#17 水の都《エウロパ》

水のエウロパはそんなに遠くはない。

道を歩いていくと、

『この先 《エウロパ》』と書かれた看板が見える。


「このまままっすぐだな」

「水の都というのはどんな場所なのですかっ?」


とレアは俺を見て言った。


「涼しげな場所だよ」

「涼しげな場所ですか―」


レアはいまいちよく分かっていないようだった。


「私は熱い場所で暮らしていたので涼しい場所というのは気になります! メラメラ……」


イオはいつもどおりで平然としている。


「そういえば私も行ったことないわね。どんな場所なのかしら?」

「私も知りませんわ。しかし……ぜぇ……徒歩は疲れるんですの……」


リシテアは新しい街が気になるようだった。

コーデリアは心底疲れているようだ。


「ハヤト様」


突然、コーデリアが俺を呼ぶ。


「なんだ?」

「私をおぶってくださいまし!」

「は?」

「ですから、私をおんぶしてくださらない? 私、疲れましたの……」


俺は困惑するも、女の子を背負うことに嬉しさも感じていた。


「あ、ああいいぞ」


俺はコ―デリアをおんぶする。


意外と軽かった。


そんなことよりも――。


――むにゅ!


彼女の胸や太ももが俺に密着みっちゃくするッ!


「おお―! これはとても素晴らしいですわ!」


――むに、むに


彼女が動くたびに俺の脳はほぐれる。

俺の意識は飛びそうになる。


「……はっ!」


……意識をしっかりさせる。


「ハヤト様っ! このまままっすぐ前進するのですわ!」


「こ、ここまま、ふふみまひょう」


コ―デリアの感触を堪能たんのうしながら、俺たちは歩いていく。

その先には、水路に面した船着き場があった。

奥には……小さな木造船がある。


「よいしょっと」


俺は、コ―デリアを降ろす。


「辺り一面、水路だらけですわ!」


地面から水面までは三メ―トルほどあり、

水路に沿って大きな木や、住居などが見える。


「あの小さな船を使って、《エウロパ》に向かうわけね!」

「なるほどぉ! あの小さな船に乗って向かうのですか!」

「ああ、そうだよ」


俺は船着き場の受付の人に言った。


「すみません、大人四人乗りたいのですが」


俺はそう言ってお金を渡す。


「どうも、さあ乗ってくれ」


みんなで木造船に乗る。


ゴト、ゴト……という音が静かに鳴った。


「全員乗ったか?」


木造船を運転する人は言う。


「大丈夫です」

「それじゃあ、出発するぞ」


そして船は出発する。


「ハヤトさんっ!」

「なんだ?」

「楽しみですね! イオわくわくします!」


俺は楽しみと言う言葉を聞いてレアのことを思い出した。


『楽しみですっ』


レアはよく楽しみだと言っていたな……。


「――ッ!」


俺は思わず息が詰まる。


「どうしたのですか?」

「いや、なんでもない。楽しみだな」

「私も楽しみだわ、水の都エウロパ……一体どんなところなのかしら」

「きっと水に囲まれた街なのですわ!」


俺達は、船に体をあずける。


――ゆら、ゆら。


小さな波で、船がゆっくりと揺れる。


……心地が良い。


なんとなく、俺は空を見上げた。

空には白鳥が飛んでいる。


「綺麗だな」

「とても綺麗ね!」

「素敵です! メラメラ……」

「美しいですわね!」


彼女たちは見たこと、感じたことの感想を述べる。


「あっ! ハヤトくん!」

「なんだ?」

「見えてきたわよ!」


と、リシテアは指差す。


広い水路に進み、視界がひらけ、そこには大きな建物が並んでいた。

水に囲まれた都市だった。

橋があり、橋の下には小さなふねが通っている。


「あれが、《エウロパ》……! 燃えてきました! メラメラ……!」


「すごいですの! 本当に水路が張り巡らされた都市ですのね!」


◇◆◇◆


しばらくして、木造船が停止する。


「ここが《エウロパ》か……」


俺達は船から降りる。


そのまま街を歩いていく。


さて、クエストを受けられそうな場所は……


「あそこの建物に行ってみよう」


目の前には剣と斧の絵が書かれた看板が掛けられた建物があった。

なんらかのギルド施設だろうか?

剣と斧の絵ということは戦士ギルドかな?


ここなら、いろんなクエストを受けられそうだ。


――ガチャ


俺達は建物の中に入った。


建物の中には――


「フンッ! フンッ!」

「ハッ……!」

「とりゃああああぁぁぁぁ!」

「せいやっ!」


物凄くガタイのいい男や女たちが、

大声を出しながら剣や斧などの近接武器で空を切っていた。

サンドバッグ相手に拳で殴っている人もいる。


疲れたのか一人の男がを武器をしまう。

すると、男は俺達の存在に気づいて俺達の方にやってくる。


「君たちは、戦士ギルド参加希望者か? フンッ!」


と、男は白い歯を出してニコッと笑い力こぶしを俺に見せつけてくる。


「いえ、違うんです」


男はがっくりとし。


「違うのかぁ……用はなんだい?」

「皆さんが困っていることは無いかと思ってここに来たんです」


「ふむ……。困ってることか……あるにはあるぞ」

「なんですか?」

「俺達ギルドメンバ―の装備が間に合っていないんだ」


「そこでここから少し遠いが大きな島があるんだが、

そこの湖にいるカエルの魔物が落とす皮が十枚欲しいんだ」


「カエルの魔物の皮を十枚……ですか」


雑魚モンスタ―の皮だろう。


「部外者の君たちに言うのは間違っているとは思うんだが……」


そういうクエストだな?


「もしよければ集めてくれないか?」


男はパンッと両手を合わせて頭を下げる。


「集めて来ますよ!」


と、男は目を輝かして言った。


「本当か! とても助かるぞぉ! フンッ……ッ!」

「任せてください」

「集めてくれたら勿論お礼をする。という訳で頼んだぞ!」


俺はその巨大な拳で肩を叩かれる。


「それから、これがその島の場所が乗っている地図だ」


と俺は地図を渡される。


「待っているからな!」

「ええ、待っていてください」


――ガチャ


俺達は戦士ギルドの外に出た。


「みんな聞いたか?今から島に向かうぞ」


ガタイのいい男から貰った地図を見る。


「地図を見るだけじゃよくわからないな……」

「みんなは知っているか?」


俺は地図の島が書いてある場所を指差す。


「いえ、知らないですわ」

「知らないです。メラメラ……」

「船着き場の受付の人に訊いたらいいんじゃないかしら?」


「そうだな、いてみよう」


そして船着き場に向かい、受付の人に話しかけた。


「ここの湖のある島ところまで連れて行ってくれませんか?」

「ん―?」


地図を覗く。


「ああ、ここは《カルデネ島》だな」

「そこにはどうやって行くのですか?」

「湖はここから北に歩いてすぐの場所だ」


「ありがとうございます」


俺は金を払い木造船に乗る。

彼女たちも後から乗った。


――ガタン。


「今から出発するぞ」

「ええ、お願いします」


そして俺達はカルデネ島に向かった。

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