第11話 挨拶は続くよ続く

「あらあらあらあら?ギルヴァレン?今あなたのお口から聞き捨てならない言葉が聞こえた気がするんだけど気のせいかしらぁ?」


 まさかお母さんのマジ切れをこんなところで初めて見ることになろうとは。いつも俺に対してもリーザさんに対してもニコニコとしていて怒る事なんて一切怒る事なんてなかったお母さんが、目に見えて分かるほど切れている。

 ぱっと見はいつも通りの笑顔なんだよ。でも俺には理解る。その額に浮かぶ怒りマーク……間違いなく激おこだ。俺の早すぎる結婚話に怒ってくれているのだろう。それは分かるんだけど……あの、リリアナ様。魔王様に馬乗りになって殴らなないであげて。王妃様なんですよね?


「馬鹿ぁ!2人で話し合ったでしょうが!子供の恋愛には余程のことがない限り口を出さないって決めたでしょう!?」

「す、すまん!魔が差した!だから止め、ちょ、痛っ!」


 あぁ恋愛結婚推奨なんですね……でも王族でそれは大丈夫なのだろうか。俺というかお母さん魔王様の国に所属しているって訳じゃ無さそうだからあまり関係なさそうだけど。

 とりあえず奥さんであるリリアナ様を宥めるのは自業自得として魔王様に任せるとしてお母さんは俺が抑えておこうか。多分このままじゃ大惨事になるし。


「お母さん」

「アリスちゃん?」

「俺、結婚するつもりないよ?」


 俺に合わせて屈んでくれたお母さんにそっと囁く。それだけでお母さんの怒りマークは元々なかったように消え失せお母さんはそれはもう嬉しそうに微笑んだ。

 いやぁ……ていうかそもそも俺の精神は男のままな訳でありまして。そんな状態で男と結婚だなんて、考えただけでゾッとする。前世でそっちの気があったわけでも無いしね。


「そうよねぇ!アリスちゃんはずっと私と一緒だものねぇ!」


 ずっと一緒も流石にどうかと思うのだけど今この状況で口にできる程俺は肝が据わってないので大人しく抱きしめられ撫でられることにしましょう。流石のお母さんも何年か経ったら放任主義になるでしょう。

 さて、魔王様の方は……あぁ収まったようだね。良かった、このまま魔王様殴られ続けられたんじゃあ他の参加者気まずいったらありゃしないもん。


 その後も俺の挨拶回り――皆自分から俺に挨拶に来ているから挨拶対応なのかな?――は続いた。下心満載な視線を向ける人もいたけどスルーされたのはお母さんたちの中ではセーフだったからなのかな?基準がよく分からん。そのおかげか、そういう視線にも幾分か慣れたけど。

 挨拶してくる人の中でも、同族のサキュバスさんたちの挨拶はそれはもう凄かった。順番が回るや否や、即跪き目に涙をためて神に祈るをささげるように手を合わせるんだもん。正直引いた。


「比喩ではございませんよ?サキュバスにとってサキュバスクイーンであるベリス様は神にも等しい存在。その御子であるアリス様も崇拝すべき存在なのです」

「俺の存在重くない?」


 声を掛けただけで号泣するんですもん。俺が泣かせたみたいで罪悪感が凄いんですもん。てか全員際どい格好してるんですもん。目線に困りますよ。そんでもって思った以上にサキュバスさんたち数多い!確かリーザさんサキュバスの娼館の店長以上が来ているって言ってたけど、そんなにあんの?え、あらゆる国に数多く存在している?サキュバスの娼館がある町は旅人が多く立ち寄る?マ?



 招待客多くありませんかね?ステージ上で見た人数以上の挨拶してると思うんだけど?サキュバス勢が多すぎたのでは?正直ダレてきたんですけど。何とか笑顔は保ってはいられるけど、いつまでもつか……そう思った時、リーザさんから神の啓示かと思えるくらい素晴らしい言葉が送られた。


「アリス様、次の方が最後です」

「よ、ようやく……?」

「本当にお疲れ様です。最後の方は――」

「私よ?初めまして、アリスちゃん」


 そう声を掛けてきたのは、さっきお母さんに詰め寄っていたもう1人、聖女クラリエルさんだった。

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サキュバス転生~誘惑してるように見えるかもしれませんけどしてないし俺は元男です~ @gin_17_

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