第4話 チート禁止!!
「お兄ちゃん、見てこれ。」
いきなり俺の部屋に入ってくる妹。
剣道着は一部が破け、ボロボロ汚れていたが怪我はないようだ。
「すごくない、これ。ダンジョン出るまで、出血やばかったのにダンジョン出た瞬間怪我が治ったんだよ。」
ものすごい興奮状態の妹。さぞかしアドレナリンが豊富に分泌されているだろう。
「この足の部分とか、ゴブリンの爪に引っ掻かれてさ。服が破けてさ、慌てて引き返そうにも道が分からなくて何度もモンスターとエンカウントするし。他にも潜ってる人がいて、その人魔法使いなんだけど、その人に助けてもらって入り口までなんとか帰ってきたんだけど、ダンジョン出るまで身体中が痛くてゆりちゃんに背負ってもらってたのにダンジョン出たら治ったんだよ。」
うん、なんかよくわからんが、すごいことがわかった。
「それでね、ポーション全部使っちゃった。」
それが本題らしい。
「それでね、今回ね。金貨3枚くらい儲かったんだけど、ダンジョン用の装備買ったら大銀貨3枚しか残らなかったんだよね。」
それで?
「そしてダンジョン産ポーション入れも欲しかったから、買ったんだけど。12本入るやつ。」
うんうん
「そのポーション入れひとつ大銀貨1枚したの。」
へー
「それね、実は3つ買ったんだ。」
そうなの。
「それでお兄ちゃんにポーション代渡そうとと思ってたんだけど、全部なくなっちゃって。」
ああ、これは...
「ごめん、ポーションのお礼、ポーションケースで許して。」
ですよねー、話の流れでわかってました。
「いいよ、別に。ポーションの元手はあってないようなものだし。」
「ほんと?実はこのポーションケース優秀で、この中に入っているポーションは衝撃で割れないらしいんだ。いまポーションって結構高いから持っている人少なくて売れてないらしいんだけど、私はお兄ちゃんがいるからポーション持っていけるでしょ?だから買っても損ないと思ったの。」
あー、俺ポーション生産スキル持ってることになってたな。
「それで、お願いがあるんだけど。ポーション生産したら私にそのポーションください。もらったポーションは勝手に売ったりせず、秘密も守るし、私とゆりちゃんだけで使うから。今度お礼するし、ポーション生産スキルのレベル上げ手伝うから。生産職のスキル持ちって足でまといになりやすいから、一緒に潜ってくれる人いないんだよ。それこそチーム専属にならないと効率よくレベル上げできないんだよ。ねぇいいでしょ?」
「あーもう、わかったから。ポーションあげればいいんだろ。そこにポーションケース置いて行け。」
俺は妹の勢いに押されておkしてしまった。
なんやかんやでシスコンだな俺は。
「ありがとーー。」と言いながらポーションケース3つを置いていく妹。妹は隣の部屋に消える。話声がわずかに聞こえるので、あのぽあぽあゆりちゃんが来ているのだろう。
ダンジョンで苦労するよりはいいか。いまゴールドコイン山ほどあるし。
俺はケースにポーションを積める。
12本か。
せっかくだし色々入れるか。
6本 低級ポーション 1GC
2本 中級ポーション 5GC
1本 高級ポーション 100GC
1本 全快ポーション 300GC
2本 異常状態回復ポーション 10GC
の構成にした。
合計426枚も金貨使ったけど、所持金が1G GCで桁外れだから全く減っている気がしない。
