到着する連合軍

 現在、私達、白鷲の翼や各国で厳選された連合軍は中央に向かっていた。

 それはローグ王国の伝令に戦力として来て欲しいと言われたからだ。

 私はてっきりカーミラ達を止められなかった事を咎められるかと思っていたのだが……。


「まさか、中央に行く許可が降りるなんて思わなかったわね」


 私が思わずそう口にしてしまうと、ブリジットが手をすくめながら言ってきた。


「それぐらい、切羽詰まってんだろ。なんせ結界の一つが壊れたんだからね」


 ブリジットはそう言って馬車から身を乗り出し恐々と地面を見る為、私は呆れた表情を浮かべる。


「さすがにここにはヨルムンガルトはいないわよ」


「けど、デッドワームあたりはいるかもしれないでしょ。なんせ、もう中央に入ってんだからね」


「魔物の気配には気を配ってるから心配しないで。それより向こうを見なさいよ。ローグ王国が見えて来たわよ」


 私がそう言って指差す方向には、レオスハルト王国よりも進んだ建築物が並ぶ町が見えてきた。

 それを見たファルネリアが興味深げに言ってくる。


「やはり、中央は魔導具の技術が進んでるわね……。これは噂は本当かも」


「噂って何よ?」


「中央のローグ王国は異界の門から技術を取ってきてるって噂があるの」


「異界の門ね……。何故、アステリアはそこに引きこもってしまったのかしら?」


「暴れてる最中に正気に戻って恥ずかしくなったとか?」


「アンクルの話しを聞いてしまうと否定できないわね……。そうだ、アンクルといえばブリジット、私達がアンクルに呼ばれたら、蒼狼の耳とマルー達のパーティーの指揮をお願いね」


「わかってるから心配しないで良いよ」


「心配はしてないわよ。大概、うちのパーティーはブリジットが指揮してるんだから。それにある程度したら不死の住人達も戦うって言ってたし無理しないでね」


「はいよ。しかし、不死の住人ねえ……。戦いが終わったらさっさと帰ってくれるのかしら」


「そこはアンクルが管理してるから大丈夫だって言ってたわよ」


 私がそう説明するとファルネリアが顎に手を添えながら聞いてきた。


「ねえ、アンクルって何者?ただの不死の住人じゃないわよね……」


「別に何者でも良いじゃない」


 私がそう答えるとファルネリアは笑って頷く。

 そう、アンクルが誰だろうが何者だろうが関係ないのだ。


 あの人を取り戻せるならね……。


 私はそう思いながら、あの人からもらった宝具を撫でるのだった。



◇◇◇◇



ローグ王国に到着すると早速、謁見の間に通され国王アーデルハイドに歓迎を受けた。


「良く来てくれた連合軍の戦士達」


「こちらこそ、お呼び頂きありがとうございます。それで今はどの様な感じなのでしょう?」


 私がそう聞くと、アーデルハイドの側に立っていた宰相デルフィンが説明しだした。


「現状、そちらに伝えたことより変わっていません。しかし、あれから日が何日も経っていますのでそろそろ動きがあると踏んでいます」


「そうなると、次は最重要機密区域エインへリアルですか……。ちなみにそこに異界の門というものがあるんですか?」


 私がそう問いかけるとデルフィンは、片眉を上げた後に頷く。


「なるほど、外周ではその情報は流れてしまってるのですね。仰る通り異界の門と呼ばれているものがあります。賊はそこに向かっています」


「神、アステリアに会いに……いえ、殺しにですね」


「ええ、だが、それだけは絶対に阻止しなければなりません」


「わかってます。なので、私達をエインへリアルへ案内して頂けませんか?」


「もちろんです」


 デルフィンは力強く頷くと、エインへリアルの近くまで飛べる魔導具がある部屋に案内してくれた。


「ここからエインへリアルの第一障壁に飛ぶ事ができます」


「わかりました」


 私はそう言った後、連合軍を見る。

 白鷲の翼、蒼狼の耳、火竜の伊吹、紫の角笛、要塞都市アルマーから雷帝騎士団、獣人都市ジャルダンから雪花隊、そしてブレド……。

 私は仮面を付けたブレドを睨む。


「何しにきたのよ?」


「ふっ、そこに斬らねばならぬ悪がいるからだ!」


「はいはい……。でも、丁度良いわ。あなたには私達が抜けた時のフォローをお願いするわよ」


「わかった。この白銀の騎士に任せておくが良い」


 ブレドはそう言って変なポーズを決める為、デルフィンが大丈夫なのかという視線を私に向けるので頷いておく。


「見た目や言動はあれだけど、おそらくその人は私の次ぐらいは強いわよ」


 私がそう言うとブレドは軽く首を振りながら、私の真正面に立つと言ってきた。


「違うな。一番強いだ」


「……へえ、本気で言ってるのかしら?」


「私はあの件以来、己の心身を鍛え続け、今では筋肉量も増えて全盛期よりも強くなっていると自負している」


「なら、しっかりとその強さを見せてもらうわよ」


「任せてくれ」


 ブレドは力強く頷く。

 正直、勇者アレスのパーティーメンバーが一人でもいるのはありがたい。

 なんせ、安心感が別格である。

 私も頷くと皆んなに向き直る。


「それじゃあ、これから向こうに飛ぶわけだけど、二手に分かれて行動しようと思う。そこで何か意見はある?」


 私がそう聞くとメリダが手をあげた。


「悪いんだけど、私達だけで巨人の右腕を追わせて欲しい。彼らには言いたい事もあるからね」


「わかったわ。では、白鷲の翼、蒼狼の耳、紫の角笛と雷帝騎士団、雪花隊、そして白銀の騎士で分かれましょう」


 私の言葉に皆んな頷く。

 それから私達は魔導具に乗り外周の誰も立ち入ったことのない、最重要機密区域エインへリアルへと飛ぶのだった。


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