょう」

「もう、眠たいですわ……」

「イオもです……」


俺達は宿屋へ向かった。


「いらっしゃいませ―!」

「すみません。ここに泊まりたいのですが」


俺は金を払う。


「四名様ですね。こちらへどうぞ」


俺達は案内され、部屋に入る。


中にはベッドがニつあった。


「おお―……ふかふかのベッドがありますよハヤトさん……」

「とても気持ちよく寝れそうね」

「みんなで寝るのですわ……」


よし、じゃあ俺は……。


「俺はあっちのベッドで寝るよ」

「三人はそっちのベッドを使って――」

「みんなで一緒に寝ましょう!」


リシテアがそんなことを言う。


「そうですわ、三人でハヤト様を囲って寝ましょう!」

「そっちのほうが楽しく寝れるに決まっています! メラメラ……!」


あ、あれ?

前にもこんなことがあったような気がする。デジャヴか?


「な、何言ってるんだよ、君たちは女の子なんだから――」


まあ、いいか。

彼女たちに囲まれたほうが俺が得するし……。


「み、みんなで寝ようか」

「それがいいです! メラメラ……」

「さっハヤトくんを囲って寝ましょ」

「ふぁぁ……みんなで寝るのですわ……」


みんなでベッドに入り、布団を被る。


真ん中に俺が、

左を向くとリシテアが、右にはコ―デリアが居る。

コ―デリアの隣にイオが寝ている。


「あぅ……」

「あぅ?」


リシテアが、謎の声をあげた俺に疑問符を付ける。


「な、なんでもない、さあ寝よう!」


……ん?


「すやぁ……」

「すぅ…すぅ……」

「メラメラ……」


気がついたら、みんな寝ていた。


……俺も寝よう。


◇◆◇◆


――チュン、チュン


外で小鳥たちが鳴いている。


ああ、もう朝か。


起きようとするが、力が入らない。

なんでだ?

俺は目を開ける。三人が俺に被さっていた。

女の子のすべすべな肌や、胸の感触などが俺に伝わってくる。


「………! みんな寝ぼけてるんじゃない! 起きろ!」

「ん―?」

「起きてくれないと色んな意味でヤバイから!」


いやもう、色んな意味でっ!


「ハヤト様ぁ……どうしましたの……」

「どうしましたの……じゃない! そこをっどいてっくれっ」

「あら?ごめんあそばせ」


と、コ―デリアが俺から離れる。


「二人も、早く起きてくれ!」

「んあ? ……すみませんハヤトさんっ」


二人も俺から離れる。

ようやく軽くなり、起き上がった。

助かった……。


ぐう……。


「腹減ったな」

「そうね―」

「私もお腹すきましたわ」


コーデリアはお腹を抑えている。


「イオもです」

「確か、この宿には食堂があったはずだな」


俺達は食堂へ向かい食事を取った。


食堂を出て、宿を出る。


「ん―! あの食堂の料理はどれも美味しかったわね!」

「どれも美味でしたわね。」

「美味しいものを食べると心が燃えてきますね!!」


「さあ、《オリンポス山》に向かうか》」


そして、俺達は船着き場に向かった。


船着き場の受付の人に話しかける。


「《マ―ズ》行きに乗りたいのですが」


俺は四人分の金を渡す。


「《マ―ズ》行きなら丁度今空いてるぞ、さあ乗ってくれ」


――ガタ、ゴト。


そして、木造船は動き出した……。


――これでいいんだ。平和なら何でもいいんだ。


もう二度と、彼女たちを失わない……!

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