辿り着く連合軍

 ベレゼブはすぐに無詠唱魔法で炎の球を飛ばしてきたので、私は魔法を唱える。


「第六神層領域より我に風の力を与えたまえ……エアーシールド!」


 私が作り出した風の盾に、炎の球が当たると爆風で風の盾は吹き飛んだが、炎の球も消す事ができた。

 それを見て私とベレゼブの魔力は互角だと判断し、私はエリザに声をかける。


「あれの魔法は私が全て対応するから、あなた達は攻撃して!」


「わかりました。隊列一式二型始め!」


 エリザの号令に魔導兵団は魔法とボウガン型の魔導具を使用しベレゼブに攻撃を始める。

 その間、私はベレゼブが合間をぬって撃ってくる魔法攻撃を防いでいく。

 

 手数はこっちの方が上よ。


 私はそう思いながら、ベレゼブの魔法を防いでいくと、何十発と攻撃が当たったベレゼブはダメージが溜まってきたの次第に失速していき、遂に力尽き地面に落下して動かなくなった。

 それを見て私はほっとして座り込んでしまうと、すぐにエリザが声をかけてきた。


「まだです。次がきますよ!」


「……嘘でしょ?」


 私はそう呟きながら、なんとか立ち上がると、穴の中からゆっくりとローブを来た大柄の人物が現れた。

 しかし、それが人出ない事がすぐにわかってしまう。

 何故なら顔が虫になっていたからだ。

 すると、それを見たエリザは顔を顰めながら呟いた。


「ヨトス……」


「エリザ、ヨトスって何?」


「東側から送られてきた情報によりますと、あれはヨトスという名前の太古の神で、虫や虫系の魔物を召喚する力があるそうです」


 エリザはそう説明する為、私は、ヨトスを思わず見つめてしまう。

 なんせ、神なんて初めて見たからだ。

 だが、どう見ても目の前の存在は神には見えなかった。


「……本当に神なの?」

 

「あの姿はあくまでこの世界に顕現する為の借り物だと思った方がいいですよ」


「な、なるほど。それなら納得ね。それでどうするの?ヨトスを倒せそう?」


「この人数の魔導兵団では無理でしょうね。他の魔導兵団が来るまで時間稼ぎするしか……。でも、こっちに誰も来ないということは他の部隊も交戦中と考えた方が良いでしょうね」


「そんな、じゃあ、あなた達はどうするつもり?」


「別に私達はヨトスを倒す必要はありません。あれと鉄鋼騎士団が戦っている間、足止めできればいいのです」


 エリザはそう言って結界を叩きつけている黒いフルプレートの人物を睨む。

 そのエリザの雰囲気を見てあれが凄くまずい存在だと私は理解した。


「わかったわ。私も微力ながら手伝う」


 そう言って私は身構えると、穴から出てきたヨトスは私の方を見て顔に付いている触覚を動かしながら何かを言ってきた。


『ギギギギギッ、マサカ、ベレゼブヲヤルトハ。ナラ、面白イモノヲ出シテヤロウ』


 ヨトスは何かを喋っている様だったが、足元の影が伸び、そこから子供ぐらいの大きさはある蛾の魔物、ポイズンモスを大量に出してきたのだ。

 それを見た私は急いで魔法を唱えた。


「第五神層領域より我に光りの力を与えたまえ……アンチポイズン!」


 毒を中和する魔法を私と魔導兵団にかけると、私は更に攻撃魔法を唱えようとしたのだが、突然、身体が重くなり地面に這いつくばる様な格好になってしまう。


「何これは⁉︎」


「大量のポイズンモスに紛れて、グラビティモスがいたみたいです……」


 私の問いに同じ様な状態になっているエリザが答えると、ヨトスがまた何かを言いだした。


『ギギギギギッ、成功シタヨウダ。サテ、我ハ別ニ殺スナトハ言ワレテイナイカラ、ヤッテシマウカ』


 ヨトスは何かを言い終わるとまた、影から蟷螂の魔物、ドレッドマンティスを出し私達の方を指差してきた。


「あれなら何をしようとしてるかわかるわよ」


「あいつらを殺せですよね」


「もう、言わないでよね。でも、本当にまずいわ。身体が重くて動かない」


「私達もです。せめて、どれが魔法を使っているのかわかれば……」


 私はエリザに言われて周りを飛び回るポイズンモスの群れを見る。

 しかし、どこにグラビティモスがいるのかわからなかった。


 まずいわ……。

 このままだとドレッドマンティスにやられてしまう。

 キール兄様がもしかしているかもしれないのに会わずに死ぬなんて嫌だ。


 私は涙目になりながらそう考えていると、突然、後ろから魔法の矢が大量に飛んできてポイズンモスを撃ち落としたのだ。

 その為、私は魔導兵団の別部隊が来たと思いほっとして、振り向くと、そこには魔導兵団じゃなく全然知らない人達がいたのだ。

 更に私達の前に知らない四人組が立つ。

 おかげで私は混乱してしまったが、徐々に自分は守られている事に気づき落ち着きを取り戻す。


 誰だかわからないけど、感謝しかないわね。

 でも、見ない格好ね。


 私はその四人の人物をよく見る。

 一人目はローブを着た温厚そうな人族の男、二人目は両手斧を持った女ドワーフ、三人目は狐耳族の女獣人、そして四人目は輝く鎧を着た女ハイエルフだった。

 その中の女ドワーフが振り向き私達に声をかけてきた。


「あたいらは外周から加勢に来た連合軍だよ。ちなみにあたいの名前はブリジット、そしてハイエルフの子はミナスティリア、この獣人の子がファルネリア、で、あれがサジだよ。よろしくね!」


 ブリジットはそう言ってニヤッと笑ってきたので、私も慌てて挨拶する。


「わ、私はアリシアと言います。連合軍の皆様、助けて頂きありがとうございます」


「気にしない気にしない!後はあたいらでやるからゆっくり休んでな!」


「あ、はい。ありがとうございます」


 私がそう言って頭を下げると後ろから、額から角が生えた子が私達に回復魔法をかけてくれた。

 おかげで後ろに沢山の連合軍がいる事に気づき、私は思わず嬉しくなってしまう。

 そんな中、女ハイエルフが大剣を構えると、一瞬でドレッドマンティスの間合いに入り腕を一本斬り落としてしまったのだ。

 それを見た魔導兵団に響めきが起きる。

 もちろん私も驚いてしまう。

 すると、ブリジットが私達の方向いてまたニヤッと笑った。


「どうだい、うちのミナスティリアの力は?」


「凄いですね……。鉄鋼騎士団より強いのでは……」


 エリザがそう言う為、私が驚いているとブリジットが満足した表情で頷く。


「そりゃ、そうよ。なんせ、あの子は外周で一番強いんだからね」


「えっ、そうなんですか?いったい何者ですか?」


 ブリジットの言葉に思わず私は質問すると、ブリジットは待ってましたとばかりに口を開いた。


「あの子はね、最強の冒険者パーティー、白鷲の翼に所属する勇者ミナスティリアだよ」


 ブリジットはそう言うと満面の笑みを浮かべたのだった。


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