12 死と破壊、最終決戦1

 俺は油断なく黒い魔狼を見据える。


 あれがどういった特性を持っているのか。


 以前戦った『殺戮の宴』のメンバーで、使い魔のように神器を操る奴がいたが、この狼の似たタイプだろうか。

 あるいはまったく別の──。


「破壊しろ」


 リオネルが静かに告げる。


 おおん、と吠えて、黒い狼が走りだした。

 一直線に、俺の下に。


「ヴェルザーレ、第二特性発動カウント」


殲滅力場充填開始チャージスタート

『カウント180……179……178……』


 俺の呼びかけに応じ、神器から声が響く。


 残り三分弱を耐えれば、ヴェルザーレの第二特性が解放される。

 とはいえ、この特性はガストンの甲冑には通じなかった。


 ならば、同じ『次なる段階』に達している伯爵の神器にも通じない可能性が高い。


 通用すれば儲けもの程度の気持ちで、通常の近接戦闘を仕掛けた方がよさそうだ。


 ……などと思考を整理しつつ、魔狼を迎え撃つ。


 機械的な外見とは裏腹に、しなやかな動きで駆ける魔狼。

 一瞬にして俺の眼前まで迫り、爪を繰り出す。


 だが──見えている。


 確かに速いことは速いが、『死神の黒衣』で増幅された俺の運動能力なら、なんとか捉えられるスピードである。


 しかも動きが直線的だから、なおさら捉えやすい。


 俺は、ヴェルザーレをまっすぐに振り下ろした。


 うおんっ!


 魔狼が短く吠える。


 不可視の破壊エネルギーをまとった槌の打突部が、敵の頭部を叩き潰す──。


 と、思った次の瞬間には、魔狼の体が弾け散った。


「いや、違う……!?」


 黒い霧のような状態になって、ヴェルザーレの打撃を避けたのだ。

 霧は空中をたゆたいながら、俺に近づいてくる。


 ──まずい!


 嫌な予感を覚え、俺は『黒衣』で増幅された脚力を全開にして跳んだ。


 ばぢぃぃぃぃぃぃっ!


 火花が爆ぜるような、音。


 同時に、俺のまとう黒衣の大部分が弾け散った。

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