生まれる新たな英雄譚
俺が威圧しながら剣を構えるとダッツとバナールは即座に剣を抜き、先にダッツが向かってきた。
「死ねええぇーーー‼︎」
ダッツは大振りで来るが、仕掛けてきているのがわかっていた俺はあまり踏み込まないようにしてダッツの攻撃をいなす。
案の定、バナールが追撃をして来たが軽く避け反撃を入れる。
「くそっ!何故加護無し如きに私が苦戦するんだ⁉︎」
「それはお前達が弱いからだろう」
俺はそう言いながらバナールの持っている剣を真っ二つに叩き割る。
「なんだと⁉︎」
バナールは俺から距離を取ると刃先のない剣を見て呆然とした表情になる。
そんなバナールの側にダッツが駆け寄ると俺を睨みながら叫んだ。
「加護無しっ‼︎てめえどんな卑怯な手を使った⁉︎」
「見ればわかるだろう」
俺が面倒臭そうに答えるとダッツが俺に向かってこようとしたが、それをバナールが引き留めた。
「ダッツ、どうせ仲間に強力なバフを付与してもらったんだろう。それにあの剣は魔導具だって情報だ。この強さは奴の本来の実力ではない」
「そういうことか。全く卑怯な奴だな」
「ああ、あいつは何処までも腐っていて卑怯者だよ」
バナールとダッツは憎々しげに俺を睨んでくる。
やれやれ。
こいつら闇人になってないのに闇人に見えてきたぞ……。
いやそれ以上か……。
俺はひたすら罵倒してくる二人にそろそろケリをつける為、倒す算段を考えているとこちらに勢いよく向かってくる気配を感じた。
この気配はダークエルフのデボットか。
俺がそう思っていると二人の側に片腕を失ったままのデボットが現れた。
「勝手に行動して誰を相手にしてるかと思ったらこいつか……」
「デボットか、丁度いい。卑怯な加護無しを殺してサリエラを助けたいから私達に力を貸せ」
バナールは手伝うのが当然だと言わんばかりにデボットに言うと、折れた剣を捨てて短剣を構える。
しかし、デボットは全く構える様子もなくバナールを一瞥した後、背を向けてしまった。
「なっ⁉︎デボット‼︎」
「黙れ出来損ない。まだ馴染んでいない状態で動き回るなと言ったろう。カタリナの手を煩わせたのか?」
「くっ⁉︎」
「お前達、戻るぞ」
デボットはそう言うと丸い玉を取り出し地面に叩きつける。
すると三人の足元に魔法陣が現れ、あっという間に三人の姿は消えてしまった。
……魔導具での転移か?
俺は三人がいた場所を見つめると、地面には割れて粉々になった魔導具と焦げた丸い円ができていた。
使い捨ての転移魔導具とは奴らずいぶん羽振りが良いな。
後ろに貴族がついているのか?
俺は三人がいた場所を見つめながらそう考えていると、ラーデッドパイソンの方に動きがあった。
俺が刺した短剣辺りに魔力が集まり出しているのだ。
それからしばらくして短剣を刺した傷口付近が爆発した。
「シャアアアアアアァァッーーーー‼︎」
胴体に穴があいたラーデッドパイソンは痛みでのたうち回り始める。
上手くいったが後は爆発するまで時間がかかり過ぎる。
問題外だな。
後はおとなしくしてサリエラに任せよう。
俺はのたうち回るラーデッドパイソンに巻き込まれないよう距離をとり、サリエラの方を見ると、丁度、サリエラがラーデッドパイソンの目に剣を突き刺しているところだった。
そしてサリエラが剣を抜くと同時にラーデッドパイソンが崩れる様に倒れた。
やったな、サリエラ。
俺はラーデッドパイソンの頭の上でこちらに手を振るサリエラに、剣を掲げてみろと合図をする。
すると言われた通りにサリエラが剣を掲げると、周りから大歓声が巻き起こった。
これでお前の英雄譚が追加されたな。
俺はラーデッドパイソンの頭の上で恥ずかしそうに顔を赤らめるサリエラを見て、苦笑するのだった。
◇◇◇◇
その後、ビッグアントの討伐め終わり、俺達は黒蠍の毒針というクランが使っていた建物があったとされる、巨大な穴があいた地面の前に立っていた。
どうやら、ビッグアントがここまで穴を開けてそれからラーデッドパイソンが出て来たらしい。
「クランの死体が何処にもなかったから、逃げたか元からいなかったのだろう。やはり東側と合同で潰すべきだったな」
ランドが顎に手を当てながら無念そうな表情を浮かべると、ケンが肩をすくめる。
「仕方ないさ。合同で潰そうとした時に南側の冒険者ギルドやクランが頑なに拒否したからな」
ケンがそう言うと東側から来た別の冒険者が呆れた表情でケンに質問する。
「で、南側の冒険者ギルドやクランは結局クロなのか?」
「わからない。だが、南側の問題ある貴族も関わってるから、限りなくクロに近いグレイってとこだな」
「ちっ、じゃあ南側はほとんど信用できないな」
「まあ、それについては東側も文句を言えないだろう。今回、東側の貴族もかなり粛正されたんだからな」
「全く、後ろでふんぞり返ってるバカ連中の為に俺達が尻拭いするなんてな。こんな時にアレス様が生きてたらなって思うよ」
「ああ、きっと貴族連中のケツを蹴り上げて穢れた血縁者のアジトに突っ込んだろうぜ」
ケンがそう言うと周りにいた冒険者達は一斉に笑い出す。
そんな彼らの話しを聞いていた俺は複雑な気分になったが、考えてみたら間違いなくやっているだろうなと思うのだった。
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