第9章 学園の血闘

1 黒の超戦士1

 アリシア先生と別れた後、学校を出ようとした俺だったが、騒ぎを聞きつけて戻ってきた。


「戻ってきて正解だったな……」


 学園内でこんな事件が起きるとは。


 アーベルにナーグ……いずれも、以前に俺が叩きのめした相手だ。


 二人は、奇妙なデザインの黒い甲冑をまとっている。


 あの鎧になんらかの仕掛けがあり、動きを強化しているんだろうか。

 各国で実験段階の、騎士の動きや魔力などを強化する『戦魔甲冑アウゴエイデス』。

 まさか、奴らが身に付けているのはその一種なのか?

 あるいは──。


「神器、なのか……!?」


 どうしてこいつらが――?


 いや、疑問は後だ。

 まず生徒たちの安全を確保しなければならない。


 それにレナも――。


「大丈夫か」

「ミゼルくん……!」


 声をかけると、レナは目を輝かせて俺を見つめた。


「ありがとう、助けてくれて」

「……下がっていろ」


 俺は彼女に指示した。


 戦闘用の神器を使っている間は、『認識阻害の指輪』を起動できないから、あまり人目につくところでの戦いは避けたい。

 だが、レナたちを守るためには、そうも言っていられない。


 ──ともかく、今は目の前の敵に意識を集中だ。


 前方にはアーベルが倒れている。

 先ほどの一撃で四肢が砕けたのか、立ち上がれないようだ。


「くそ……てめぇ……っ」


 学園ランキング二位にして、貴族の令息である男子生徒。

 秀麗な面影はもはや微塵もなかった。

 怒りと憎悪からか、顔中に血管が浮かんでいる。


 俺に対する、負の想念があふれ出るようだ。


 アーベルは俺との模擬戦で再起不能になったはずだった。

 だが、先ほどの動きは異常な速度だった。


 完全復活──。

 いや、それどころか人間の限界を超えた動きである。


「一体、どういうことだ……」


 俺は油断なくハンマーを構え直した。


 後方にいるナーグにも目を配る。

 以前、他の生徒を相手にした恐喝行為を、俺が止めたことがあった。

 かなりキツく接したから、おそらく恨まれてるんだろう。


 アーベルほどじゃないが、ナーグの顔にも俺に対する怒りや憎悪が見て取れた。



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