第416話 中断

「ちゅっ♥ お、おほぉ♥ ん、あ、こらぁ~♥ んごぉ♥」


「「「じゅぶる、ちゅじゅじゅじゅ♥」」」


「ぷはっ、な、なんとエッチな影分身たちなのじゃぁ~。んぐぉ、ペロペロなキスしながら、んひぃ、わ、わらわのお胸モミモミしながら摘まんだり、のぉ、わ、腋をぺろぺろ、お、ぉぉ、ゆ、指を、後ろも前も……な、舐めと同時に……おひぃ♥」



 どうしよう……



『ふむ……それにしても、こういった形で……と言っても、ベンリナーフの肉体を使って話しているだけではあるが……ようやくお前とも会うことができたな。ヒイロの息子……アース・ラガン。噂は色々と聞いている』


「んのぉおおおおお♥ はあ、はあ……のう、影分身よ。貴様もズボン脱ぐのじゃ! わらわに尻をこっちにむけるのじゃ!」


『カクレテールでは大活躍だったそうだな。さらに、ヤミディレや人形娘にも随分と気に入られていると聞く。帝国時代の評判は高くなかったが、人間たちの目は節穴だったということか』


「しーり! しーり♪ ぷりぷりお尻♪ わらわに献上するのじゃっ、おぬしのお尻♪ っへい! 影分身とはいえ、おぬしの尻の穴を―――――」


『改めて、吾輩はかつて魔王軍の六覇の一人であった……ハク――――』



 つか、もう限界だ!


「ハクキ、ちょいタンマ! つか、ちょっと待てぇええええ! シノブ! おまえ、いい加減に影分身を消せ! なんつーことしてんだよ!」


 ハクキがベンおじさんを通じて話しかけてくる。

 全ての黒幕が間接的とはいえ登場するってのは、どう考えても緊迫した空気で緊張感漂うもの。

 しかし。全然集中できない。

 なぜなら、ノジャを抑え込むためにと、シノブが百人の俺の影分身を作って、ノジャと……


「で、でも、ハニー……影分身消しちゃったら……あの人、また襲い掛かってくるわよ?」

「いいよもう! ほら、俺の影分身がズボンを脱ぐ! やめろ、やめろおおおお! つうかこのままだと本体の俺より分身の方が先に大人の階段上って……しかも、よりによってあいつと! まだデートどころか交換日記とかもしてないのに!」

「あ、安心して、ハニー! たとえ影分身がズボンを脱いでも……他の女と交わっても……私は別に気にしないというか……」

「俺が恥ずか死ぬって言ってんだよぉ!」

 

 ノジャの年齢はハッキリ言ってミカドを除く誰よりも年上ではあるものの、見た目幼女のノジャにとんでもない行為を……しかもズボン脱いで尻を向けようなんて、俺の姿で何やらせる気だ! 

 絵面を想像しただけで死にたくなる。


「で、でもお兄ちゃん、ここで中断してお預け……生殺し状態にしちゃったら……ノジャは本当に我を忘れて……それこそ巨大化して暴れるかも……」

「だ、大丈夫だよ、お兄さん! たとえ影分身が何をやっても、本体である本当のお兄さんとは別物。お兄さんのカッコいいところはボクたちはちゃんと分かっているから」

「アース・ラガン……ここは、耐えるところかと……むしろ、ここは影分身で満足してもらった方が安上がりだと思うぞ?」


 しかし、エスピもスレイヤもラルも、シノブと影分身ではなく本体である俺を止めて、挙句の果てに我慢しろと?

 んなことできるか!



『……おい……』


「あ~……ハクキ……待つじゃない。そもそもお前さんのかつての仲間が原因でもあるわけじゃない?」


「ぬぅ……すごいな、アースくんは……ハクキを目の前にして『タンマ』など、ヒイロですらできんことじゃ……というか、ノジャとアースくんは一体どういう関係なんじゃ? エスピも含めて……」



 放置しているハクキが、なんか怒り出すかもしれないし、あっちもこっちももう頭が痛い。

 