欠損部位回復ポーションは1000GCだったので流石に自重した。
ちなみに中級ポーションは緑色の液体で、高級ポーションは黄色、全快ポーションは赤色、異常回復ポーションは白色だった。容器はアンプルで黄緑のリング模様付き。低級ポーションと変わらなかった。
俺はこのポーションセットを3セット作る。
これぞチートスキル。
やっとチートらしいことができた。
秘密にすると言っていたし、バレたとしてもポーション自体は市場に流れているので問題ない。
そう思っていた時期もありました。と後悔するまで1時間。
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「見てみて、新しいダンジョン服。」
また突然部屋に入ってくる妹。
服装はファンタジーな軍服。厨二心が刺激される。男装感たっぷり。
「こっちもみて。」
無理矢理引っ張られて入ってきたのは軍服は軍服でも、スカートありの女性らしい軍服を着た妹に友達、ゆりちゃん。少しゴシック系が入っている。スカートはタイトではないので動きやすそうだ。
ゆりちゃん本人はとても恥ずかしいそうで顔が赤い。
「あのー、どうですか」と妹に隠れながら言う。
「かわいいと思うよ。」
俺はとりあえず褒める。
そこに暴走妹。
「でしょ。このぽあぽあプラス恥じらい感がいいよね。あと、このスカートだけど中に専用のズボン入れるから対策もバッチリ。防御力もこの服は高くて、今日戦ったゴブリンの爪くらいでは引っ掻き傷さえつかないレベルでね。ダンジョン産だけあって、ダンジョン素材で追加強化できるらしいんだよ。」
スカートの中身の話をしたところで顔が真っ赤になって座り込むゆりちゃん。
妹よ。できればやめてあげてくれ。
「服装はわかったから、それで何の用だ?」
俺はとりあえず話題を変える。
「あのね、流石になにも渡さないでポーション貰うのは気が引けると言う話になってね。それでお礼どうしようと言う話になったの。」
妹の話を割り込みゆりちゃんが話始める。
「それでですね、さくらさんがお兄ちゃんへのお礼は私の服を一番に見せるのがいいと言いまして。流石に恥ずかしいので、やめようと言ったのですが、無理矢理引っ張られて。」
ああ、いつもの感じですね。妹が乱暴ですいません。
「お兄ちゃん、可愛いゆりちゃん見れてよかったね。」
「おう。」
思わず返事した。
「そこはもっと誤魔化す返事しないと。ゆりちゃん縮んじゃうよ。」
ゆりちゃんは顔を真っ赤にした。
「ゆりちゃんもそうだけど、その格好で外に出るんだろ?大丈夫なのか。」
俺は妹に恥ずかしがるゆりちゃんを目で指しながら聞く。
「そこは対策済み。ほら商店街にロングコートみたいな羽織ものをつけている人多かったでしょ。あれはダンジョン産の服が目立つからつけているやつで、それと同じやつを買ってきた。」
そう言って持ってきたのは黒色のインバネスコートとかトンビコートと呼ばれるものだった。
確かにそれを着ると、コスプレ感は無くなった。
「これ、とっても薄いから破れやすいんだけど。ダンジョン服着てもあまり目立たないから、ダンジョンに潜る人にとっては必須らしいよ。」
妹はベージュ色のトンビコートをゆりちゃんにかぶせる。少し落ち着いたみたいだ。
「と言うわけで、私たちの専属になったポーション職人さん。私たちにポーションをください。」
そう言って俺の机の上に置いていたポーションケースを開けると妹はフリーズした。
