10 正義の道

「人間を、神に生まれ変わらせる……!?」


 伯爵の言葉に驚く俺。


「じゃあ、俺も神器の扱いに習熟していけば、いずれは神と同等の存在になる……というのか?」

「そうだ。そして『次なる段階』とは、人間から神の領域へと段階を移した者のことを指す」


 伯爵が言った。


「私やガストン、ベアトリスが至ったのは、その領域だ」

「神器のクラスも上昇する、とガストンは言っていた……」

「そうだ。クラスBならクラスA相当に、そして最強のクラスSなら──さらにそれを超える能力を発揮する」


 奴の神器は、最強すらも超える力を生み出す、ということか。


「その段階に達する方法は?」

「興味があるのか」


 リオネルが笑う。


 好意的に。

 嬉しそうに。


「大陸を隔てた遠い異国に『最果ての回廊』と呼ばれる場所がある。そこで神の試練を受けた者は、人間から神へと続く次なる位階へ──すなわち『次なる段階』へと進むことができる」


 と、リオネル。


「その試練を受けなければ駄目、ということか?」

「いや、中には試練なしで──自力で会得する者もいると聞いている。とはいえ、それは容易なことではない」


 伯爵は首を左右に振った。


「神の試練を受けて『次なる段階』を目指すのが、最も近道だろう。『次なる段階』自体にもさらにいくつかの段階があるからな。一番上の段階へたどり着けば、神と同等の能力を得るはずだ」


 言って、伯爵は懐から虹色に輝く鍵を取り出した。


「これはジャハトマから授かった鍵だ。『最果ての回廊』に行くには、この鍵で『門』を開く必要がある」


 ──なるほど、あの鍵を手に入れればいいわけだ。


「今一度、君の真意を知りたい。ミゼルくん、君は以前に犯罪者集団『殺戮の宴』を全滅させた。それは私への害意あってのことかな?」

「悪は、滅ぼす。ただそれだけの理由だ」


 俺は冷ややかな気持ちで伯爵を見た。


「ふむ、義憤にかられて……という解釈でよいのかな?」

「悪は、滅ぼす。誰であろうと。それが俺の、神器の使用目的だ」


 重ねてたずねる伯爵に、俺は言い放った。


「どんな誘いを受けようと変わらない」

「若者らしい正義感──それが君の行動原理か」


 リオネルが小さく鼻を鳴らした。

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