五章
迷宮都市
俺はレオスハルト国王の依頼で南側にある迷宮都市ラビリントスに向かっていたのだが、南側のサウザンドアイル領に入り、すぐに驚いてしまった。
なぜなら南側はてっきり肥沃な土地があると思っていたのに、来てみたら一面が砂漠だったからである。
その為、俺は思わず、隣りでニコニコしながら外じゃなく俺の方を見ているサリエラに質問してしまった。
「サリエラは南側にある精霊の森出身だよな?俺は南側は初めて来たんだが、こんな場所に森なんてあるのか?」
「森があるのは南西の端近くにあるリンドベルク領の山々を越えた先で、精霊の森もそこにあるんです。ちなみに。私も今回、こっち側を通るのは初めてなので驚いてますよ」
「初めて?そうなるとサリエラは東側にどういう方法で来たんだ?」
「精霊の森の秘密の道を使って東側に来たんです」
「なるほど……。便利なものだな」
「でも、その道を使う為には厳しい審査があって、一度でも犯罪をすると自動で通れなくなるんですよ」
「中々、興味深いな」
「なら、今度キリクさんを連れていったら色々と教えますね」
サリエラは楽しそうに言ってくる為、俺は一面砂しか見えない方に視線を移しながら答える。
「……まあ、気が向いたらな」
「キリクさん、来る気ないですよね……」
サリエラがジト目で俺を見ているのが背中越しにわかったが、俺は気づかないフリをしていると、遠くに異様なものが目に映った。
それは地中から飛び出し空中を舞ってからまた地中に突っ込んでいく身体が三角形の巨大な生き物だった。
「……あれはなんだ?」
俺は思わずサンドリザードを操っている魔獣使いの加護を持つ御者に声を掛けるとパイプをふかしながら笑顔で答えてきた。
「旦那、あれはサンドマンタっていう、この近辺にしかいない砂漠を泳ぐ魔物ですよ」
「……そうか。南側は面白い魔物がいるんだな」
「ええ、南側は他の場所と違って魔物の種類が豊富なんですよ」
「それは魔王ラビリンスが原因か?」
「ええ、魔王ラビリンスは風変わりですからね。迷宮都市ラビュントスにあるダンジョン内にはもっと変わった魔物が出るそうですよ、冒険者の旦那」
「なるほど、貴重な話しを聞けて良かったよ。ありがとう」
俺はそう言って銅貨一枚を御者台に置いてやるとかなり喜ばれてしまった。
すると、色々な魔物が出る度に御者は説明してくれる様になったので、迷宮都市ラビュントスに着いた際に礼として銀貨を渡すと黄ばんだ歯を見せ大喜びされた。
「凄い喜びようでしたね」
「普通はああいう話しは運賃に含まれているからな。それに南側に来る奴は一攫千金狙いだから金がない奴が多いんだよ」
俺が入り口付近に並んでる、汚れた装備品を着けた連中に視線を向けると、サリエラは納得した表情をする。
「でも、ああいう人達を中に入れて大丈夫なんですかね?冒険者っていうより明らかに山賊ですよね……」
「それは多分、大丈夫だろう」
俺は迷宮都市ラビュントスの入り口を守っている守衛を見る。
あれはきっと砂漠に出てくる魔物の素材で作られた鎧だろうが、それよりもあの雰囲気……。
おそらくプラチナ級以上はありそうだな。
俺はそう思いながら守衛を見ていると、突然、守衛専用の扉が開いて中から上半身だけ紐で縛り上げられた男が放り出されたのである。
そんな男を見たサリエラは納得した表情になる。
「確かに大丈夫そうですね」
「まあ、荒くれ者が多くなればそれだけその町を守る守衛や衛兵は強くなるんだ」
そう言っているうちにまた、人が放り出される。
そんな光景を五回程見たところで俺達の順番が来たので手続きを始める。
そしてまた一人放り投げられたところで、許可が降り俺達は無事に迷宮都市ラビュントスに入ることができたのだった。
◇◇◇◇
迷宮都市ラビュントスに入った俺達はしばらく都市内を探索した後に比較的静かな酒場に入り食事を摂っていた。
「中々、面白かったですね」
「ああ、特に都市の構造が興味深かった」
俺はそう言いながら先ほど見た風景を思い出す。
迷宮都市の作りは、なだらかな大穴に建物を建造してるいるので、入り口から入ってすぐに迷宮都市ラビュントスの全容を見る事ができるのである。
更に中は複数の区域に別れており、大金を持っている者ほど安全な区域に住める仕組みになっているのだ。
ちなみに俺達が当面拠点に使う宿は安全性がある中流地区を選んでいる。
「確かに不思議な構造ですよね。でも、ダンジョンの真上に住むって中々度胸がいりますよ……」
「まあ、ここは集団暴走もないし下手なダンジョンよりは安全なんだろう。今のところはな」
「ああ……。もしかしたらこれから変わる可能性もあるんですよね」
「そうだ。攻略組が入っていき魔王ラビリンスが身の危険を感じたらどういう行動をするかわからないからな」
だからこそ、さっさと依頼を済ませて南側から去りたいわけだが……。
俺は依頼の件やグラドラスとの事を考え、間違いなくすぐに去るのは無理だろうと確信するのであった。
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