再会
俺達は第三障壁を抜け異界の門近くまで来たが、既に門の周りには大量の怪物が出てきていた。
「あの鳥野郎、面倒だから逃げたんじゃねえか?いつの間にかあいつの兵隊も消えてるしな」
オルトスが怪物を倒しながら愚痴ってくると、グラドラスも頷く。
「ありえるね。だが、かなりの数を減らしてくれたんだ。感謝する気はないが良くやったと少しだけ褒めてやっても良いだろう」
「まあ、そうだな。それでどうするよ。この数は?」
「全開に開いている門の位置を前の様に戻すしかないだろう。キリク、門を前の位置に戻す担当と、中に入って問題を解決する担当の二手に分けるかい?」
「そうだな。それじゃあ……」
俺がメンバーを分けようとした時、後ろから禍々しい気配がやってきたので振り向くと、四本腕の騎士がこっちに歩いてきて声をかけてきた。
「我が名はタナクス。遂に会えたな、終わらせる者よ」
「死霊術師の長か……」
「ふん、勝手に崇められているだけだ。正直、迷惑している」
「なら、死霊術を教えるのはやめて欲しいものだな」
「ふむ、検討しよう。それで、異界の門に入れそうか?」
「怪物の数が多くて困っているところだ」
「では、我らアンデッド軍団が道を切り開こう」
タナクスはそう言うと、後ろに控えていた死霊系の魔物を引き連れて怪物の大軍に突っ込んでいった。
それを見たグラドラスがニヤニヤしながら俺に言ってくる。
「タナクスは魔物と言われるのが嫌みたいだから、アンデットと呼んであげると良いよ」
「やれやれ、不死の住人ってのはどこまで面倒臭いんだ……」
俺は呆れながら、タナクスが切り開いていく道を進んでいく。
すると後ろからブレドの声が聞こえてきた。
「さあ、行くぞ仮面騎士軍団!私に続け!」
俺はうんざりしながら振り向くと、白銀の騎士の格好をしたブレドが駆け寄って俺を見て驚く。
「なっ、キリク⁉︎いや、アレスなのか?」
「キリクでいい。いい加減、仮面を取ったらどおなんだお前は……」
「いやあ、黙って来てしまったからバレると……。それより、上手くいったのだな」
「ああ、おかげさまでな……」
「なら、お前は一言言わなければならない人物がいるぞ」
ブレドがそう言うとある人物が俺に駆け寄って胸に飛び込んできた。
「キール兄様!」
「アリシア……」
俺が名前を呼ぶとアリシアは目を見開き俺を見つめた後、涙を流す。
「生きてた……。良かった、良かったよぉ……」
「黙っていて悪かったな」
俺がアリシアの頭を撫でながらそう言うと、アリシアは頭を振る。
「……何も知らなかった私も悪い。知ろうとしなかった。怖かったの……」
「俺も同じ様なものだ……。勝手に会う資格はないと思いこんでた……。すまなかったな」
「ううん、良いの。キール兄様が生きていてくれた。私はそれで十分よ。
「そうか……」
「ライラ姉様も喜ぶわよ」
「なら、早く終わらせないとな」
俺はそう言って異界の門を見るとどうやら、俺とアリシアが話しをしているうちに片付けたらしく、オルトスとブレドが門を閉じれる部分まで閉じているところだった。
「ずいぶんと早く片付けたな……」
俺が驚いているとサリエラが声をかけてきた。
「タナクスと、クトゥンが作った武器が強くて思ったよりも簡単に倒せたんです」
そう言ってサリエラは花束から刃が出ている様な小剣を見せてくる。
「中々独創的な武器だな……。だが、これで怪物に関しては対処できたということか」
「はい、後は中に入ってカーミラ達を止めるだけですよ」
「わかった。じゃあ、アリシア、ちょっと行って終わらせてくる」
「はい、ご武運を……」
俺は頷くとアリシアの頭を撫でると異界の門へと歩いていく。
すると門の近くにいた白髪の老人が俺に声をかけてきた。
「来たか、終わらせる者よ」
「誰だ?」
「わしは聖霊神イシュタリア様より遣わされた者だ」
「聖人か……」
俺がそう言うと聖人は頷き異界の門を見て言ってくる。
「気をつけろ。この門の先は神々さえも知らぬ場所だからな」
「わかってるよ」
「ふむ、ではわしからお主にこれを」
聖人はそう言って白い石を俺に渡してきたのだが、これが俺は何かわかってしまった。
「賢者の石か」
「そうだ、何かあった時にこれを触媒にするといい」
「……わかった」
俺は頷くと異界の門の前に立つ。
中には既に火竜の伊吹、白鷲の翼、蒼狼の耳、元俺のパーティーメンバーが入っており、残りは外に出ている怪物の対応にあたっていた。
後は俺達だけだな。
俺はそう思いサリエラと一緒に中に入ろうとしたら、マルー達が声をかけてきた。
「キリク、ぼく達の実力じゃこれ以上は危険だから待ってる。だから気をつけてね!」
「ああ」
俺はマルーに頷くとシャルルとマリィにルナが緊張した様子で俺に近づいてきた。
「ま、まさかキリクがアレス様だったとは……」
「ナディアさんが知ったらやばいよね……」
「私は既にやばいですよ……」
三人はそう言って挙動不審になる為、俺は軽く手を振る。
「俺はもうキリクだからキリクとして扱ってくれ。とりあえず、こっち側の事は任せるから頼んだぞ」
「わ、わかったわ。キリクの大事なマルーは私がしっかり守るからね」
「戻ってきたら冒険者キリク御用達グッズを作りましょうね!」
「キリクさんが無事に戻って来れるよう、お祈りしときます」
三人はそれぞれ言ってきたので俺は苦笑しながら頷くと、改めて門の中に入っていく。
中はトンネルの様になっており、向こう側からは次々と怪物がこちらに向かって来ていた。
ここまでは記憶がある。
そしてお前の記憶もな……。
だから、待っていろよ。
俺はそう思いながら、あいつが向かっていった先を見つめのだった。
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