13 対神器対策機関

「それと──道中でミゼル・バレッタに出会いました」


 アリシアが言った。


 あのときは冗談めかしてアプローチしたが、実際には冷静に彼を観察していた。


 彼の、変化を。


「ふむ。ミカエラと同じくクラスS神器の所持者だったな」

「ええ。ひそかに計測したところ、神器の解放が進んでいるようです」


 アリシアはポケットから小さな箱のような道具を取り出した。


 対象の神器所有数やそのランクを大まかに測ることができる魔導機械だ。

 それを、かち、かち、と押しながら、アリシアは告げる。


「あるいはすべての神器を解放することもあり得るかもしれません──」

「ミゼル・バレッタには組織全体が注目している。かなりのハイペースでスコアを稼いでいるようだな」

「ええ、神器使いたちとの戦闘もそれなりに経験しているようですし、すでに手練の領域かと」


 うなずくアリシア。


「彼は神器の力で殺戮を繰り返しているようだな」


 支部長が言った。


「どうやら自身が認定した『悪』を殺し続けているようです。ほぼ毎日のように……由々しき事態ですね」


 アリシアが眉をひそめる。


 どうやら彼は正義の味方を自認しているようだ。

 そして殺した相手は、いずれも犯罪者であり、極悪人といっていい連中。


 だが、だからといって無制限に殺していいわけではない。


 今の彼は、アリシアから見れば『暴走』に等しかった。


「神器とは人の手に余る力。その行使を抑止するために生まれたのが、我が組織だ」


 支部長が謳うように告げる。


「ミゼルを止める──場合によっては抹殺することは、組織の使命といえよう」

「ですが、彼の力は現時点でも強大です。我が組織の力をもってしても、戦えば甚大な被害が出るでしょう」

「うむ……」


 アリシアの意見に支部長の表情が曇る。


「『あれ』が実戦に耐えうる段階になるまで、手を出さないのが賢明かと──」

「だが、うかうかしていたらミゼルは『最果ての回廊』への道を開いてしまうのではないか?」


 と、学園長。


「リオネル伯爵のように『次なる段階』に進む者が増えては、厄介だ。その前に始末するのが肝要だろう」

「実行時期については慎重に、かつ迅速にさせていただきます」

「うむ。世界の平和のために」

「ええ。世界の秩序のために」


 二人は組織の理念を唱和した。

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