「あの、さくらちゃん?」
明らかに不自然な時間動かない妹を心配して話しかけるゆりちゃん。
「えーっと。お兄ちゃん、これお兄ちゃんが作ったポーションだよね。」
思考停止から回復した妹
「そうだけど、どしたん?」
ちょっとそに反応に嬉しくなる俺。
妹はポーションケースから一本ずつ取り出して確認する。
最初の6本の青い低級ポーションを見ているときはまだ良かった。
黄緑色の2本の中級ポーションを取り出すと手が震え、それを見ていたゆりちゃんも固まる。
黄色の高級ポーションを見て妹は「ちょっと休憩、ゆりちゃん交代」と言う。
ゆりちゃんは固唾を飲み、赤色の全快ポーションを持ち上げる。ポーションの色を確認したゆりちゃんは慎重にケースに入れた。
そして2本の白い異常状況回復ポーションを持ち上げる。少しホッとした2人。
「あの、お兄ちゃん。このポーションの価値知ってる?」
「まあ、だいたい?」
妹は大きなため息を吐く。
「一応市場価格を言うとね。低級ポーションは買取で1万円くらい。中級ポーションは買取価格10万円。高級ポーションは300万円。全快ポーションに至っては1000万円。異常状況回復ポーションは価格が落ちてるけど、それでも10万円よ。」
なんか思ってたよりもチートすぎる。
「ポーションはダンジョン外でも使えるアイテムだから、高級ポーションと全快ポーションはダンジョンから出ると国が買い取ってくれるレベルの貴重品なんだよ。ちなみに全快ポーションは大阪ダンジョンで3本しか見つかってない貴重品で、このポーション目当てで集まって来る人も多くて、高級ポーションはハイリスクな手術を可能にし、全快ポーションは抗がん作用があると言うことで世界中の国が必死に集めているポーションよ。価値わかった?」
「十分に理解しました。」
ちょっと手が震えて始めた。
「この前まで中級ポーションも買取100万円だったんだけど、ポーション生成スキルのレベル上げに成功した人がいて、その人が中級ポーションを市場に流し始めたから、中級ポーションが安くなったのよ。だからそのうち高級ポーションや全快ポーションを生成できる人が出てくるかもしれない。それまではお兄ちゃんが唯一の高級ポーションと全快ポーションを作れる人よ。お兄ちゃん、絶対お兄ちゃんが持ってるスキルを人に言ったらダメ。」
「はいぃぃ」
妹の真剣さと迫力に思わず返事する。
「ゆりちゃんも、絶対言ったらダメよ。」
「はいっ。」
ゆりちゃんも妹の迫力にしっかり返事する。
「ところでお兄ちゃん、紫色の欠損部位回復ポーションは流石に作れないよね。」
「無理。」
本当は作れるけど、これ以上のチートはやばい。
妹は少し胸を撫で下ろす。撫でる胸も無さそうだが。
「このポーション1日何本作れるの?」
「今日は無理。なんかポイントが溜まってたから、一気に作っただけ。低級ポーションなら毎日作れるし、ポイントを貯めたら中級も作れるけど、高級ポーションと全快ポーションはユニークポイントというのを溜めないと作れない。ユニークポイントはどうやって貯めるかもわからないし、全部使い切ったからいつ作れるようになるかも不明。」
口から出まかせが出てくる。
なんだよユニークポイントって。初めて聞くよ。
「スキルによってはポイント制になってるって知ってたけど、ユニークポイントって初めて聞くわ。」
そりゃ、いま出来ましたし?