『フン……かつての仲間……命を取るまではと思ったが……もはや見るに堪えんな。とはいえ、ノジャがアース・ラガンに懸想するとは思わなかったな……』


「……ハクキ……じゃあ、お前さんがベンやノジャ……シソノータミの調査団を襲撃したってことで間違いないじゃない?」


『ん? ああ。邪魔な戦力を二人削げると思ったのでな……それがこんな状況になるとは思わなかった。ノジャとベンリナーフを排除し、ジャポーネを利用して邪魔なミカドとコジローも排除……という予定だったが……まぁ、お前たちの命は後回しにしてやろう。吾輩の予定も色々と変わったのでな』


「予定? どういうことじゃ?」


『それを貴様らに言うわけあるまい。コジロー、そしてミカドよ。本当はノジャもベンリナーフも、そしてミカドもコジローも命を奪うか、吾輩の駒にしておくところを、もう少しだけ長生きさせてやろうというのだ』


「ほ~……いずれにせよ……戦争が終わって十数年の月日が経つも、お前さんや魔王軍残党たちの戦争だけは終わっていない……そういうことじゃない?」


『大魔王様が崩御されたというだけで……貴様らとライファントたちだけが勝手に終わったことにしただけにすぎぬ。そして貴様らのミスは吾輩に十数年という十分な時間を与えてしまったことだ』


「なんじゃと?」


『シソノータミの古代遺跡……最深部には入れずとも表層だけで十分なオモチャを確保できた。新たなる王の証たる、六道眼を手にするための手段もな。もっとも、アース・ラガンが余計なことをしてくれた所為でそちらも少し予定が狂ってはいるが……それでもあやつが鍵となるのであれば別に支障はない』



 うおおおおおお、やめろおおおおおおおおおお!!!! 

 一列に並んで尻を突き出した影分身に、ノジャは嬉々として九つの尾を順に……



『狂ってはいるものの、辿り着く先は決まっている。そう全ては……カグヤの――――』


「ぱーっこぱっこぱっこ♥ はーめはっめはっめ♥ ずっぼずぼ~♪」


「てめえええええええ、ぶっ殺―――――」


『……いい加減、話をしろ!』



――ギガサンダーッ!!



 その時、巨大な落雷が俺たちに降り注ぎ、俺たちは咄嗟に飛び退いて避けるものの、大量の影分身たちはその余波に耐え切れずに一斉に砕け散った。

 でかした!



「なんじゃァ!? わらわの乳繰り合いを邪魔する愚か者はぁぁぁ!?」


「あっぶな! って、なんなの?」


「今のはベンリナーフの……ハクキが……意識は念話で話をしながら魔法を発動……そんな器用な操りができるとは……」



 土煙が舞って、集落に大きな穴ぼこができる。

 普通に俺らを殺すつもりでぶっ放した雷だった。

 まぁ、俺にとっては恥辱を救う天からの雷とも言えなくもなかったが……



『ダマレ』


「「「ッッ!?」」」



 あっ、ベンおじさんから……いや、ベンおじさんを通じて発せられるハクキの圧力。

 本体はここにいないっていうのに、なんて重苦しいプレッシャーだ。



『さて……ようやく話ができるようになったな』


「ぬっ……」


『お初お目にかかる、アース・ラガン。吾輩は六覇のハクキ。ヤミディレの一件から一度会ってみたいと思っていたところ。まぁ、吾輩はこうして遠くから話すだけだがな』



 そう。ヤミディレの一件。というよりも、クロンの件。

 カクレテールでヤミディレが動いていたことの全ての根本の黒幕はハクキ。

 クロンを使って色々とやろうとしていたみたいで、あの大会のことも内通者を通じて情報を得ていたみたいだ。

 だからこそ、俺に興味を持っている……が……



「へっ、最強の六覇も……随分と節穴なんだな。それとも物忘れが激しくてボケてんのか?」


『……ぬ?』



 こいつは一つだけ勘違いしていることがある。


「ちょ、お兄さん!?」

「アースくん、あまり挑発するようなことはじゃな……」

「ハニー!?」


 みんなが俺の口の利き方に焦った様子を見せるが、それでも俺は言ってやりたかった。



「俺は一度だけだが、とっくの昔にあんたに会ってんだよ。覚えてねーのか?」


「……なに?」



 そう、俺はハクキと既に会っている。

 十数年前、しかも……



「しかも、この地こそが……俺があんたとかつて会った場所だってのによ」


『……ッ!?』



 そして、俺の言葉を聞いて、ベンおじさんの向こう側にいるハクキが少し驚いた反応をしたことが分かった。

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