半神達

 目に違和感が……。


 私は目を閉じて目元を押さえていると、アンクルが私の顔を両手で包み込むように触れる。

 すると、違和感がなくなり目を開くとアンクルが心配そうな顔で見てきた。


「ラスの力に反応するなんて、その目は期待できるわね」


 アンクルがそう言って私を嬉しそうに見ると、響くような声でラスが喋り出した。


「我の目に共振するとはなかなかだな」


「でしょう。だからラス、あなたは全力で彼女を助けてあげてね」


「承知」


 ラスはそう言うと後ろに下がっていく。

するとアンクルがラスを見ながら話しだした。


「ラスは監視者であり観測者なの。そしてもっとも良識ある半神よ」


「半神って思っていたよりまともな方が多いんですね」


「多分、捉え方なのよ。それによって良くも悪くもなるわ。まあ、次に紹介するのはネルガン並みに問題ある半神だから」


 アンクルはそう言って天井近い大きさで頭が八つある蛇の半神を見ると、その半神はゆっくりと来て私とアンクルを見ると八つの口が同時に喋り出した。


「ついに暴れ回る事ができるのか?なら、酒を飲んでから行かないとな」


「ハイダラ、あなたがやるべき事はヨトスを連れて帰る事よ」


「要は暴れれば良いんじゃねえか。安心しな、大地を割る様な下手はしねえよ」


 ハイダラが楽しそうにそう言う姿を見て何故かオルトスさんが重なって見えてしまう。

 そんなオルトスさんだが、今はラスに捕まって沢山の目で見つめられて悲鳴を上げていた。

 だが、私は気にする余裕がないので気づかないフリをしていると、ハイダラが私に声を掛けてきた。


「おい嬢ちゃん、ラーデッドパイソンをやるなんてなかなかやるじゃねえか」


「えっ、何で知っているんですか?」


「あれは魔物になっちまったが、本来は巨獣に分類されるんだ。ちなみに巨獣ってのは誰の眷属か知ってるか?」


「獣神ライオール様のはずです」


「当たりだ。そしてあれは本来、俺の眷属でもある」


「えっ、それじゃあ、あなたは……」


「俺は獣神ライオールの半神だ」


 ハイダラがそう言うと豪快に笑い出す。

 それをアンクルが迷惑そうな顔で見ながら私に話してくる。


「怒り、自由、享楽の塊がハイダラ、自分の領域を作っては壊しを繰り返してるの。ちなみにあなた達の世界で起きる地震の半分はハイダラが原因よ」


「うわっ、確かに問題ありですね……。しかし獣神ライオール様の半神ですか……」


「獣神ライオールはこの世界に攻め込んだ事や他の神々の領域を危険に晒した事を反省して、獣神ライオールにとって負の部分を取り出したのよ」


 アンクルが悲し気な表情でそう言うとハイダラが豪快に笑い出した。


「ぎゃははっ!何が負だよ?完全に良い部分じゃねえか。てか、自分を律して何が面白いんだ?あいつ今じゃ仕事に忠実なござる野郎だぜ。武士道ってなんだよ。笑えるわ!」


 ハイダラが体を揺らし笑うので軽く神殿内が揺れる。

 するとアンクルが手をハイダラにかざすとハイダラの体がどんどん小さくなってしまい、私の膝下までの大きさになる。

 そしてアンクルはハイダラを見下ろしながら微笑む。


「ここが私の領域だという事を忘れちゃ駄目よ、ハイダラ」


「ぎゃははっ、こりゃ参ったな!だが、これはこれで楽しいぜ」


 ハイダラはそう言うと神殿内を凄い勢いで駆け回りはじめてしまい、それを見たアンクルは頬に手を当てて、困った表情をする。


「怒らないのは良いけどあれはあれで面倒なのよね。まあ、しばらくは様子を見ましょう。それじゃあ、次はクトゥンね」


 アンクルはそう言ってクトゥンを呼ぶと、魚の口をパクパクさせながら蛸の目を細めて歩いてきた。


「ほお、これはこれはアンクルの客人、ワシはクトゥンと言う。お近づきにワシのペットをもらってくれるかな?」


「い、いえ、お気持ちだけで結構です」


「そうよ、クトゥン。あなたは何でもすぐあげたり、望みを叶えようとしちゃ駄目よ。相手にとっては迷惑になる場合もあるのだからね」


「そ、そうなのか……」


 クトゥンは明らかに落ち込んでいるが、ここで余計な事を言うと危険だと感じたので私は黙っている事にした。

 すると、アンクルが私の側に寄ってきて耳に囁いてきた。


「クトゥンは話しが通じればまともなの。でも、あの純粋さがもっとも危険なの。だから、あまり関わっては駄目よ」


「わかってます。向こうで経験済みですから」


「ああ、最近クトゥンが行った町ね……」


「はい」


「なら、わかるわね」


 アンクルはそう言うと微笑みながら、クトゥンに声を掛けた。


「クトゥン、あなたにはこれを見てほしいの」


 アンクルはそう言うとキリクさんが持っていた剣をクトゥンに渡す。

 するとクトゥンは剣をじっくり見出した。


「ロメリア文明文字に魔神グレモスの力か。面白いな。だが、それよりも別次元の鉱石が使われているぞ!むむむ……」


 クトゥンは蛸の様な目を見開き、剣をあらゆる角度から見始める。

 そして、しばらくすると満足した様に頷き、アンクルに声を掛けた。


「ワシにどうしろと?」


「私達の力をこの剣に込めれる様にしたいの。できるわよね?」


「もちろん。ワシの領域にあるアルバリウム鉱石を追加すればだいたいのものには耐えれるはずた。早速やってこよう」


 クトゥンはそう言うと、黒い空間を作り出し自分の領域に帰っていった。


「これで後はタナクスね……」


 アンクルはそう言うと、棘が出てたり鎖が巻き付いた禍々しいフルプレートを着た四本腕の半神に向かって手招きする。

 すると、その半神はゆっくりとこちらに歩いてきたのだが、私はその半神を見て恐怖感に襲われてしまう。


 怖い……。

 

 するとそれに気づいたアンクルが私を結界で包み込んでくれた。


「気づかなくてごめんなさい。タナクスは死と隣人だから、あなたの様に感受性がある人は死を強く感じてしまうのよ。今は大丈夫?」


「……はい」

 

「無理はしないで、体調が悪くなったらタナクスには離れてもらうから」


 アンクルがそう言うとその話しを聞いていたタナクスは四本の腕でお手上げのポーズをした。


「ふん、死を乗り越えられん者が多すぎる。我に教えを乞いに来た連中も今だにアンデッド共を呼び出すのみ。全く嘆かわしい」


 タナクスはそう言うと苛々した雰囲気を出しながら四本の腕を組むのだった。


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