「そうですね。私のスキルもポイントを使いますのでポイントと言う概念は理解できますが、ユニークポイントというのは初耳です。」
ゆりちゃんのスキルはポイント制なんですね。
「きっと、そのユニークポイント制でスキルのバランスをとってるのね。流石にポンポン高級ポーションとか作られると市場が大混乱よ。」
笑いながらいう妹。
今から実はポンポン作れることを言うと凄い反応しそうだ。
「ところで、ポーションケース3つ置いておいたけど、その中身はどうなってるの?」
そう言いながら2つのポーションケースを開けようとする妹。
「いや、ただの低級ポーションしか入ってないよ。」
そう言ってポーションケース2つを取り上げる俺。
「ただの低級ポーションって。低級ポーションでも12本もあればすごいんだよ。見せてよ。」
素早い動きで俺からポーションケースを取ろうとする妹。
それを必死で隠そうととする俺。
それをしばらく見ていたゆりちゃんは、府大会優勝者らしい素早い行動で、俺から2つのポーションケースを奪い取る。
「いいよ、ゆりー。」
喜ぶ妹。諦める俺。
「さーて、オープンザプライス。」
訳のわからない掛け声と共にあけられるポーションケース。固まる2人
こうなるから見せたくなかったのに。
そう心の中で言いながら、ため息を吐いた。
「お兄ちゃん、チート禁止!!」
お、おう
「あと、ポーション販売禁止。」
はい。
「このポーション、もらっていくよ。」
持っていくんかい。
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家族全員4人揃う夕食。
いつも通りの夕食。
変わったのはテレビで芸人がたまに自分のスキルを使ってることだけ。
変わったことも慣れれば日常だ。
「あのね、お父さんにはもう説明したことなんだけど。」
のんびりとした口調の母。重大発表なんだろうが全然重大感はない。
「ここ最近、ずっと帰りが遅かったのだけど。実は母さん、とっても希少なスキルを持っててね、ゴールドコイン銀行って言うスキルなんだけど。」
そう言いながら、スキル認定証カードを出す。
なんか聞いたことあるぞ。
妹は「なにそれー」と明るく言う。
「世界に7つある浮島あるでしょ。そこの通貨はダンジョン通貨で、その島ではゴールドコイン銀行カードというのを作れるんだけど、そのカードを使うための機械はその島にしかないの。」
うんうん、浮遊都市にもあるけどな。
「そのカードはね。その島に行かないと使えないのだけれど、母さんのスキルはそのカードからダンジョン通貨を引き出すことができるの。もちろん預けることも、そのカード自体を作ることも。」
まさにATM
「そのゴールドコイン銀行カードなんだけど、これが現状もっとも安全性が高いもので、私が操作するけど、本人の承諾がないと何もできない優れものなの。そしてこのダンジョンでしか買えないものも多く、スキルでダンジョン通貨を使う人は自分のカードと連動もできる。
今までスキルでダンジョン通貨を使うときはダンジョン通貨の現物でないと取引できなかったのに、そのカードがあればそのカード残高から引くこともできる。」
そのカード、チートアイテムだな。(棒)
「それで結局どうしたの?」
妹は結論が早く欲しいらしい。
「それでね、母さんパート辞めてUFO銀行に勤めることになったの。」
要するに転職の報告らしい。
「早速明日から出勤になったのだけど、私ダンジョンに潜ることになったの。夕方まではダンジョンでそれ以降はゴールドコイン銀行のカードを作ることになったわ。」
はーい、話が飛躍して何言ってるか意味プー
ため息を吐く父。
クエスチョンマークが頭に浮かんでるような顔の母と妹。
「えーとだな。母さんのスキルはレベル制で、レベルが上がるとそのレベルに応じた台数のATM端末を好きなところに設置することができるらしい。銀行としてはそのATMを設置できるスキルを持つ母さんを雇って、レベルを上げさせ、重要な支店にATMを設置して欲しいらしい。カードはATMで作れないから母さんが一人ひとり作って行くことになっている。もちろん高レベルになるとカード作成する機械も作れるかもしれないが。
このゴールドコイン銀行スキルは日本では12人しかいないらしく、母さんが13人目らしい。もっとも、ゴールドコイン銀行ATMスキルというのもあって、そっちは日本に200人くらいいるそうだ。」
父が最も重要な部分を補足説明する。
母はイマイチ自分のスキルを分かっていないらしい。父の方が詳しそうだ。
「そう言うことで、明日からしばらく帰りが遅くなります。夕食はすいませんけど、しばらく3人で作ってくださいね。」
「ところでお父さんのスキルはなに?」
ナイス妹。俺もちょっと聞きたい。
「お父さんは・・・。」
少し言いにくそう。
「お父さんは、鍛治スキルだ。ダンジョン武器や防具を作ることができる。ダンジョン素材はいるが。」
「え、本当?」
妹は嬉しそうだ。
俺は興味がなくなったので「ご馳走さま」と言い二階の自分の部屋に戻った。
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