消えた加護
あれから、俺達は広間に移りある事を話しあっていた。
それは俺の加護についてである。
「勇者の加護も他の加護も消えているってことはまだ、呪いがあるんじゃないかしら?」
ミナスティリアは俺を見つめてそう言ってくると、アンクルが首を横に振った。
「いえ、完全に今のキリクの身体には闇の力はないわ。でも、どうしてかしら?加護の力は感じるのよね」
「興味深いね。キリクは何か感じるかい?」
「うーん、それが勇者の加護は感じないが、勇者時代の力……いや、それ以上の何かを感じるな」
俺はそう言いながら、右手に魔力を高めると凄まじい魔力が集まるのがわかった。
それを見たグラドラスは目を細める。
「これは前の君以上はあるじゃないか……。どういう事だ?」
グラドラスが狂気じみた目で俺の手を見てきたので、慌てて引っ込めるとファルネリアが顎に手を当てながら言ってきた。
「もしかしたら、加護が完全にキリク自身のものになったのかも……」
「色々な事があって魂と加護が混ざりあった?」
ファルネリアの言葉を引き継ぐ様にリリアナがそう言うと、アンクルが納得した表情になる。
「ありえるわね……。加護と魂の質はそれ程変わらないのよ。だから、融合して今まで以上の力を使える様になったのかも……」
「ただし、加護が持つ固有の力は消えたという感じか……」
俺はそう言って、試しにミナスティリアの持っているレバンテインに軽く手をかざしてみたが、全く反応しなかった。
「どうやら、勇者としての資格は失ったらしいな」
「その代わりあなたには良い装備品を持ってきたのよ」
アンクルはそう言って指を鳴らすと、細かい装飾が施された白い木製の扉が現れる。
そしてその扉を開けるとクトゥンが入ってきた。
「おお、やっと呼んでくれたようだな」
クトゥンは入ってくるなり、目を細めて何度も頷く。
既に皆んなは説明を受けていたのか、驚いた様子はなく静かにしていると、アンクルがクトゥンに声をかけた。
「頼んだものはできているかしら?」
「もちろんだ。それと張り切りすぎて色々と造ったんだが、全て自信作になってしまってね。丁度、沢山の客人もいるしここはワシの造ったものを皆んなにプレゼント……」
クトゥンが上機嫌で話ている最中、アンクルが呆れた口調で釘を指す。
「……クトゥン、頼んだもの以外はいらないわよ」
「えっ、沢山の装備品作ってしまったんだがな……」
クトゥンはそう言ってさりげなく、いくつかの装備品を取りだすと、皆んなの目はその装備品に釘付けになってしまう。
すると、それを見たアンクルは溜め息を吐いた。
「わかったわ。出してみて」
アンクルがそう言うとクトゥンは嬉しそうに次々と武器や防具を出し始めたので、皆んなは我先と見始めてしまう。
そんな中、アンクルは俺の方に、キリクとして使っていた時のと似ている装備品一式を持ってきた。
「まずは軽装の鎧ね。素材はクトゥンの領域にいる大きな魚の骨と鱗と皮で造ったみたい。全て前のより強度はあるわよ」
アンクルはそう言って軽装の鎧を渡してきたので、早速付けてみると前よりも軽くて動きやすかった。
「良いな。これには魔法防御も付いてるのか」
「ええ、私が簡易結界を張れる様にしておいたの。魔力を込めると結界が展開するわよ」
アンクルはそう言った後、一振りの剣を持ってくる。
「あの剣を更に弄ったの。もう、宝具みたいなものよ」
「じゃあ、宝具解放も使えるのか?」
「相手の力を吸収して封印結界を作り出すの」
「なるほど、これでアステリアを封印するということか……」
俺がそう呟くとアンクルは更に古びた槍を俺に渡してきた。
「これは念の為だけど……神殺しの槍よ。最悪な事態を考えて用意したの」
「だが、魔王の記憶からするとアステリアという神が死ぬと全てが終わるんじゃないか?」
「その時は仕方ないわ……。それくらいあの中は何が起きているかわからないもの」
「……神々さえも知らない場所か。まあ、とにかく行ってみるしかないな」
俺はそう言って皆んなを見るとどうやらクトゥンの用意した装備品を選び終えたらしく、手に取って眺めていた。
そんな彼らの姿を見ているとアンクルが言ってくる。
「無事に帰ってきてね」
「ああ、では行ってくる」
俺はそう言うと皆んなの方に歩いて行き声をかける。
「皆んな行けるか?」
俺の問いかけに全員頷く。
するとアンクルが真っ黒い空間を出したので、俺はその空間に飛び込むのだった。
◇
真っ黒い空間から出ると、そこは第二障壁を抜けた先だった。
「魔王の記憶があるから、何が起きてるのかわかりやすいな……」
俺はそう思いながら、周りにいる怪物達を見る。
罪人か……。
それも全てあの門の先に答えがある。
だが、少し数を減らすか。
俺はそう思い怪物達を次々と斬り裂いていく。
すると、目の前にネルガンが現れて俺に挨拶をしてきた。
「これはこれはアレスじゃないか。復活したんだね」
「今はキリクだ。それで、ずいぶんと手こずってるじゃないか」
「数の暴力だよ……。倒しても倒しても出てくるからね。おそらくここでやられたアレは、また門の向こうに戻って、またこちらに出てくるんだろうね」
「不死の領域と同じ感じか……。やはり、向こうに行ってどうにかするしかないな」
俺はそう判断してネルガンを見ると手をすくめながら言ってきた。
「向こうにある門まで自爆技で道を切り開いてあげるよ」
「良いのか?」
「魔王のダンジョンで助けてもらったしね」
ネルガンはそう言うと、巨大な鳥に変化して空を舞いあがるときりもみしながら、第三障壁まで突っ込んでいき光り輝いて自爆した。
おかげで第三障壁辺りにいた怪物は一掃でき道ができる。
それを見た俺達は第三障壁に向かって走り出すのだった。
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