24 少女騎士の戦い5
「こいつら……っ!」
アーベルは顔をひきつらせながら、床を大きく蹴った。
人間離れした跳躍力でレナたちの頭上を飛び越えて刺突を避ける。
着地と同時に大きく後ずさって距離を取った。
「やってくれるじゃねーか……!」
悔しげなアーベル。
(戦える──)
レナはグッと拳を握り締めた。
確かに彼は手ごわいが、三人で連携すればなんとかなるかもしれない。
胸の内に希望が湧いてくる。
そして、闘志が。
「二人とも──」
次で、決める。
三人でアイコンタクトし、連携の手順を伝え合った。
さあ、勝負だ。
(まず、あたしが!)
レナは身を屈め、四足獣さながらの低い姿勢で飛び出した。
矢のような勢いでアーベルに肉薄する。
「ふん、さすがは『迅雷』。なかなかのスピードだ」
アーベルが鼻を鳴らした。
レナの動きが見えているのだろう。
余裕を持って剣を振り上げ、迎撃しようとする。
だが──運動能力でかなわないのは織り込み済みだ。
アーベルの戦いぶりは、人知を超えている。
人間の限界を明らかに超えた動きである。
いくらレナが騎士学園一のスピードを誇ろうとも、彼には及ばない。
(だから──)
レナは手にした剣を投げつけた。
「何っ!?」
いきなり得物を手放した彼女の行動に、虚を衝かれたのか──アーベルの動きが一瞬、止まる。
レナはすぐさま横に跳んだ。
「はああああああああああああああっ!」
彼女の背後に隠れていたターニャが飛び出す。
「しまっ……」
完全な不意打ちかつ至近距離の突進に、アーベルは対応しきれない。
ターニャは嵐のような連撃を見舞った。
彼女の戦闘スタイルはとにかく攻撃重視だ。
体勢が崩れたアーベルに、容赦なく斬撃の雨を降らせる。
「く、くそっ、こんな程度で──」
が、アーベルもさるもの、後退しながらなんとか体勢を立て直し、ターニャの攻撃をブロックした。
「凌いだぞ。今度は俺が──あ、がああっ!?」
「油断大敵、ですよ」
ジークリンデの声は、アーベルの背後から。
そう、ここまでが三人の狙いだ。
レナを囮にして、本命はターニャの突撃──と見せかけて、彼女をも囮にした、ジークリンデの死角からの一撃。
これこそが、真の本命の攻撃だった。
***
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